オンライン授業で声が届かない原因。画面越しでも集中が切れない話し方

オンライン授業で声が届かない、単調になる、聞き返される原因を、マイク設定だけでなく息と間から整理します。

奥津ユキ

画面の前で一人だけ話し続けるオンライン授業では、声が次第に薄くなり、説明の途中で受講者の集中が切れやすいと感じることがあります。マイクの位置や機材をいじる前に、次の授業が始まるまでの九十秒でできる、スマホ録音の実験があります。

授業前の九十秒で、同じ一文を二通りに録音します

スマホのボイスメモを起動し、授業で実際によく使う一文を録ります。

「ここは大切なので、順番に確認します。」

一回目は、いつも授業で話している調子のまま読みます。二回目は三段階に分けます。まず口を軽く開ける準備だけをします。続いて、声を出さずに短く息だけを通します。そのうえで、通した息の流れにそのまま一文を乗せます。

再生して聞き比べる場所は、出だしの一音と語尾の二か所だけです。二回目のほうが声が前に出て聞こえたなら、届かない原因は機材ではなく、声を出す前の息の使い方にあります。三段階に分けることで、自分が喉で押しているのか、息に乗せて出しているのかを見分けられます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

相手の反応が見えない場所で話す時ほど、こちらは声を急がせてしまいがちです。急がず一拍を置くだけで、届く声に近づきます。

マイクの感度より先に、話し始めの一音を疑います

声が薄くなり集中が切れやすい時、多くの人はまずマイクの感度や声量を調整しようとします。ただ声量だけを上げて長く話し続けると、喉に力が集まり、次の言葉はさらに出しにくくなります。見るべきなのは、話し始めの一音がどこから出発しているかです。喉の奥から発進すると、その後の説明も奥にこもったまま画面の前にとどまります。息の流れに乗せて発進させると、声は自然と画面の向こうへ運ばれます。必要なのは派手な発声ではなく、出発点を小さく整えることです。

受講者から聞き返されると相談を受けた時、私がまず見るのは声質でも滑舌でもなく、口がちゃんと開いているかと、話している瞬間の声のトーンの2点だけです。画面越しだとこの2つはとくに見えにくくなるので、話し始める前に口を軽く開けておくだけのひと手間が、思っている以上に届き方を変えます。

届きにくいと感じるほど、マイクに口を近づけたり、思い切って大きな声を出したくなったりしますが、近づけすぎたり張り上げたりするとかえって音が割れ、聞き取りにくくなることがあります。見るべきはマイクとの適度な距離と、いつもより少しだけゆっくりした話す速度、そして無理のない声量です。

声を出す前に、息、喉、体の順で状態を確かめます

最初に確かめるのは、しゃべり出す前の呼吸です。ここが止まっていると、その先どれだけ整えても第一声だけは硬いままになります。深呼吸のような大きな吸気より、軽く吐き出す動作を先に作る方が効果的です。吸うことに意識が向きすぎると、肩がすっと持ち上がり、体全体が緊張の方向に傾きます。

次に確かめるのは喉の使い方です。押し込むように出す声は一時的に力強く聞こえても、長時間の説明には向きません。九十分続く授業なら、まず音量を絞った状態で、喉の奥に余計な力が入っていないかを確かめる方が先です。

最後に体です。首まわり、肩、顎、舌の付け根がこわばっていると、息はちゃんと流れていても声だけが前に出てきません。座ったままの授業でも、足裏を床に軽く預け、うなじのあたりを長く保つ意識を持つと、喉だけに頼る癖が見えてきます。

単調に聞こえる説明は、終わりの一音から直せます

説明が単調に感じられる時、まず耳を向けたいのは説明の入りです。言葉がいきなり飛び出していないか、息が止まったまま喉で始まっていないかだけを確認します。続いて、息を通してから話す動作がどれくらい効いているかを聞きます。息を止めたまま話すと、声は近くにとどまり、語尾も落ちます。

そして、説明が終わる瞬間の語尾です。語尾がぷつりと途切れると、話の中身が合っていても頼りなく聞こえます。逆に語尾のあとまで息が保たれていると、短い一言でも落ち着いた印象で伝わります。語尾が保たれると、単調に感じていた説明にも抑揚が戻ります。

