·プレゼンの声

チーム紹介で声が流れる原因。メンバー名を聞かせる話し方

会議やイベントでチーム紹介の声が流れる、名前が残らない、早口になる原因を整理します。

奥津ユキ

会議の冒頭やキックオフでメンバーを一人ずつ紹介していく場面では、人数が多いほど早く終わらせようという意識が働き、名前と役割がひとまとまりに流れてしまいます。原因を考えるより先に、その流れ方そのものを手元のスマホで確かめてください。

五人分を急ぐ読み方と、名前の前で息を通す読み方を録り比べます

ボイスメモを起動し、次の一文を二回録音します。

「続いて、担当の田中をご紹介します。」

一回目は、あとに四人控えているつもりで、できるだけ手早く読み上げてください。二回目は、「担当の」まで読んだところで名前の手前に短く息を通し、名前だけを聞き手の前にそっと置くつもりで読みます。再生して並べると、一回目は文全体が同じ速さで流れて、名前がどこにあったのか思い出しにくいはずです。二回目は音量を何も変えていないのに、名前だけが浮かび上がって聞こえます。名前が耳に残るかどうかは、読み上げの丁寧さや滑舌ではなく、名前の手前に息の余白があるかどうかで決まっています。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

名前は、速く読み上げるほど埋もれていきます。名前の手前にひと呼吸置くと、その人だけの時間が生まれます。

名前が流れる原因は、速さではなく発進の位置です

名前や役割が残らないと感じた時、多くの人はもっとはきはき話そうとします。けれど全員を一息で紹介しようとするほど喉に力が集まり、後半の名前ほど出しにくくなっていきます。見るべきは、名前をどこから発進させているかです。人数の多さに焦って息が止まったまま名前を出すと、第一声は喉の奥から始まり、その名前ごと奥にこもります。息の流れに乗せて切り出せば、張らなくても名前は輪郭を持って前に出ます。

大事な名前ほど大きな声で強調すべきだと思われがちですが、急に声量を跳ね上げると、聞き手はむしろ身構えてしまい、肝心の名前が耳に入る前に驚きのほうが残ります。強調に必要なのは音量ではなく、これから見ていく息と間と高さの扱いだけです。役割の説明を続けて一息で言い切ろうとするのも同じ崩れを招きます。名前と役割の間にも、ごく短い切れ目を入れてください。

もう一つ、他人の名前は自分の名前より単調になりやすい、という事情もあります。自分の名乗りなら自然に力がこもる部分でも、メンバーの名前は読み上げる情報として処理されがちで、気を抜くと名簿を読む声になります。紹介する側の声が平板だと、聞き手にとってもその人は名簿の一行のままです。名前のところだけは、読み上げではなく、その人を指し示す声に切り替えてください。

息、喉、体の順で、名前を出す前の状態を見ます

最初に見るのは息です。名前を呼ぶ手前で息が止まっていれば、そこから出る声は必ず硬くなります。大きく吸い込む準備より、短く吐く流れを先に作ってください。吸うことに気を取られると胸や肩が持ち上がり、体ごとこわばっていきます。

次に喉です。喉で押した声は一瞬強く聞こえても、何人も続く紹介では保ちません。声量を上げる前に、喉の奥を固めずに出せる小さな声で名前だけを試してください。小さな声の段階で詰まりを感じるなら、音量を足しても負担が増えるだけです。

最後に体です。首や肩、顎、舌の付け根がこわばっていると、息が流れていても声は前に出ません。足の裏を床につけ、首の後ろを軽く伸ばしてから読み始めると、喉だけに頼っている癖に自分で気づきやすくなります。

名前ごとに高さをわずかに振ると、耳の中で区切られます

何人も続けて紹介する時に効くのは、声量ではなく高さの変化です。同じ高さで淡々と読み上げると、聞き手の耳には名前の境目がぼやけたまま流れていきます。一人ごとに音の高さをほんの少しだけ振ると、それだけで名前が一人ずつ区切られて届きます。私がレッスンで使っている、物語を抑揚をつけて音読する練習と同じ発想で、メリハリは大きさではなく高さで作ります。

役割の説明をつける場合も同じです。名前は気持ち高めに置き、役割の説明は普段の高さへ戻す。この小さな上下だけで、誰が何を担当しているのかが耳の中で分かれて残ります。

