原稿読み上げの声。棒読みにならず伝わる話し方

原稿を読むと声が棒読み、単調、軽く聞こえる人へ。重要語、間、語尾を整えて内容が伝わる読み上げ方を解説します。

奥津ユキ

原稿を目で追いながら声に出すと、意味は分かっていても言葉が流れていくことがあります。文字を目で追う速さと、声で相手に届ける速さは同じではありません。朝礼での案内、来店客への説明、社内向けの読み上げ、どの場面でも起きる崩れ方は共通しています。うまい読み方を探す前に、読み始めの一文で息・喉・体・語尾のどこが崩れているかを確かめてください。

一文を録音して、崩れている場所を先に特定します

次の一文を、そのまま声に出して録音してください。

「本日は、サービス内容についてご案内します」

録音を聞く時は、読み方がうまいかどうかではなく、三か所だけを確認します。最初の音は、目で文字を探しながら声を出すと小さく遅れて入ります。重要語の手前は、「サービス内容」の前にほんの少し目を止める間があるかを聞きます。語尾は、最後の「します」が消えていないかを聞きます。強く押す必要はなく、最後の一音まで息を残すだけで十分です。この三か所のうち、どこがいちばん崩れているかで、次に見るべき原因の場所も変わってきます。

目が文字を追う速さと、声を出す速さはズレています

読み上げで棒読みになる時、多くの人は滑舌や声の作り方を疑います。ただ実際には、文字を目で先読みしながら声を出すため、息が声より一歩遅れることが原因になっている場合が多いです。案内文や商品説明のように、初めて読む原稿ほどこのズレは大きくなります。息が遅れると、最初の音は文字を追うためだけの音になり、内容の重みが乗りません。目で文字を追う前に、息がすでに動いているか。この確認は、原稿を読み始める前の一呼吸でできます。最初の一音を、文字を確認するために喉で止めていないか。重要語の手前で、目線と息が同時に止まっているか。語尾まで、文字を読み終える前に息が切れていないか。このどこかがずれると、声は軽く聞こえます。四つとも一度に直そうとせず、録音のたびにひとつだけ選んで確認する方が、変化を実感しやすくなります。原稿を持つ手が汗ばむほど緊張している時ほど、目が先へ先へと急ぎ、息が置いていかれやすくなります。

抑揚をつける前に、文字と息のずれを見ます

原稿読み上げでやりがちな失敗は、抑揚をつけようとすることです。単調さを直そうとして声の上げ下げを増やすと、今度は不自然な節回しになりやすく、聞き手には演技がかった落ち着かない声として、そのまま届いてしまうことがあります。私なら、抑揚の付け方を変える前に、まず文字と息のずれを見ます。案内文を丁寧に読もうとする気持ちが強いほど、この作り込みに向かいやすくなります。感情を込めて読もうとするあまり、アナウンサーのように整った声を作ろうとする人もいますが、整いすぎた声はわざとらしさとして伝わり、かえって内容への集中を削いでしまうことがあります。作り込んだ声は、目と息のずれが直っていないと、原稿が長くなるほど元に戻ります。読み始めの数行だけ整った声を維持できても、原稿の後半に差しかかると地の声に戻ってしまう人が多いのはこのためです。原稿読み上げで必要なのは、作った声ではなく、文字を先に読みながらも声が置いていかれない状態です。

本番前の30秒と、読み違えた時の立て直し方

本番前に長く読み込むと、かえって文字を追う癖が強まることがあります。直前にやることは少なくて構いません。まず原稿から目を離し、口を閉じたまま一度息を吐きます。次に肩を上げずに短く息を入れます。そのあと原稿を見ずに、先ほどの一文を口だけ動かしてなぞり、最後に原稿を見ながら小さな声で一度だけ言います。確認するのは、最初の音が文字待ちで遅れていないか、重要語の前で目と息がそろっているか、語尾まで息が残っているかの三つです。本番で読みが崩れたら、原稿の続きを急いで挽回しようとしないでください。今読んでいる一文を短く区切り、語尾までは小さくても言い切り、次の一文に入る前に文字から一度だけ目を離して一拍置きます。この一拍は、聞き手が今の一文を受け取るための時間です。読み間違えたことを気にして声を小さくするより、次の一文をいつもの高さで始める方が、聞き手には落ち着いた読み手として伝わります。慌てて訂正しようとする気配そのものが、聞き手には内容よりも先に伝わってしまいます。

