原稿読み上げの声。棒読みにならず伝わる話し方

原稿を読むと声が棒読み、単調、軽く聞こえる人へ。重要語、間、語尾を整えて内容が伝わる読み上げ方を解説します。

奥津ユキ

目の前にある他人の原稿から二文を選び、椅子に座って音読をしてみてください。一度目は左手を太ももに置いたまま読み、二度目は主語または話題が切り替わる箇所で左手の指先を原稿の下端へ一度触れてから読んでみてください。声の高さ、姿勢、読む速さは変えずに比べるようにしてみてください。二度目に内容の束をつかみやすければ、問題は声の単調さより、自分の区切りと原稿の記号がずれていることにあります。差が出なければ、知らない語や背景情報が多い別の原因を先に整理するようにしてみてください。

他人の原稿では句読点が自分の呼吸図にならない

原稿を読むときの難しさは、文章がすでに整って見えることです。 句読点も段落もあるため、その通りに音へ移せば伝わるように思えます。 しかし、書いた人が読点を置いた理由と、読む人が一息の区間として必要とする場所は、必ずしも一致しません。 書き手は文法上の読みやすさ、画面での見た目、前後の段落との接続を考えて記号を置きます。 読む人は、その瞬間に聞き手へ何を渡し、次に何を準備するかを口で処理します。 この二つがずれたまま句読点だけに従うと、記号では止まれても、内容のまとまりは聞き手へ渡りません。 たとえば説明原稿に「利用者の声をもとに、手続きの流れを見直しました」とあるとします。 読点の位置で一拍を作ること自体は自然です。 ただし、前後に「今回の変更では」がついていれば、読む側は「今回の変更では/利用者の声をもとに/手続きの流れを見直しました」という三つの束を扱う必要があります。 画面上の読点は一つでも、口に必要な準備は二回あるかもしれません。 反対に、書面で読点が二つあっても、意味が一続きなら、同じ大きさで三分割すると情報が細切れになります。 原稿を尊重することと、記号を機械的に再現することは同じではありません。 私がこの場面でまず確認したいのは、読み始める前に、その原稿が誰に何をしてほしい文章なのかを一文で言えるかどうかです。

原稿を読む前に区間を仮に引く

読み始める直前に原稿へ線を引けるなら、文法の切れ目ではなく、聞き手に一度渡せる情報の終わりへ短い印を置きます。 書き込めない原稿なら、目線を移す順番だけで同じことができます。 最初に一文を最後まで眺め、述語を探します。 次に、その述語に何がかかるかを見ます。 主語、条件、理由、数字、行動の順にまとまりを見つけると、読点を超えても自分の区間を作れます。 ここで引く印は、停止を命令する線ではありません。 次の言葉を出す準備を終える位置を知らせる印です。 「来月から、申請方法をオンラインへ変更します」という一文なら、「来月から」は時点の条件、「申請方法を」は対象、「オンラインへ変更します」は変化の中心です。 三つを等しい長さの間で分ける必要はありません。 時点は短く置き、対象は中心の前に添え、行動を閉じるという順番で扱います。 原稿の読点があるから止まるのではなく、時点を受け取った聞き手が次に対象を待つ状態になるから、口を準備する余地ができます。 声の高低を足さなくても、この順番が見えていれば、音は一列になりにくくなります。 練習では、原稿の一文を見て、主語または条件の最後に右手の親指を原稿の端へ触れてみてください。 そのまま一度読み、二度目は同じ手の動きを保ったまま、述語の直前では触れずに読み切ってみてください。

句読点と区切りのずれを扱う

原稿の読点には、読む人が短く間を置きたい場所もあれば、止まらずに通したい場所もあります。 たとえば「安全のため、作業前に、手順をご確認ください」は、書面では読みやすくても、三つの読点すべてで同じように止まると、依頼の中心である「ご確認ください」までの勢いが失われます。 「安全のため」は理由、「作業前に」は時点、「手順をご確認ください」は行動です。 理由と時点は、聞き手が依頼を理解するための前提ですが、二つを等しい独立情報として置く必要はありません。 ここでの選択肢は、句読点を無視することではありません。 読点のたびに口を完全に閉じるのではなく、理由と時点を一つの前置きとしてつなぐか、理由を先に完了させるかを決めます。 前後の文が安全上の説明を続けているなら、「安全のため」は前の文から受け取られているため短く扱えます。 新しい注意事項として始まるなら、理由を渡してから行動へ進む余白が必要です。 原稿の外側にある文脈を見ずに、一文の記号だけで間を決めると、同じ文章でも読みが不安定になります。 読点のずれを確かめるには、原稿の一文を指でなぞり、一度目は読点ごとに指を止めずに読んでみてください。 二度目は、自分が「次の情報を待たせたい」と感じた箇所でだけ指を一度止めてから読んでみてください。

書き手の言い回しを自分の速度へ移す

他人の原稿には、自分なら使わない語順や言い回しが含まれます。 読みづらい語を前にすると、口はそこで詰まり、その後の区間を取り戻そうとして急ぎます。 その急ぎが連続すると、聞き手には全体が平らでせわしない読みとして届きます。 言い回しを勝手に言い換えられない場面でも、語の役割を自分の言葉で把握することはできます。 「実施いたします」が何をする行為か、「速やかに」がどれくらいの急ぎを示すかを、発声前に短く言い直して理解します。 理解した後は原稿の語へ戻り、その語が担う役割に合わせて区間を置きます。 たとえば「詳細につきましては、後ほど担当者よりご案内いたします」という文では、「詳細につきましては」を長く丁寧に扱いすぎると、行為の中心が遅れます。 前半は話題の指定、後半は誰がいつ何をするかです。 丁寧な表現だからといって、すべての音を均等に整えようとしなくて構いません。 話題を置いたら、案内するという動作へ早めに着地できる息の配分を選びます。 語を崩さず、語順も変えずに、情報の順番だけを口で明確にします。 練習として、読みづらい一文を見つけたら、発声せずに指で主語・対象・行動の三箇所を順に触れてみてください。 次に、同じ一文を一度だけ読み、二度目は三箇所のうち行動を表す部分の前で指を止めずに通過してみてください。

