オンラインで声が遠く聞こえる原因。マイク越しでも近く届く話し方

オンライン会議で声が遠い、薄い、反応が弱く見える原因を、マイク設定だけでなく第一声と語尾から整理します。

奥津ユキ

オンライン会議で「声が遠いね」と言われた時、真っ先に疑われるのはマイクの設定です。でも、機材をいじる前に確かめてほしいことがあります。相手の耳にあなたの声がどう届いているかを、その場で再現できます。

マイク孔の前から手をどかす

オンライン会議を想定して、「画面の資料を見ながら説明します」と一度言ってみてください。二度目は、端末のマイク孔の近くにあった手を、太ももの上へ移してから同じ文を言いましょう。端末の位置、座る姿勢、顔の向き、声量、話す文、話す速さは一度目と二度目で揃えます。変えるのは、マイク孔の前に手があるかないかだけです。手を端末に添えていないなら、最初に手の側面をマイク孔の前にかざし、次に太ももへ移せば確認できます。端末に触れたまま支えることもせず、二度目は手全体を端末の外へ出した状態にします。

遠く聞こえるときは、声を足す前に、マイクへ届く経路に物が重なっていないかを見ます。二度目では、「画面」の「が」と「説明」の「せ」の間で、手の影がマイク孔にかからない状態になります。私がこの場面でまず確認したいのは、端末の近くに置いた手が、言葉の出口を狭めていないかです。入力の設定を触らず、位置も変えずに確かめられるため、会議の直前にも向いています。二度目に端末のマイク孔が手で覆われず見えているか、その形のまま文を言い終えるかを確認します。二度目でも変化がなければ、原因は手ではありません。次はマイク孔の汚れや会議ソフトの入力選択など、発声とは別の原因を確認します。

遠さの正体は、ミュート解除直後の一音です

発言の順番を待っている間、多くの人は息を止めています。指はミュートボタンに気を取られ、解除した瞬間、止まった息の上から第一声が喉の奥を通って押し出されます。喉から始まった声は、マイクの入力レベルをどれだけ上げても、こもりごと大きくなるだけです。

マイクに近づくか声を張るしかない、と思われがちですが、実際には、声が割れない程度の距離を保ったまま、少しゆっくり話すほうがよく届きます。速さを落とすと一音ずつが潰れずにマイクへ乗り、相手側の再生環境が多少悪くても、言葉の輪郭が残ります。張り上げた声は音量こそ大きいものの、硬さまで一緒に運ばれてしまい、画面の向こうでは聞き疲れに変わります。

また、オンラインの音声はわずかに遅れて相手へ届きます。この遅延のぶん対面より間の感覚がずれやすく、焦って早口になった声は、さらに詰まって聞こえます。届き方を良くしたいなら、速く話して取り返すのではなく、ゆっくり話して一音ずつ確実に乗せるほうが、結果として早く伝わります。

口の端を持ち上げると、こもりが抜けます

画面越しでは表情も相槌も伝わりにくいぶん、つい口の動きだけで発音しようとして、声が口の中にこもる人が多くいます。話す前に口の端をほんの少し持ち上げる意識を持つと、声の通り道が変わり、同じ音量でも聞き取りやすさが一段変わります。

大げさな笑顔を作る必要はありません。カメラ写りのためではなく、音のための動きです。冒頭の実験で二回目に入れてもらったのが、まさにこれでした。息を先に流すことと、口の端を上げること。この二つが、画面越しの遠さをいちばん安く解決してくれます。

在宅で一人のまま何時間も画面へ向かっていると、顔の動きはどんどん小さくなります。会議が始まる前に口の端を二、三度動かしておくだけでも、最初の発言のこもり方が違ってきます。

発言が近づいたら、内容より先に体を点検します

自分の番が近づいてきたら、言う内容の確認と一緒に、体の点検を数秒だけ挟みます。息は流れているか。肩は上がっていないか。顎に力が入っていないか。カメラに映らない下半身で、足の裏を床に着け直すのも効きます。

声の崩れは、話している最中よりも、口を開く前に仕込まれていることのほうが多いものです。順番が回ってくる焦り、止まったままの息、ボタンへ伸びる指。その状態から出てしまった第一声を、話しながら立て直すのは難しい。だから点検は発言の手前で済ませておきます。会議中にできる準備は、実質この数秒だけです。逆に言えば、この数秒があれば足ります。

長い会議では、後半ほど姿勢が崩れて声も沈みます。一時間を超える会議なら、議題の切り替わりで一度座り直す。それだけで後半の発言の入りが変わります。

発言がかぶった時、引っ込めた声のままにしません

オンラインには、回線の遅延で発言がかぶるという、対面にはない事故があります。かぶった瞬間に「あ、どうぞどうぞ」と譲るのは自然なやり取りですが、問題はその後です。一度引っ込めた声のまま、次に話し始める時も遠慮の小声で入ってしまう人がとても多いのです。

