声帯閉鎖は強いほど良いのか。通る声をつくる閉じ方と息のバランス

声帯閉鎖を強くすれば声が良くなるのか。声が硬い、詰まる、抜ける人に向けて、声帯閉鎖と息のバランスをわかりやすく解説します。

奥津ユキ

声帯閉鎖を強く意識するほど、かえって声が詰まる人がいます。閉じる力を足せば声は通ると考えがちですが、実際には息の流れとのバランスが崩れていることが多いです。

一文を録音して、詰まる場所だけを聞き分けます

長い文章を読む必要はありません。次の一文を、そのまま録音してください。

「結論からお伝えします」

聞き返すときは、声帯を強く閉じられているかを聞かないでください。見る場所は三つです。ひとつ目は起点。話し始めが喉から詰まって入ると、聞き手は最初の言葉を受け取りにくくなります。ふたつ目は要語。この一文の中で相手に残したい言葉の前に、ほんの少し間があるか。急ぐと、いちばん大事な言葉ほど喉に力が集まります。みっつ目は結び。最後の「します」が詰まって切れると、内容は合っていても余裕がないように聞こえます。強く閉じる必要はなく、最後の一音まで息を残せば十分です。以降はこの三点を「起点・要語・結び」と呼びます。

閉じようとして喉に力が入り起点が詰まる場合は、声帯そのものを責めるより、どの音で力みが出ているかをこの三点で見てください。

強く閉じるより先に、息が先に流れているかを見ます

声帯閉鎖と息のバランスでやりがちな失敗は、閉じる力を強くしようとすることです。もちろん、声帯の閉じ方がまったく関係ないわけではありません。ただ、閉じることだけを意識すると喉で押した声になりやすく、聞き手には硬い・詰まった・余裕がない声として届くことがあります。

逆に、力を抜けば抜くほど声は通ると思われがちですが、それも実際とは少し違います。声帯そのものはある程度しっかり閉じておく必要があり、閉じる強さをゼロに近づけることが目的ではありません。そのときの息の流れに合わせて閉じ方を調整することが大切です。

私なら、まず息が先に流れているかを見ます。声を出す前に、息の流れが止まっていないか。起点で、喉を閉じることから入っていないか。要語の前で、閉じる力に頼って押していないか。結びの前で、閉じたまま息だけが止まっていないか。この四つのどこかが崩れると、声は硬く聞こえます。

やってはいけない直し方と、本番前30秒の整え方

声帯閉鎖と息のバランスで、やってはいけないのは閉じる力だけを鍛えようとすることです。喉を固く締めて当てる。声を低く固めて出す。大声で押し切る。一語ずつ力を込めてゆっくり出す。

どれも一時的には声が太く感じられます。でも、息とのバランスが変わっていないと、本番では喉の負担として戻ります。特に、喉を締めて低く作る声、大きく押す声は、結びで力尽きやすくなります。必要なのは、閉じる力を鍛えることではなく、息の流れに閉じ方を合わせることです。

本番前に強く発声練習をすると、かえって喉が締まることがあります。直前にやることは少なくて構いません。口を軽く閉じたまま、一度だけ息を吐き切る。肩の高さを変えないよう気をつけながら、短く息を入れる。声には出さず、使う一文の口の形だけをなぞる。そこまでできたら、初めて小さな声で一度だけ実際に言ってみます。見るのは、強く閉じられたかではなく、起点が詰まっていないか、結びまで息が保たれているかの二点だけです。

声帯閉鎖と息のバランスでよくある三つの崩れ方

声帯閉鎖と息のバランスの崩れは、たったひとつの原因だけで起きることはめったにありません。たいていは三つの要因が同時に重なっています。

ひとつ目は、話し出す前に呼吸が止まり、閉じる力だけを頼りに声を出そうとしてしまうことです。息が止まったまま始めると、起点が硬く詰まり、聞き手には余裕がないように感じられます。ふたつ目は、要語の前で急ぎ、喉を締めて押すことです。大事な言葉ほど、間を取るより力で通そうとしやすくなります。みっつ目は、結びの前で力尽きて閉じが緩むことです。内容を言い終えた安心で、最後の「します」が抜けます。

この三つは、喉の弱さではありません。息、喉、体の向きを見れば、修正できます。足の裏が床にきちんと着いているか、胸が資料や画面に気を取られてすぼんでいないか、顎と首がこわばって一音目を押していないか。気になる場合は、指先で顎の下にそっと触れながら起点の一音だけ声にしてみてください。顎が持ち上がらず、指先に力が伝わってこなければ、その一音は喉に力を集めずに出せています。