紙の原稿でも、タブレットの原稿でも、確認する場所は同じです

読み上げの媒体が変わっても、確認する場所は変わりません。紙の原稿では、めくるタイミングで目が一瞬先の行に飛び、その分だけ息が先に流れてしまいます。タブレットやパソコンの原稿では、スクロールする指の動きに気を取られて、次の一音の前に息を止めやすくなります。プロンプターを使う場面では、流れてくる文字の速さに声を合わせようとして、語尾を最後まで残す前に次の文へ進んでしまうことがあります。媒体ごとに違う直し方を覚える必要はありません。最初の音が文字待ちで遅れていないか、重要語の手前で目と息がそろっているか、語尾まで息が残っているか。この三点だけを、紙でもタブレットでもプロンプターでも同じように確認してください。

姿勢と目線を整えると、喉だけに頼らず直せます

声が弱いと、喉を直したくなります。けれど、喉に力を入れても読み上げの声は安定しません。まず、原稿を持つ手と足裏の位置を見ます。原稿を覗き込むように前傾すると、息も浅くなります。座って読む場面と立って読む場面では前傾しやすさが違うので、どちらの姿勢で本番を迎えるかを先に決めておくと練習の的が絞りやすくなります。次に、原稿と顔の距離を見ます。文字を近づけすぎると目が忙しくなり、それにつられて息も忙しくなります。最後に、顎と首を見ます。文字を追うために顎が前に出たり首の前側が固まったりすると、最初の一音を喉で押しやすくなります。顎が原稿を追って小さく動き続けると、それだけで声が不安定になります。立って読み上げる場面では、原稿を持つ手の高さが下がるほど前傾も強まりやすいので、原稿は目線に近い高さで持つようにしてください。顎を動かさずに固定したまま一文を区切りながら声に出す練習をしておくと、本番で目が忙しくなっても声の芯だけは残りやすくなります。

入り方を三つ決めておくと、目が忙しくても声は乱れません

本番で読みが崩れる人は、次の文字をその場で探しながら声を出していることが多いです。文字を探しながら話すと、息が止まり、声は喉に集まります。だから、読み始めに置く言葉、段落を切り替える言葉、締めに置く言葉の三つを事前に決めておきます。読み始めは「本日は、サービス内容についてご案内します」。段落の切り替えは「続いて、料金のご案内に移ります」。締めは「ご不明な点があれば、遠慮なくお尋ねください」。この三つを決めておくと、次の文字を目で探しながら声を出す場面が減り、息も途中で止まりにくくなります。原稿の表現を凝ったものに変える必要はなく、声にした時に短く区切れて語尾まで一息で読み切れる長さかどうかを優先してください。一文が長い原稿は、声に出す前に区切る位置を鉛筆で印をつけておくだけでも、目と息のずれはかなり減らせます。

読み上げの声は、抑揚ではなく順番で変わります

原稿読み上げで必要なのは、朗読家のような技巧ではありません。聞き手が聞き返さず、内容を受け取れる声です。最初にどの音で入るか。どこで目と息を一緒に止めるか。どの言葉を相手に残すか。最後をどう終えるか。この順番が整うと、声は無理に節をつけなくても安定します。特別な発声練習を積む必要はありません。もう一度、先ほどの一文を声に出してみてください。読み上げが変わると、同じ原稿でも聞き手の理解にかかる時間や、聞き終えたあとに残る信頼感まで、はっきりと変わります。声は、原稿の内容をそのまま相手に渡す通り道です。

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読み上げの声については、こちらの記事もあわせてどうぞ。

よくある質問

Q. 原稿 読み上げ 声で最初に確認することは何ですか
声量だけでなく、話し始める前の息、重要語の前の間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 本番で声が弱くなるときはどうすればいいですか
最初の一文を短く決め、話す前に一拍置いて息を入れてから始めます。
Q. 練習では何を録音すればいいですか
実際に使う一文を録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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