原稿の段落ごとに到着点を持つ

一文単位で区切りを決めても、段落全体の行き先がないと、次の一文へ同じ調子で乗り続けます。 段落には、背景を示す部分、変更点を示す部分、依頼や結論を置く部分があります。 すべての文を同じ距離で運ぶと、中心の一文が埋もれます。 原稿を読む前に、各段落を読んだ後に聞き手が何を理解していればよいかを短く書き出すと、どの文を前置きとして扱い、どの文を到着点として扱うかが見えます。 到着点は、声を大きくする合図ではなく、その文末まで息を残す合図です。 段落の最初の一文は、新しい話題を渡す役目を持ちます。 そのため前の段落の文末からすぐ次を押し出すと、話題が変わったことが伝わりにくくなります。 段落が変わるところでは、原稿から目を離さず、右手のひらを机の上で一度だけ開いてから次の一文を読み始めてみてください。 次に、その動作なしで同じ二文を読んでみてください。 変えるのは手のひらを開く操作だけです。 最初のほうが話題の切り替えを準備できたなら、段落間には句読点とは別の区間が必要です。 差が出なければ、前後の段落が同じ内容を繰り返している別の原因を点検してください。 段落の中盤は、根拠や手順が並びやすい場所です。 ここで一項目ごとに大きく止まると、説明が断片になります。

速さを直す前に準備の順番を直す

原稿を読むと速くなりすぎる人も、遅くなりすぎる人もいます。 速さを数値で調整しようとすると、今度は一語ごとの動きが硬くなります。 速度の乱れは、多くの場合、次の情報を準備する前に声を出していることから起こります。 知らない語、数字、長い固有名詞、途中の読点に出会ってから処理すると、口は詰まるか急ぐかのどちらかになります。 読む前に一文の終わりと、数字や固有名詞の位置だけを確認しておけば、一定の速度を演じなくても、必要な区間で自然に時間を使えます。 数字を含む文では、数字だけを特別に大きく読もうとしないことも重要です。 「申請期限は六月二十日です」の中心が期限であれば、月日を正確に出すための準備を前半からしておきます。 日付の直前で急に慎重になると、そこだけ流れから浮きます。 一度目は原稿を見ながら、数字の前で視線を一度だけ先へ送ってから読んでみてください。 二度目は視線を送らず、同じ速さで読んでみてください。 変えるのは数字の前の視線移動だけです。 前者で詰まりが減るなら、問題は速さそのものではなく、次の情報を見ていないことでした。 差が出なければ、数字の意味や単位を理解しないまま読んでいる別の原因を確認します。 原稿の速度は、全体を均一にするものではありません。

原稿を正確さと区切りの両方で仕上げる

原稿読みの仕上げでは、文字を落とさない正確さと、情報の束を渡す区切りを別々に確認します。 正確さだけを追うと、目は一字ずつに留まり、口は前へ急ぎます。 区切りだけを追うと、固有名詞や助詞が不安定になることがあります。 そこで、一回目は読めない語、数字、言い間違えやすい語を目で確認し、二回目は一文ごとの中心と前置きの境目だけを確認します。 役割を分けることで、一度の読みへすべてを詰め込みません。 短い原稿なら、各段落の最初の語と最後の述語に印をつけるつもりで目を動かします。 最初の語は何の話を始めるか、最後の述語は何を伝え終えるかを示します。 その間にある読点は、必要なら自分の区間の手がかりとして使います。 二度目の読みでは、段落の最初に左足のかかとを床へ軽く置き直してから始めてみてください。 直前の段落と違う話題へ入るための、外から見える一つの操作です。 足を置き直す以外を変えずに比べ、切り替えが用意できたなら、段落の境目を自分の体で扱えています。 喉の痛みや声枯れが続く場合は、原稿読みを重ねて負荷を増やす前に耳鼻咽喉科へ相談してください。 区切りの問題と体調の問題は分けて扱う必要があります。 声が出にくい状態で速度や語尾を操作し続けると、本来確認したい原稿の構造が見えにくくなります。

よくある質問

Q. 原稿を読むと、句点ごとに声が途切れて聞こえるのはなぜですか?
句点を息継ぎの合図だけにすると、文末で圧が抜けて次の一文が毎回ゼロから始まります。私は意味のまとまりごとに短く区切り、吐く息の支えを残したまま次へつなぐ読み方を勧めます。
Q. 原稿読み上げで重要な言葉を目立たせるには、声量を上げるべきですか?
大きくするより、重要語に向かう音の高さを少し動かすほうが自然です。原稿内で一文に一つだけ核となる語を決め、その語の手前から音程を持ち上げると、聞き手に焦点が届きます。
Q. 漢字が続く説明文を、聞き取りやすい声で読むコツはありますか?
漢字の連続を一息で平板に押し出すと、意味の境目が消えます。私は修飾する部分と伝えたい名詞の間に小さな間を置き、名詞の母音を前へ伸ばすことで、情報の輪郭を整えます。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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