仕事で声がかすれる原因と直し方。夕方や連日で枯れさせない
週の後半になると声がガサつく、電話が続くと声が枯れる。年齢や体質のせいにする前に、喉の締め方と息の使い方から見直す整え方を紹介します。
奥津ユキ
椅子に腰かけ、両足のかかとを浮かせたまま「本日の予定を確認します」と一度言ってみてください。二度目は、上半身の位置を変えず、両足の裏を床につけて同じ文を言ってみてください。二度目のほうが首まわりを押さえずに言い終えやすければ、朝の姿勢が声の使い始めに影響しています。差が出なければ、姿勢ではなく、起床直後の乾きや朝一番からの話し方が別の原因です。
夕方のかすれは朝から積み上がる
仕事の終わりに声がかすれると、会議が長かった、電話が多かった、周囲が騒がしかったという出来事に原因を求めやすくなります。それらは確かに負担になりますが、その日の上限は夕方だけで決まるわけではありません。朝の一声で喉を強く鳴らし始め、最初の会話から急いで大きく話し、乾いた状態のまま使い続けると、昼には小さな補正が必要になります。その補正が積み重なることで、夕方にざらつきや息漏れとして表れます。かすれは突然起こる終盤の出来事ではなく、朝からの使い方が見えた結果です。
ここでいう朝の使い方とは、発声の量だけではありません。最初にどの高さで話し始めるか、言い出しで息を押すか、返事を短く切り上げるかといった細かな選択も含まれます。寝起きに低い声が出にくいとき、無理に普段の低さを出そうとすると、喉の周囲へ圧力を足しやすくなります。反対に、高すぎる声で張ると、後の会話で下げ直すことになります。私がこの場面でまず確認したいのは、朝の最初の数回の発話で、声が楽に出る範囲を使えているかどうかです。夕方の声だけを直そうとするより、使い始めを整えるほうが一日の余力を残せます。
午前中に余力を残せれば、午後の会議や電話に必要な強さを選べます。一日の始まりで常に最大の声を出す必要はなく、出しやすい範囲から仕事の声へ移ることが、使用量の急な増加を防ぎます。
朝一番は声を起こす順番を決める
出勤直後の挨拶や電話では、急いで普段どおりの声を出そうとしがちです。けれども、声を起こす時間をまったく取らずに大きな語頭を出すと、必要以上の圧がかかります。朝は、短い文を一つ、普段より少しゆっくり終えるところから始めます。「おはようございます」「承知しました」のような短い言葉を、最後まで同じ出し方でつなげます。大きく響かせることより、言い始めと語尾の間で声が急に細らないことを優先します。こうすると、最初の数分で出せる範囲を確かめながら会話へ入れます。
起床後の乾きが残るときは、咳払いで一気に整えようとしないことも大切です。強い咳払いは、その場では通りを作ったように感じても、次の発話でさらに擦れを感じることがあります。代わりに、口を閉じた状態で一度飲み込み、短い言葉から始めるほうが、声の出方を確認しやすくなります。水分を取ること自体は日中の習慣として役立ちますが、飲んだからすぐに長時間の大きな発声に耐えられるわけではありません。朝に必要なのは特別な準備ではなく、最初の声を乱暴に扱わない順番です。朝の始まりが荒いと、後から小さく話しても回復しきらないということが起こります。
朝の挨拶は短くても、その後の会話の基準になります。最初から急ぐ言い方を選ぶのではなく、言葉の終わりまで余裕がある出し方を確認できると、一日の声の使い方を観察しやすくなります。
連続して話す前に余力を残す
かすれを防ぐために、話す量をゼロにする必要はありません。問題になりやすいのは、連続した会話の最初から毎回同じ強さで押し出すことです。電話に出る、相手の名前を呼ぶ、会議で返事をする。そのたびに語頭を強く当てると、短い発話でも負担は切れません。連続する場面では、返事の前に一瞬だけ口を閉じ、次の一語を準備してから出します。声を休ませる時間は長くなくて構いません。発声の間に、喉へ押し込む動きを止める時間があることが重要です。
会議で発言を待つ間も、喉を鳴らし続ける必要はありません。考えながら小さく相槌を重ねる、資料を読みながら息だけを多く流す、周囲の音に対抗して隣の人へ大声で話すといった行為は、本人が気づかないまま使用量を増やします。私がこの場面でまず確認したいのは、重要な発言の前に、無意識の声を使い切っていないかです。話すべき内容に声を残すためには、沈黙を避けすぎないことが有効です。声の量を節約するというより、必要な場面と不要な場面を同じ出力で扱わないことが、夕方の余力につながります。
予定表を見るときも、次の発言に必要な時間を先に想像します。大切な説明の直前まで細かな会話を続けるより、短い無音の区間を確保するほうが、声の状態を切り替えやすくなります。
音量よりも話し出しの圧を減らす
かすれがあると、声量を下げるだけで解決しようとすることがあります。しかし、小さな声でも、言い始めに喉を強く閉じてから押し出せば、負担は残ります。むしろ、周囲に届かない小声を無理に通そうとして、首や顎に力が入る場合もあります。整えたいのは音の大きさだけではなく、声が始まる瞬間の圧です。語頭で空気を止めてから一気に出すのではなく、口の形を先に作り、短い音から滑らかに始めます。始まりが穏やかなら、必要な大きさまで上げても喉だけに仕事が集まりにくくなります。