説明を締めくくったあと、すぐに画面や資料を切り替えず、半呼吸ぶんだけ間を空けてみてください。その間に、喉の奥がつかえていないか、息が途中で止まっていないか、肩が緊張したままになっていないかを確かめます。話している途中の癖だけでなく、話し終えた瞬間に出る癖もここで見つかります。

授業でよく使う短い言葉にも、同じ確認を広げます

最初の一文に慣れてきたら、授業中に実際によく口にする短い言葉でも確認します。「確認します」「お願いします」「ありがとうございます」のような普段の言葉を選ぶと、癖がそのまま表れます。最初はいつもの調子のまま読み、次に話す前に軽く息を流してから同じ言葉を読み、最後に語尾を意識だけして読みます。この三通りを録音して聞き比べると、声質がどこで動いたかが具体的に見えてきます。

一回の練習では、息、喉、体、語尾、間のうちどれかひとつだけに絞って確認してください。全部を同時に直そうとすると、声はかえって不自然な作り物になります。崩れた条件のまま回数だけ重ねると、喉で押す癖がかえって強まります。短い同じ一文を、同じ順番で確認する方が、確実に変化を残せます。

授業の中で癖が出やすいのは、操作と発話が重なる瞬間です。画面共有を切り替えながら次の説明を始める、チャット欄を目で追いながら質問に答える、資料をスクロールしながら補足する。手元の操作に注意が割かれると、息の準備が飛ばされ、第一声が喉から出やすくなります。切り替えのクリックを終えてから話し出す、という順番を決めておくだけでも、声の入り方は安定します。

対面でも画面越しでも、確認する順番は同じです

対面の授業では声が通っても、画面越しになると急に暗く聞こえることがあります。マイクでは強すぎたり、逆に弱く拾われたりもします。ただ確認する場所そのものは大きく変わりません。入り、息、喉、体、語尾、間です。授業の形式ごとに直し方を増やす必要はありません。

授業の中身に問題が起きるのは、声を出している瞬間ではなく、その手前であることがほとんどです。焦りがある。呼吸を止めている。肩に力が入っている。喉をあらかじめ固めている。こうした状態のまま声を出発させると、途中で立て直すのは難しくなります。だからこそ、次の一言を出す前に、ほんの短い確認をひとつ入れるだけで十分です。呼吸を止めていないか。顎に余計な力が入っていないか。語尾まで言い切る心づもりがあるか。

慣れてきたら、声量ではなく「言葉をどこに置くか」に意識を移します。マイクの表面で鳴らすのではなく、画面の先にいる受講者にほんの少し手前で受け取ってもらうイメージです。押し出すのではなく、息の流れに乗せて運ぶ。それだけで、張らなくても聞き取りやすい声になります。

変わらない日は、声ではなく条件のずれを疑います

授業の声が思うように変わらない時、原因は声の才能ではなく、いくつかの小さな条件のずれであることが多いです。話し始める前に急いでいないか。息を吸いすぎて胸が固くなっていないか。明るく聞かせようとして喉が持ち上がっていないか。語尾を最後まで聞かせずに次の話題へ移っていないか。これらの積み重ねが、聞こえ方全体を変えています。調子のいい日だけ長時間練習するよりも、短時間でも毎回同じやり方で積み重ねる方が、実際の授業で再現できる形になります。

喉に痛みや、いつもと違う強い違和感を感じる日は、発声練習の回数を増やさないでください。水分補給や休養、声量を控える判断も選択肢に入れてください。声を鍛えることと、体の不調を押し切って話し続けることはまったく別の問題です。

九十分の授業は、始まる前の九十秒で支えられます

オンライン授業で声が届かないと感じる時は、声質や性格だけで判断しない方がよいです。必要なのは、授業が始まる前の九十秒で

「ここは大切なので、順番に確認します。」

を二通りに録る習慣だけです。いつも通りの声と、息を通してから乗せた声。ふたつを並べて聞けば、画面越しに薄くなる原因がどこにあるか、その日のうちに見えてきます。声量を足そうとする前に、同じ条件で毎回再現できる声を、まずひとつ用意してください。

関連して読む記事

授業以外の場面で声が届きにくいと感じる人は、次の記事もあわせて読んでみてください。

よくある質問

Q. オンライン授業 声が届かないの原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事