かぶりは回線の仕様であって、あなたの失礼ではありません。譲ったあと改めて話し始める時こそ、息を流してから入ってください。かぶった直後の第一声は、ミュート解除の直後と並んで、オンラインの声がいちばん崩れやすい瞬間です。ここで普段どおりの入りができると、会議全体での声の印象は安定します。

遠いと言われたその場では、設定より話し方を変えます

会議の最中に音声の遠さを指摘されると、あわてて設定画面を開きたくなります。ただ、全員を待たせて機材をいじるより先に、できることが三つあります。話す速さを一段だけ落とす。口の端を上げ直す。文を短く切って、語尾を立てる。この三つは次の一言から実行できて、聞こえ方をその場で変えられます。

機材の切り分けは会議のあとで十分です。冒頭の実験と同じ手順でスマホに録り、手前に聞こえるのに会議では遠いと言われるなら、原因は機材やネット環境の側にあります。スマホでも遠く聞こえるなら、直すのは声の側です。この切り分けを一度やっておくと、次に指摘された時に迷わなくなります。

カメラをオフにしている会議では、声が唯一の存在情報になります。表情で補えないぶん、入りの一音と語尾の一音の比重はさらに上がります。声だけの会議こそ、冒頭の実験の成果がいちばん分かりやすく出る場面です。

言い終わりの半拍が、画面越しの存在感を決めます

オンラインでは、語尾が消えると発言全体が自信なさげに映ります。音声が圧縮される環境では、小さくなった語尾は文字どおり欠けて、相手には尻切れに聞こえることさえあります。

対策はシンプルで、一文を言い終えたら、すぐミュートに戻らず半拍だけとどまることです。その半拍の間に、喉が締まっていないか、息を使い切っていないかを観察します。語尾の一音まで息が残っている発言は、短くても画面の向こうで落ち着いて受け取られます。存在感を決めるのは声の大きさではなく、言い終わりの処理です。画面越しの声について私が一番伝えたいのは、この一点です。

この半拍は、聞き手のためでもあります。オンラインでは相槌が届きにくいぶん、聞き手は発言の切れ目を探しながら聞いています。語尾が残り、半拍の余白があると、相手は安心して反応を返せます。発言のかぶりが減っていくのも、この余白の効果です。

大事な会議の朝は、第一声だけ録っておきます

毎回の会議で練習を積む必要はありません。ここぞという会議の前だけ、最初の発言に使いそうな一言を選び、冒頭と同じ手順で一度だけ録音します。息を先に、口の端を上げて、語尾の一音まで。腕一本ぶん先のスマホで手前に聞こえたら、その日の声は仕上がっています。

イヤホンやヘッドセットを新しくした日も、同じ一言で録り直して基準を作り直してください。機材が変わると、自分に聞こえる自分の声が変わり、無意識に声量や高さを調整してしまうからです。録音という物差しを一つ持っておくと、機材に振り回されなくなります。

変わらない日は、条件のずれを探します。急いで話し出していないか。良く聞かせようとして声が上ずっていないか。イヤホンを替えた直後なら、機材ではなく話す速さが変わっていないか。喉に痛みや違和感がある日は録音の練習を休み、その日の会議は無理のない声量で乗り切ってください。

次のミュート解除から、届く距離が変わります

声が遠いという指摘は、裏を返せば、内容ではなく届き方だけが課題だということです。新しいマイクを注文する前に、息、口の端、語尾の三つを次の会議へ持ち込んでください。

入室する前に、一度だけ録音します。

「はい、こちらから共有します。」

この一文が腕の先のスマホで手前に聞こえたら、画面の向こうでも同じことが起きています。遠かったのはあなたの声ではなく、声が乗る前の一瞬でした。何度か続けると、録音しなくても息が流れているかどうかを自分で感じ取れるようになります。そこまで来れば、遠いと言われる日々は終わりです。次の発言は、息を流してからミュートを外してみてください。

よくある質問

Q. オンライン会議で声が遠いと感じるとき、最初にどこを見直せばよいですか?
私は、まずマイクとの距離と入力レベルを確認します。機器が整っていても、語尾で息が抜けると声の輪郭は遠のきます。喉で押し込まず、息を前へ流す意識を足してください。
Q. マイクに近づけば、オンラインで声の遠さは解消しますか?
私は、近づくことだけでは解決しないと考えます。口元に寄りすぎると息の破裂音が目立ち、かえって聞きづらくなります。一定の距離を保ち、言葉の頭に息の勢いを乗せることが大切です。
Q. オンライン通話で語尾だけ聞き取りにくくなるのはなぜですか?
私は、語尾で体の支えまでほどけている可能性を見ます。文末を小さく処理しようとして息が止まると、音だけが消えやすくなります。最後の一音まで息の流れを細く保ってみてください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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