観光・添乗ガイドの案内の声。屋外で歩きながら一日通す

屋外を歩きながら一日中案内を続け、夕方には声が枯れるガイド・添乗員の方へ。声量ではなく息と喉の使い方で、通る声を最後まで保つ方法を解説します。

奥津ユキ

屋外を歩きながら一日中案内を続ける観光ガイドや添乗員の仕事では、午前中は普通に出ていた声が、午後の後半には掠れてくることがあります。同じ説明を一日に何度も繰り返し、階段や坂道を上りながら息が上がった状態でも話し続け、風や人混みのざわめきに負けまいと声を張る。この繰り返しが、喉に静かに負担を溜めていきます。

屋外ガイドの声枯れは、声帯の弱さより喉の締めすぎです

一日の終わりに声が掠れると、声帯そのものが弱いからだと考える方が多いのですが、私の実感では、声が枯れるほどの大きさで話したり、締めた状態のまま息を流し続けたりする使い方のほうが影響しています。屋外では周囲の音に負けまいと無意識に喉を締めて声を出しがちで、この締め方が一日を通して積み重なっていきます。

対処は、声を我慢して小さくすることではありません。締めずに声を出す使い方に変えることです。

歩きながら話すと、息の配分が崩れやすくなります

「こちらの門をくぐりますと、右手に見えてまいりますのが」

歩きながらこの一文を話すと、足を運ぶリズムと息を吐くタイミングがずれ、大事な部分の手前で息が足りなくなることがあります。立ち止まって話すときより、歩きながら話すときのほうが、体は息の配分に気を配れていません。

坂道や階段では特に顕著です。上りで息が上がった状態のまま案内を続けようとすると、喉で無理に声を押し出す形になり、これが枯れの大きな原因になります。上り坂の途中では、説明の分量を減らしてでも、息を整える一拍を優先してください。

一日に何度も同じ説明を繰り返すと、声は単調になっていきます

同じルートを何度も案内していると、説明の抑揚がだんだん平坦になっていきます。慣れた言葉ほど早口で流れやすく、聞き手からすると「今日も同じことを言っているだけ」という印象を与えてしまいます。

抑揚は声の大きさではなく、高さの上下で作ります。物語を音読するときのように高さのレンジを広げる意識を持つと、同じ説明文でも聞き手の耳への残り方が変わります。声を張らずに、高さの幅だけを広げてみてください。

拡声器やワイヤレスガイド機材があっても、締めた声は残ります

ハンドマイクやワイヤレスガイドシステムを使えば、声量そのものの負担は軽くなります。ただし、機材が声を大きくしてくれても、喉を締めた状態で話す癖そのものは変わりません。マイクを使っているのに声が枯れるという方の多くは、機材に頼る前の喉の使い方がそのまま残っています。

機材がある日もない日も、まず喉を締めずに話せているかを基準にしてください。機材はあくまで音量を補うものであり、声の作り方を肩代わりしてはくれません。

同じことは、天候にも言えます。傘をさして歩く雨の日は、傘に当たる雨音と地面を打つ音が加わり、普段より声が届きにくく感じます。人気の観光地では、団体客のざわつきや周囲の話し声も重なります。ここで喉に力を入れて声量だけを上げようとすると、締めた声のまま長い案内文を保つことになり、枯れが早まります。私がお伝えしているのは、雑音の量に応じて声を張るのではなく、足の裏の設置と姿勢をまず整えることです。傘を持つ手のほうの肩が上がったまま固定されていると、声の通り道が狭くなります。傘を持つ姿勢でも、両肩の高さを揃え直すだけで、声の抜け方が変わります。

長時間話し続ける体の支えは、横隔膜をつまむ感覚です

長時間しゃべり続けても枯れにくい状態を作るには、お腹を大きく膨らませたりへこませたりする呼吸法よりも、横隔膜のあたりを軽くつまむように、吸うときも吐くときも圧を抜かない感覚のほうが効きます。歩きながらでもこの圧を保っておけると、喉だけで声を支える必要がなくなります。

腹式呼吸を真面目にやり込みすぎて、お腹をへこませたまま喉で支え続け、かえって喉に負担がかかった例もあります。腹式そのものを完璧にしようとするより、圧を抜かないことのほうを意識してください。

集合場所での点呼と、歩きながらの案内では声の作り方が違います

集合場所で参加者の名前を呼ぶ点呼は、静止した状態で、はっきりと相手に届かせる声が求められます。ここでは第一声をしっかり立ち上げることを優先します。

一方、歩きながらの案内は、移動と呼吸のリズムを合わせながら、長い文章を切らずに保つ声が求められます。同じ「ガイドの声」でも、点呼のような短く強い場面と、歩きながらの長い案内では、意識する場所が違います。自分が今どちらの場面にいるかを意識するだけでも、声の作り方は整えやすくなります。