組織図やメンバー一覧のスライドを映しながら紹介する場合は、目線にも気を配ってください。スライドの名簿を目で追いながら読むと、顔ごと画面へ向き、声も画面のほうへ出ていきます。役割の説明はスライドを見ながらで構いませんが、名前を言う瞬間だけは顔を上げて、聞き手のほうへ声を向けてください。名前の間だけ目線が戻る、そのリズム自体が聞き手には区切りとして働きます。

一人終えるごとに、半拍の間を置いてから次へ進みます

紹介が崩れる場面の多くは、名前を言い終えた直後に始まります。語尾の一音を言い切らないまま次の名前へなだれ込むと、聞き手の中では前の人の情報が整理されないうちに、次の情報が上書きされていきます。一人を紹介し終えたら、半拍だけ待ってから次に進んでください。紹介された本人が会釈をしたり、聞き手が顔を上げてその人を見たりする時間は、ちょうどこの半拍に収まります。

その半拍は、聞き手のためだけの時間ではありません。息を使い切っていないか、肩がすくんでいないか、喉が苦しくないかを確かめ直す時間でもあります。三人でも十人でも、一人あたりの手順は同じです。息を通してから名前の頭を置き、語尾まで残し、半拍空ける。この繰り返しさえ守れば、人数の多さそのものは崩れの原因になりません。

オンラインでも大きな会場でも、確認する場所は同じです

対面では通っていた紹介が、オンラインでは急に暗く聞こえたり、広い会場では埋もれたりします。それでも確認する場所は変わりません。名前の手前の息、喉の力み、語尾、半拍の間です。場が変わるたびに新しい技を足すのではなく、同じ手順を場所が変わっても崩さないことのほうが、紹介全体の聞きやすさを保ってくれます。

オンラインで特有なのは、紹介された本人がミュートを解除して一言添えるまでの数秒です。この無音に耐えられず、間を埋めようと次の言葉をかぶせてしまうと、本人の第一声と紹介者の声が重なり、名前の余韻ごと消えます。名前を言い終えたら、本人の声が出るまでの数秒は黙って待つ。オンラインの半拍は、対面より意識して長めに取るくらいでちょうどよくなります。

特に注意したいのは、次の名前を出す直前の状態です。崩れの多くは話している最中ではなく、話す前にすでに始まっています。急いでいる、息を止めている、肩が上がっている。この状態のまま名前を出すと、後から立て直すのは難しくなります。

直前の練習は、回数より条件をそろえることに使います

紹介の直前に長い発声練習は要りません。息を止めていないか、顎に力が入っていないか、語尾まで言い切る心づもりがあるか。この小さな点検だけで、最初の名前の出だしは変わります。逆に、崩れた条件のまま読み上げの回数だけを増やすと、喉で押す癖のほうが定着してしまいます。

声の準備と並んで効くのが、名前の読みの確認です。読み方に自信のない名前が一人でも混ざっていると、その人の順番が近づくにつれて息が浅くなり、直前の人の紹介から崩れ始めます。紹介の場では珍しい読みの名前は必ずあるものなので、当日の朝までに読みを本人か名簿で確かめておいてください。読みの不安が消えるだけで、名前の手前の息は驚くほど楽になります。紹介する順番も同じで、その場で迷いながら進めると迷いの分だけ息が止まります。座席の並びで順番を先に決めておくのも、立派な声の準備です。

録音で確認する時も、一回ごとに見る場所を一つに絞ってください。今日は息だけ、明日は語尾だけという分け方のほうが、全部を一度に直そうとするより確実に変化が残ります。喉に痛みや強い違和感がある日は、練習を増やさず、休息や声量を落とす判断も選択肢に入れてください。

最後の一人まで、名前の手前の余白を削らないでください

チーム紹介は、最初の一人より最後の一人のほうが難しい場面です。終わりが見えると気が緩み、余白を削って駆け込みたくなるからです。けれど聞き手にとっては、最後に紹介された人の名前がいちばん記憶に新しく残ります。締めくくりの一人こそ、名前の手前の息をいちばん丁寧に扱ってください。

次に紹介する機会が来る前に、もう一度「続いて、担当の田中をご紹介します。」を録音してみてください。急いで読んだものと、名前の手前で息を通したもの。今日聞いたその差を最後の一人の名前まで保てたら、その日の紹介はもう流れません。

よくある質問

Q. チーム紹介 声の原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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