セミナー司会の声。登壇者と参加者をつなぐ話し方

セミナー司会で声が軽い、進行が不安定、参加者に届かない人へ。開会、登壇者紹介、質疑応答で使う声を解説します。

奥津ユキ

セミナー司会は、一人で話し続ける役ではありません。開会から登壇者紹介、質疑応答まで、場を何度も相手に渡す役です。渡す瞬間の声が軽いと、進行そのものが不安定に見え、登壇者への敬意まで薄く伝わってしまいます。性格や声質のせいにする前に、まず60秒でできる実験から確かめてみます。

60秒の実験。登壇者紹介の一文で場が動くか録ります

スマホを用意し、次の一文をそのまま声に出してください。

「続いて、講師をご紹介します」

録れたら聞き直します。見るのは三か所です。最初の音がきちんと立ち上がっているか。「講師」という言葉の手前にわずかな間があるか。「紹介します」の語尾まで声が残っているか。台本を読み流すようにこの一文を言うと会場の空気は動きません。この三点が整うと、同じ紹介文でも会場の視線が自然と登壇者に集まっていきます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は、生まれ持った性質だけで決まるわけではありません。息の流れと間の取り方、語尾の残し方を変えるだけで、参加者への届き方は変わっていきます。

まず見るべきは明るさより、場を渡す一拍です

セミナー司会でやりがちな失敗は、とにかく明るく読もうとすることです。

もちろん、声のトーンがまったく関係ないわけではありません。ただ、明るさだけを意識すると、喉で押した声になりやすいです。元気よく出したつもりでも、参加者には急いでいる、余裕がない声として届くことがあります。

聞き取りづらい司会者に共通するのは、声質そのものよりも、まず口がきちんと開いているかどうかと、声のトーンです。細かい直し方に入る前に、この二点だけを先に見ます。

私なら、まず場を渡す一拍を作ることを見ます。紹介の声を出す前に、息が止まっていないか。最初の一音を、喉で押していないか。「講師」という重要語の前で、吸い直していないか。語尾の前で、息が終わっていないか。この四つのどこかが崩れると、進行の声は軽く聞こえます。明るさで解決しようとする前に、体で起きていることを分けて見てください。

セミナー司会でやってはいけない直し方

やってはいけないのは、声だけを作り込むことです。低く落ち着かせて作る。無理に明るく作る。大きく張る。一語ずつゆっくり読もうとする。

司会は常に明るく元気な声を保つべきだと思われがちですが、実際はそうとも限りません。落ち着いた声で進行した方が締まる場面もあるので、開会から質疑応答まで同じ明るさを保つ必要はありません。

どれも一時的には変わったように感じます。でも、体の準備が変わっていないと、進行が長くなるほど本番では戻ります。特に、喉で低く作る声、大きく押す声、遠慮がちに小さくする声は、語尾が消えやすくなります。

セミナー司会で必要なのは、作った声ではありません。参加者が受け取るべき合図を、必要な順番で届ける声です。そのために、紹介の一文を短くします。重要語の前で一拍置きます。最後の音まで息を残します。これだけでも、場の空気の動き方はかなり変わります。

開会直前は、30秒だけ声を整えます

開会前に長く声出しをすると、かえって焦ることがあります。直前にやることは少なくて構いません。

まずマイク元や司会台の前で、口を閉じたまま一度息を吐き切ります。肩の位置は変えずに、短く息を入れ直します。声には出さず、先ほどの一文を口の形だけで一度なぞります。最後に、実際に小さな声で一度だけ言ってみます。

ここで確かめるのは、声の大きさではありません。最初の音が参加者に届く前に消えていないか。喉に力が入っていないか。語尾まで息が残っているか。この三点です。

登壇の合間、長時間しゃべり続けて声が枯れてくるのは、たいてい喉を締めすぎているサインです。横隔膜のあたりを軽くつまむように意識を置いておくと、吸うときも吐くときも喉に頼らずに済み、開会から質疑応答の締めまで声を保ちやすくなります。