詰まった例と抜けた例を、一文で比べます

詰まった例は、この一文を最初から強く閉じて押し出す話し方です。喉で押し切ると、内容は合っていても硬く聞こえます。声を大きくしても、閉じる力に頼っていれば印象は変わりません。抜けた例は、逆に閉じる力を抜きすぎて息だけが漏れる話し方です。

どちらでもなく、次のように置いてみてください。

「結論からお伝えします」

この一文の前に短く息を入れる。要語の前でほんの少し待つ。最後の音まで息を残す。やることはそれだけです。強く閉じる必要も、緩めすぎる必要もありません。聞き手が受け取るべき言葉を、置く場所に置く。声帯閉鎖と息のバランスでは、この感覚が大切です。

長く話しても詰まらないための、もうひとつの支え

一文だけでなく、会議や電話対応のように長く話し続ける場面では、閉じ方だけを整えても途中で息切れしていきます。長時間話すと声が枯れる人の多くは、閉じすぎというより喉の締めすぎが積み重なっているケースです。

私が勧めているのは、横隔膜のあたりをスライムのように前へ細くつまみ出す感覚を、吸うときも吐くときも保っておくことです。腹式呼吸のようにお腹を大きく膨らませたりへこませたりする必要はありません。膨らませ・へこませを繰り返すやり方は、真面目にやるほど喉で支えてしまい、かえって喉に負担が残ることがあります。常に軽い圧をかけ続ける感覚のほうが、閉じ方を無理に強くしなくても声が通り続けます。

一文単位の起点・要語・結びの確認と、この長時間の支えは別物です。短い一文で崩れを直しつつ、電話対応や会議が続く日はこの支えも合わせて意識してみてください。声を使う時間が長い仕事ほど、閉じ方だけに頼らない支えを持っているかどうかで、一日の終わりの喉の疲れ方が変わってきます。

声が詰まった瞬間の立て直し方

本番の途中で声が詰まっても、全体を立て直そうと焦る必要はありません。その場でできる対処は、まず一文を短く区切ることです。区切った一文は、結びまで言い切ります。それでもまだ詰まりを感じるなら、次の一文に移る前にひと呼吸だけ間を挟みます。

この間は、話を止めた沈黙ではありません。聞き手が言葉を受け取るための時間です。ここで焦って次の一文を畳みかけると、喉はますます締まっていきます。文を短くする。結びまで言い切る。間を置く。立て直し方はこの三つに集約されます。

今日の一文に集中し、明日も同じ耳で聞き直します

何日もかけて練習メニューを組む必要はありません。今日使う一文をひとつだけ選び、これを一回録音します。聞く場所は、起点、要語、結びです。続けて同じ一文をもう一度だけ録音し直し、今度は起点の詰まりだけを気にかけて出します。三回目では、結びだけを残します。

会話の中では、切り出しにはこの記事で扱った一文がそのまま使えます。本題に移るときは「ここが一番、力が入りやすい場所です」のように、聞き手の注意を一点に絞る言い方が効きます。話を締めるときは「詰まりやすいのは、ここだけです」と、直すべき場所を一つに絞って伝えると、聞き手にも伝わりやすくなります。格式ばった言い回しを増やすことよりも、喉へ負担をかけず結びまで自然に届く一文を選ぶことのほうが大切です。

練習した通りに全部を再現できなくてもかまいません。起点が詰まらずに出る。要語の手前で一拍置ける。結びが抜けずに残る。このうちどれかひとつができれば、声の印象は変わってきます。閉じる力をひたすら強くするのではなく、息の流れと閉じ方の釣り合いを取ること。それが、通る声への一番の近道です。

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声帯の詰まりを別の角度から見直したい方は、こちらの記事もご覧ください。

よくある質問

Q. 声帯閉鎖は強いほど良いですか
強ければ良いわけではありません。弱すぎると息が漏れ、強すぎると喉が詰まるため、息とのバランスが重要です。
Q. 声帯閉鎖を鍛えれば通る声になりますか
声帯の閉じ方だけでは足りません。息の流れ、喉の余白、言葉の置き方がそろって初めて通る声になります。
Q. 閉じすぎているかどうかはどう分かりますか
声を出すと首に力が入る、喉が疲れる、硬く聞こえる場合は閉じすぎや喉の押しすぎを疑います。録音で確認するのが有効です。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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