「お名前をお呼びします、田中様」のような点呼の一文で第一声が弱いと感じる人は、呼び始める前に軽く息を吐き切ってから名前の頭を置く練習を、案内文とは別に一つ持っておくと安心です。点呼と案内文を同じ調子で処理しようとすると、どちらも中途半端になりがちです。

バスの中と屋外では、切り替えるポイントが違います

添乗員の仕事では、バスの車内アナウンスと、下車してからの屋外案内を一日に何度も切り替えます。車内はマイクを通すため声量への負担は少ない一方、エンジン音や走行音に負けない輪郭を作る必要があります。屋外では機材なしで声を届かせる必要があり、必要な圧のかけ方が変わります。

この切り替えを意識せず、バスの中で使っていた声のトーンのまま屋外に出てしまうと、機材がない分だけ喉に無理がかかります。下車する直前に、一度だけ肩と息の状態を整え直す習慣を持っておくと、切り替えがスムーズになります。

書籍や動画で紹介される発声練習は、静かな室内で座って行うことを前提にしたものが多く、歩きながら、坂道を上りながら、雑音の中で話し続けるという条件はあまり想定されていません。屋外ガイドの仕事に必要なのは、静止した状態できれいに響く声ではなく、動きながらでも息の配分と圧を保ち続けられる声です。

独学で発声の基礎を積むこと自体は無駄ではありませんが、正誤を判断してくれる相手がいないまま自己流を続けると、喉に負担をかける癖に気づかないまま固定されてしまうこともあります。屋外という特殊な条件で声を使う仕事だからこそ、基礎だけでなく、この場面特有の使い方を意識してみてください。

今日、スマホで試せる屋外ガイドの声チェック

場面ごとに、意識する場所を一つだけ決めておくと迷いません。

場面起きやすい崩れ意識する場所
坂道・階段の案内息が上がったまま喉で押す上り終わりで一拍息を整える
同じ説明の繰り返し抑揚が平坦になる高さのレンジを広げる
雨天・人混み声量だけで対抗しようとする肩の高さと足の設置
バスからの下車直後車内の声量のまま屋外に出る下車前に肩と息を整え直す

すべてを同時に意識する必要はなく、今日案内する場面に当てはまるものを一つだけ選んで試してください。練習は屋外に出なくても構いません。実際に使っている案内文を一つ選んで録音します。

「こちらの門をくぐりますと、右手に見えてまいりますのが」

一回目は普段どおり。二回目は、話し始める前に横隔膜のあたりを軽くつまむ感覚を作ってから話します。三回目は、抑揚を高さの上下だけで広げてみます。同じ一文でも、枯れやすい話し方と保ちやすい話し方の違いが耳で分かるはずです。

案内の途中で声が掠れてきたら、量ではなく圧を見直します

案内の途中で声が掠れ始めたと感じたら、そこで声量を落として我慢するのではなく、圧の抜けている場所を見直します。多くの場合、坂道や人混みで気を取られた瞬間に、腹の圧が抜けています。

次の一言の前に、軽く圧をかけ直す。それだけで、その日の残り時間の声の持ちが変わってきます。一日を通して声を保つガイドの仕事では、大きな声で乗り切ろうとするより、この立て直しを繰り返すほうが結果的に長く持ちます。

屋外で一日中案内を続ける声は、我慢や根性で保つものではなく、喉を締めない使い方と、圧を抜かない体の支えの組み合わせで作られます。今日の案内から、まず一箇所だけ試してみてください。

大きな声を出せる人が優れたガイドというわけではありません。同じ音量でも、締めずに出せているかどうかで、翌日に持ち越す疲れの量はまったく変わってきます。一日の終わりに声がまだ残っているかどうかを、その日の体の使い方を振り返る目安にしてみてください。

よくある質問

Q. 屋外ガイドで声が枯れやすいのは声帯が弱いからですか
弱いこともありますが、私の実感では声量を上げようとして喉を締め、その締めた状態のまま長時間話し続けることの方が影響します。声量よりも喉を締めない使い方を先に整えてください。
Q. 一日に何度も同じ説明を繰り返すと声が単調になりますが直りますか
単調さは大きさで解決するものではなく、高さのレンジで変わります。同じ説明でも抑揚の幅を意識するだけで聞き手の反応は変わってきます。
Q. 拡声器を使えば喉への負担は減りますか
音量そのものは楽になりますが、拡声器越しでも喉を締めた声のまま話せば負担は残ります。拡声器の有無に関わらず、締めない声の作り方を身につけておく方が安定します。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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