崩れ方の内訳と、喉以外に見るべき三つの場所

セミナー司会では、声の失敗が一つだけで起きることは少ないです。多くの場合、三つの崩れが重なります。

一つ目は、開会や紹介を始める前に息が止まることです。息が止まったまま始めると、最初の音が遅れて入り、参加者には途中から始まったように感じられます。

二つ目は、登壇者名や重要語の前で急ぐことです。大事な言葉ほど、間を取るのが怖くなります。すると、本来注目してほしい言葉が一番流れます。

三つ目は、紹介を言い終えた安心で語尾が小さくなることです。聞き手には、進行の締まりが弱い声として残ります。

この三つは、性格の弱さではありません。声が弱いと感じると、多くの人はまず喉を直したくなりますが、喉に力を入れても司会の声は安定しません。第一声、息、喉に加えて、次の三か所を見ると修正できます。

まず、足裏が床についているかです。壇上や司会台の上で体が浮いていると、息も浮きます。次に、胸の開き方です。タイムテーブルや参加者の反応を気にしすぎると、上半身がすぼまり、胸が閉じます。胸が閉じると、声は会場の奥まで通りにくくなります。最後に、顎と首です。マイクを覗き込んで顎が前に出たり、首の前側が固まったりすると、最初の一音を喉で押しやすくなります。

場を渡す一拍を整えるには、喉だけではなく、体の向きと息の入口まで戻す必要があります。

進行中に崩れた時の戻し方

進行の途中で声が崩れても、その場ですべてを立て直そうとしないでください。

まずできるのは、話している一文を短く区切ることです。区切った一文は、最後の語尾まで言い切ります。それでも整わないなら、次の一文に進む前にひと呼吸だけ間を作ります。

この間は、進行を止めた空白ではありません。参加者に次の合図を受け取ってもらうための時間です。焦って次の一文を続けるほど、声はさらに軽くなっていきます。一文を短くする、語尾まで言い切る、ひと呼吸だけ間を置く。この三つで十分です。

セミナー司会で持っておく、場面ごとの三つの言葉

本番で声が乱れがちな人は、話しながら次に言う言葉をその場で探していることが少なくありません。言葉を探りながら話すと、息の流れが止まり、声が喉のあたりに詰まっていきます。

だから、セミナー司会では、場面ごとに使う言い方を三つだけ持っておきます。

開会に入る言葉。「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます」

質疑応答に進む言葉。「皆様からのご質問を承ります」

締めに使う言葉。「本日は最後までご清聴いただきありがとうございました」

この三つを持っていると、声を作る前に進行の道筋ができます。道筋があると、息も戻りやすくなります。大切なのは、司会らしい格式張った言い回しを増やすことではありません。声にした時に言いやすく、語尾まで参加者に届く一文を選ぶことです。長い進行文は、本番の緊張で真っ先に崩れます。短い一文は、詰まっても立て直しやすいです。

セミナー司会の練習を、実際の進行に移す方法

練習でできても、本番の会場で出なければ意味がありません。移すためには、練習文を実際の進行台本の文に近づけます。

はじめに、普段実際に使っている紹介や合図の一文をそのまま紙に書き出してみます。次に、そこから余分な説明を取り除いて文を短くします。最後に、声を意識的に乗せる箇所を決めます。

「続いて、講師をご紹介します」であれば、出だしの音、重要語、語尾という三箇所に絞られます。意識するのはこの三箇所だけで構いません。台本のすべてを完璧に仕上げようとする必要はありません。

本番の場では、練習通りにすべてをこなせなくても問題ありません。出だしの音だけしっかり入る。重要語の前で一拍だけ置ける。語尾だけは消えずに残る。このうちどれか一つができれば、進行の印象は十分に変わります。

質疑応答の場面でも考え方は同じです。参加者から質問を受け取る言葉、登壇者に振り返す言葉、それぞれの前にひと呼吸を挟むだけで、慌ただしく進む質疑の時間にも間ができます。声を変えるということは、プロの司会者を演じることではなく、登壇者と参加者のあいだで、場を確かに受け渡せるようにすることです。

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セミナー司会の声についてさらに知りたい方は、下記もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. セミナー 司会 声で最初に確認することは何ですか
声量だけでなく、話し始める前の息、重要語の前の間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 本番で声が弱くなるときはどうすればいいですか
最初の一文を短く決め、話す前に一拍置いて息を入れてから始めます。
Q. 練習では何を録音すればいいですか
実際に使う一文を録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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