·会議の声

仕事で声がかすれる原因と直し方。夕方や連日で枯れさせない

週の後半になると声がガサつく、電話が続くと声が枯れる。年齢や体質のせいにする前に、喉の締め方と息の使い方から見直す整え方を紹介します。

奥津ユキ

月曜はまだ普通に出ていたのに、木曜あたりから声の芯がなくなってガサつく。週の後半になるとそれが毎週の癖になっている人へ。かすれを喉の消耗としてだけ扱う前に、電話を切った直後や会議室を出た瞬間、喉がどんな状態になっているかを一度確かめてみてください。

木曜あたりから声がガサつく人が、まず疑ってほしい場所

総務や庶務の窓口で電話を取り次ぐ仕事をしていると、朝から夕方まで短い応対が途切れなく続きます。一件ごとは数十秒でも、積み重なると喉への負担は電話の本数どおりに増えていきます。さらに週に一度、部署の共有事項を伝える会議の司会まで担当していると、喉を休める時間がほとんどないまま週の後半を迎えることになります。

ここで多くの人がやってしまうのが、かすれた声を隠そうとして、さらに力を込めて発声することです。ガサついた音を打ち消そうと喉に力を入れるほど、声帯はますます締まり、かすれは深くなっていきます。朝いちばんの電話では気にならなかった音が、十件目、二十件目と重なるうちに角が立ってくるとしたら、それは喉が単純に疲れているというより、応対のたびに締めて出す当たり方を積み重ねている合図です。

「声のかすれは年のせい」で片づける前に確認したいこと

声がかすれると、つい年齢や体質のせいにして諦めたくなります。ただ、加齢だけがかすれの理由とは限りません。声を過度に使っていたり、日々の話し方そのものに締めて出す癖があったりすることも、同じくらい関わっています。年齢は変えられませんが、話し方の癖は変えられます。ここを分けて考えるだけで、対処の選択肢は増えます。

私が電話応対の相談を受けるときにまず見るのは、一件目の応対と、午後の十件目あたりの応対で、喉の締まり方がどれだけ変わっているかです。件数が増えるほど締まりが強くなっているなら、消耗というより、締めて話す癖が積み重なって出てきている証拠です。

電話取次ぎが続く午後、喉より先に見るのは息の続き方

電話が鳴るたびに反射的に喉から声を出そうとすると、息はどんどん浅くなっていきます。息が浅いまま声を出し続けると、声帯は自分で支えを作ろうとして締まり、その締まりがかすれとして表に出てきます。

見る順番は喉からではありません。まず、受話器を取る直前に息が止まっていないか。次に、名乗りの一言を喉で押し出していないか。そして、通話を終えた直後、次の呼吸が浅いまま次の電話に出ていないか。この三か所のどこかが崩れていると、件数が増えるほど声は削れていきます。

「お電話ありがとうございます、総務の担当です」の一文で兆しを聞く

長い練習文は必要ありません。次の一言を、午前の早い時間と午後の後半で、それぞれ一度ずつ録音してみてください。

「お電話ありがとうございます、総務の担当です」

聞き比べるのは声の良し悪しではなく、音の当たり方です。午前は名乗りの頭がなめらかに出ているのに、午後は「お」の入りが硬く、こすれた音から始まっていないか。ここに差があれば、かすれは疲労だけでなく、締めて出す当たり方が時間とともに強くなっている証拠です。

声のかすれ対策でやってしまいがちなNGケア

かすれを感じたときにやりがちなのが、咳払いで喉をクリアにしようとすることです。咳払いは喉の粘膜同士を強く打ち合わせる動きで、かすれている喉にはむしろ負担になります。同じように、ガサついた音を隠そうと低めの声を喉で作り込むのも逆効果です。低く作った声はさらに喉を締めるため、応対を重ねるほど早くかすれが戻ってきます。

水分を取ること自体は悪くありませんが、水を飲むだけで締めて話す癖そのものが変わるわけではありません。潤いは助けにはなっても、根本の直しにはならないと考えてください。同じ理由で、飴やのど飴で一時的に喉当たりを滑らかにしても、締めて話す当たり方そのものは残ったままです。応対が再開すればまたガサつきが戻ってきます。

