·プレゼンの声

プレゼン質疑応答の声。質問された瞬間に崩れない答え方

プレゼン質疑応答で声が崩れる人へ。質問された瞬間に一拍置き、答え始めを安定させる声の使い方を解説します。

奥津ユキ

質問が飛んできた瞬間に喉が詰まる人の多くは、答える内容ではなく、質問を受け止める一言をまだ口に用意していません。考えながら声を出そうとすると、息が動く前に言葉だけが先に飛び出してしまいます。

受け止めの一言を録音して、答え方の癖を確かめます

まず、この一文を録音してください。

「ご質問ありがとうございます。結論からお答えします」

普段の会議と同じ速さで一度読み、聞き直します。確認するのは三か所です。最初の音がしっかり入っているか。「結論から」の手前にわずかでも間があるか。「お答えします」の語尾まで息が残っているか。質問の語尾にかぶせるように急いで言うと、内容が正しくても軽く聞こえます。反対に、最初の一音がしっかり置かれ、「結論から」の手前で小さく間が空き、最後まで息が残っていると、同じ言葉でも受け止め方が変わります。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

答える声は、場慣れや度胸だけで整うものではありません。質問を受けてから声を出すまでの一呼吸に、答え方の印象はほとんど決まっています。

質問が終わる前に答え始めると、声はどこかで止まります

質疑応答でつまずきやすいのは、質問が終わった瞬間にとにかく早く答えようとすることです。早く返すこと自体が悪いわけではありません。ただ、そこだけを急ぐと、喉に力が入った状態で声を押し出すことになります。急いでいる、余裕がない、という印象は、内容ではなく声の出だしから伝わってしまいます。

プレゼンの質疑応答では、頭の中で考える作業と、声を出す作業がほぼ同時に来ます。この二つを分けないまま声を出そうとすると、息は流れず、声は喉のあたりに留まったまま出てきます。私がまず見るのは、受け止めの一言と結論の一言が、体の中で分かれているかどうかです。質問を聞き終える前に息を止めていないか、受け止めの最初の音を喉で押し込んでいないか、語尾まで息が持っているか。このどれかが崩れていると、答え方は焦っているように聞こえます。性格の落ち着きのなさだと決めつける前に、体で何が起きているかを分けて見てください。

腹圧が抜けた瞬間に、答え方は上ずります

答えを考えながら声が上ずる時は、声自体を責めるより、どの位置で息が切れているかを探してください。上ずりや震えは気持ちの弱さより、お腹に入れていた力がふっと抜けた瞬間に起きやすいものです。腹に力を保つというのは、お腹を膨らませたりへこませたりすることとは違います。吸う瞬間にも圧を抜かないでおくと、質問の途中で不意打ちを受けても声の芯が保たれます。

体の状態も合わせて見てください。足の裏が床にきちんとついているか。体が浮いた状態だと、息も浮いてしまいます。質問者や会場全体の視線を意識しすぎて、胸が内側に閉じていないか。胸が閉じると、声は前に出にくくなります。顎が前に出たり首の前側がこわばったりして、答え始めの一音を喉で押し込んでいないか。受け止めと結論を分けて届けるには、喉だけでなく、体の向きと息の入口まで戻す必要があります。

声で貫禄を演出しようとする直し方は、かえって答えを崩します

やってしまいがちなのが、答え方そのものを声の演技で作ろうとすることです。わざと低く落ち着かせる。明るさを装って余裕を見せる。声量だけを張って自信があるふりをする。一語ずつゆっくり区切って読む。どれも本番の数分は効いたように感じるかもしれません。ただ、体の準備がそのままだと、想定外の質問が来た瞬間に元に戻ります。とくに作った低い声、張った声、控えめすぎる声は、語尾から先に崩れます。

堂々と振る舞えば緊張は隠せると思われがちですが、実際は虚勢を張るほど自分へのプレッシャーが増え、抑えたはずの震えがかえって戻ってきます。自信があるふりを重ねるより、受け止めの一言と結論を体の中で分けておくほうが、結果として落ち着いて聞こえます。質疑応答に必要なのは、演じた声ではありません。質問を受け止めたあと、結論を順番どおりに届けられる声です。