実務では、相手に届く程度の強さが必要な場面もあります。そのときは、一語目から最大の出力を選ばず、言葉の意味が乗る位置へ少しずつ強さを置きます。「本日の変更点は二つです」なら、「変更点」や「二つ」に明瞭さを配り、すべての音を同じ大きさにしません。情報の山が分かれると、全体を張り上げなくても伝わります。声がかすれている日ほど、文の重要語を決めずに話すと、どの音にも余分な力がかかります。声の強さを落とすのではなく、力を使う場所を減らすことが、翌日へ残さない使い方です。
相手の注意を引くために呼びかける場合も、名前の一音目だけを押し出しすぎないようにします。呼びかけの後に本題が続くなら、最初の力を節約したほうが、内容を伝える声が最後まで残ります。
乾きと緊張を別々に扱う
夕方に声がざらつく原因は、一つとは限りません。口や喉の乾いた感じが前面にある日もあれば、緊張した会議の後だけ声が固くなる日もあります。乾きが中心なら、話し方を変えるだけで解決しようとせず、飲み物を取る間隔や空調、口呼吸になりやすい状況を見直します。緊張が中心なら、水分を増やしても語頭の押し出しが残ることがあります。二つを同じ「かすれ」として扱うと、対策が散らばります。声の表面が乾くのか、始まりで詰まるのか、長く話すと息が混ざるのかを分けて見る必要があります。
仕事中は、電話、対面、オンライン会議で使い方が変わります。電話では相手の反応が見えないため、必要以上に大きく話しやすくなります。対面では周囲の雑音へ競り勝とうとして、声を上へ押し出しがちです。オンラインでは画面に近づいて首が前へ出ることで、首まわりの緊張が続くことがあります。状況ごとに問題を一つ選び、たとえば電話なら話し出しの圧、オンラインなら姿勢、と分けて手を入れます。一度に水分、姿勢、音量、発音を全て変えると、何が役に立ったのか分かりません。かすれを再現性なく扱わないために、原因ごとに操作を分けることが必要です。
同じ時間帯に起こるからといって、同じ原因とは限りません。乾きが強い日、緊張が強い日、周囲の騒音が強い日を分けて記憶すると、翌日に同じ負担を持ち越す条件を見つけやすくなります。
声を使った直後の戻し方を持つ
長い説明や会議の後に、次の予定まで数分あるなら、その時間を次の発声の準備に使えます。すぐに大きく話し直すのではなく、口を閉じて一度飲み込み、肩を下げ、首を前へ出した姿勢を戻します。ここでは声を鍛える練習をするのではなく、使った直後に続いている押し出しを止めます。短い休止でも、喉を鳴らす動作が途切れれば、次の語頭を力で作る必要が減ります。休憩中に周囲の人と小声で話し続けるより、数十秒でも発声しない区間を作るほうが戻り方を観察できます。
戻した後に出す一言は、声の状態を確かめる指標になります。「次は三時です」のような短い文を、普段の会話の大きさで言い、語尾まで同じ感触で出るかを見ます。出だしだけが重いなら、次の会話でも始まりの圧を減らします。終わりだけが息っぽいなら、文を長く続けず、要点を区切ります。疲れた声を無理に元どおりに聞かせようとすると、残った余力をさらに使います。仕事中の声は、毎回最高の状態に戻すものではなく、使いながら崩れを大きくしないものです。朝から夕方まで同じ出し方を維持しようとするより、戻す区間を挟むほうが現実的です。
戻す時間は、次の会議のために声を作り込む時間ではありません。強く出した直後の姿勢と呼びかけの癖をいったん終え、次の短い文を普段の大きさで始められる状態へ戻す時間になります。
受診が必要な変化を練習で覆わない
声がかすれる日があっても、使い方を変えることで軽くなる範囲はあります。ただし、声の使い方だけで説明できない変化まで自己調整で押し切るべきではありません。朝から声が出にくい状態が続く、かすれが何日も戻らない、話すと痛い、息苦しさがあるといった場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。仕事の都合で声を使わざるを得ないときほど、原因を確認せずに大声や極端な小声で乗り切ろうとすると、状態を判断しにくくなります。
夕方のかすれを減らすための出発点は、終業前の対処ではなく、朝の最初の使い方です。朝の一声を急いで押さないこと、連続する会話のあいだに無意識の発声を増やしすぎないこと、話し出しの圧と乾きを別に扱うこと、使った後に戻す区間を作ること。この順番で見ると、かすれは一日の最後に突然起きる問題ではなくなります。朝の数分で余力を削らないことが、夕方に必要な言葉を残す土台になります。
変化の記録は細かな日誌でなくても、朝から違和感があるか、使うほど増えるか、翌朝に戻るかの三点で十分です。使い方の調整で軽くならない変化を見逃さないことも、声を守る判断に含まれます。声の問題を仕事の忙しさだけで説明せず、休んだ後の変化も判断材料にしてください。
よくある質問
- Q. 声のかすれは年齢のせいですか
- 年齢だけが理由とは限りません。過度に声を使っていたり、喉を締めて話す癖があったりすることも重なっている場合が多いです。
- Q. 水を飲めばかすれは治りますか
- 潤いは助けになりますが、締めて話す癖そのものは水分では変わりません。息の使い方を合わせて見直す必要があります。
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詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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