月曜から金曜へ積み重なる時、見る場所は一日単位と週単位で変わります

一日のなかで午前と午後を比べるだけでなく、月曜の声と金曜の声を比べてみてください。単発の疲れなら、休憩を挟めば夕方でも戻ります。ところが週の後半にいくほど戻りが遅くなり、金曜には朝の時点からすでにガサついているという人は、日をまたいで締まりが抜けきらないまま翌日を迎えている状態です。

この場合、対処すべきは金曜の応対量ではなく、水曜の夜や木曜の朝にどれだけ喉を締めずに過ごせているかです。応対の合間、次の電話が鳴るまでの数秒で肩の力を抜き、喉の締まりを一度緩める。この小さな解放を一日に何度か挟めるかどうかで、週の後半の残り方が変わります。

週次会議の司会が回ってくる日は、始まる30秒前にこれだけをやってください。肩を上げずに、いま入っている息をゆっくり吐き切ります。吐き切った反動で自然に入ってくる息を受け取ったら、横隔膜のあたりを前に軽くつまむような感覚を保ったまま、「それでは、今週の共有事項に移ります」と声を出さずに口だけ動かします。最後に、ささやく程度の音量で一度だけ実際に声にしてみてください。

確認するのは声の大きさではなく、その感覚を保ったまま話し始められているかどうかです。この感覚があると、長く話しても喉だけで支えずに済むため、かすれの出方が緩やかになります。

録音でチェックするのは、かすれの音色ではなく締まった場所

かすれた自分の声を録音で聞くのは気が重いものですが、判定を「かすれているかどうか」だけにすると、練習はそこで止まってしまいます。聞く場所を先に三つ決めておきます。

名乗りの出だしがこすれて始まっていないか。文の途中、急いだところで喉に力が寄っていないか。話し終えた直後、次の電話までに息を整え直せているか。この三点だけを追いかけてください。評価ではなく観察に徹することで、直す場所が具体的に見えてきます。

司会の途中で声がガサつき始めたと気づいたら、全部を一度に直そうとしないでください。まず、今話している一文を予定より早く切り上げます。切ったら、次の議題に移る前にひと呼吸だけ間を置きます。この間は間延びではなく、喉の締まりを緩めるための時間です。

それでも戻らないなら、声の大きさを落としてでも、息を先に流すことを優先してください。小さくても息に乗った声のほうが、喉で押し出した大きな声よりかすれを深めずに済みます。切る、間を置く、息を優先する。この三つを手順として持っておくだけで、本番での立て直しがしやすくなります。

かすれが取れない・広がる時は練習でなく受診のサイン

話し方を見直しても数日経ってもかすれが引かない、痛みや違和感が伴う、声がまったく出なくなる時間帯がある。こうした状態が続く場合は、練習で粘るより先に医師や専門家に相談してください。話し方の癖はセルフケアで見直せますが、体の状態そのものの見極めは自己判断でできる範囲を超えています。

かすれる仕事の日は、締めるでなく緩めることで乗り切ります

声がかすれた日ほど、はっきり出そうとして喉に力を入れたくなりますが、それは逆方向です。件数をこなすほど喉を締めてしまう癖に気づき、名乗りの出だしと、通話の合間の呼吸だけを整える。この二か所を守るだけで、週の後半まで声を保ちやすくなります。

大きく出す日ではなく、無駄な締めを減らす日にする。かすれやすい仕事の声は、この意識の切り替えから少しずつ変わっていきます。応対の件数や司会の担当そのものを減らせなくても、名乗りの出だしと通話の合間の呼吸という二か所だけなら、今日からでも手を入れられます。特別な道具も長い練習時間も要りません。スマホの録音機能で、朝と午後の名乗りを聞き比べるところから始めてみてください。

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よくある質問

Q. 声のかすれは年齢のせいですか
年齢だけが理由とは限りません。過度に声を使っていたり、喉を締めて話す癖があったりすることも重なっている場合が多いです。
Q. 水を飲めばかすれは治りますか
潤いは助けになりますが、締めて話す癖そのものは水分では変わりません。息の使い方を合わせて見直す必要があります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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