登壇直前の30秒で、受け止めの一言を声に出さず確認します

長く練習してから質疑応答に臨むと、かえって緊張が増すことがあります。直前にやることは多くなくて構いません。

まず口を閉じたまま息を一度吐き切ります。次に肩を上げずに短く息を入れます。このとき、お腹に軽く力を入れたまま保っておきます。続いて、声を出さずに「ご質問ありがとうございます。結論からお答えします」と口だけ動かします。最後に、小さな声のまま一度だけ言ってみます。

ここで見るのは声の大きさではありません。録音で確かめたのと同じ三か所、受け止めの一音、間、語尾だけです。会場で実際に質問を受けた瞬間、頭の中は答えの内容でいっぱいになります。だからこそ、受け止めの一言だけは体に馴染ませておき、考える作業と分けておく必要があります。

受け答えの型を三つだけ持っておきます

本番で声が崩れる人は、答える言葉をその場で探していることが多いです。言葉を探しながら話すと息が止まり、声は喉のあたりに集まります。だから、質疑応答では使う言い方を三つだけ用意しておきます。

最初に入る言葉は、先ほど録音した受け止めの一言をそのまま使います。論点を絞り込む一言は「まず、いちばん聞かれている点からお話しします」。締める一言は「補足がなければ、以上でお答えを終わります」。

この三つを声に出せる状態にしておくと、答える前に話の道筋ができています。道筋があると、息も自然と戻りやすくなります。大切なのは、格好いい答え方の型を増やすことではありません。短く、言いやすく、語尾まで届く受け答えを選ぶことです。凝った言い回しほど、想定外の質問が来た時に崩れます。短い受け答えなら、詰まっても立て直しやすくなります。

本番で答え方が崩れても、最初からすべてをやり直そうとしないでください。答えの一文を短く区切り、語尾まで言い切り、それでも整わなければ次の文の前に一拍だけ置きます。この一拍は沈黙ではなく、聞き手に言葉を渡すための時間です。焦って言葉を重ねるほど、声はさらに浅くなります。質疑応答では、崩れた瞬間に戻る場所を持っているだけで、本番の安心感が変わります。

答えにくい質問ほど、受け止めの一言を長くしません

準備していた想定と違う角度から質問が来た時や、反論に近い聞かれ方をした時ほど、受け止めの一言を長くしてしまう人がいます。「ご質問ありがとうございます」のあとに、間を持たせようとして言葉を足すほど、考えがまとまっていない印象が先に伝わります。

答えにくい質問の時こそ、受け止めの一言は普段より短く保ち、そのぶん結論に入る前の一拍を少しだけ長めに取ります。この一拍のあいだに考えをまとめて構いません。聞き手には、沈黙ではなく「きちんと考えて答えている間」として伝わります。反対に、答えながら言葉を探し始めると、語尾が消えたり、同じ言い回しを繰り返したりして、聞き手の集中はそこで途切れます。答える内容が決まっていなくても、受け止めの一言と結論への一拍さえ整っていれば、声だけは崩れずに保てます。

想定問答の数より、受け止めの一呼吸から整えます

想定問答を何十パターンも用意する必要はありません。プレゼンの質疑応答に必要なのは、どんな質問にも即答できる語彙の多さではなく、相手が聞き返さずに答えを受け取れる声です。最初に何を口にするか。どこで一拍待つか。どの一言を相手に残すか。最後をどう締めるか。この順番さえ整えば、声は無理に作らなくても安定します。声が変わると、同じ答えでも説得力や信頼感の届き方が変わります。

次に人前で質問を受ける前に、今日録音した受け止めの一言をもう一度声に出さず思い浮かべてみてください。質問の内容がどう変わっても、受け止めてから結論へ渡すまでの一呼吸の使い方は同じです。答え方を整えることは、如才ない受け答えを演じることではありません。質問してくれた相手に、自分の言葉をそのまま受け取ってもらえるようにすることです。

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質疑応答以外の場面での声の崩れ方も、あわせて確認しておくと練習の幅が広がります。

よくある質問

Q. プレゼン 質疑応答 声で最初に確認することは何ですか
声量ではなく、話し始める前に息が止まっていないか、最初の一音が詰まっていないか、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 大きな声を出せば改善しますか
大きく出そうとして喉で押すと、声が詰まったり軽く聞こえたりすることがあります。息の流れと語尾を整えることが先です。
Q. 本番前にできる練習はありますか
実際に使う一文をスマートフォンで録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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