·プレゼンの声

プレゼンでスライドを読む声。読み上げに聞こえない話し方

プレゼンでスライドの読み上げになり、聞き手が離れる人へ。資料を見る声から、聞き手へ届ける声へ切り替える方法を整理します。

奥津ユキ

スライドを見ながら話すと、視線も声も画面のほうへ向いていきます。聞き手のほうを見ていても、声だけは資料に置いたまま出てしまうことがあり、これが「読み上げに聞こえる」正体です。

この一文を録音して、画面向きの声と聞き手向きの声を聞き分けます

次の一文で確認してみてください。

「このスライドで見ていただきたいのは、機能の数ではなく、導入後の確認時間が減る点です。」

再生する時は、声のよしあしを判定しないでください。確認する場所は三つに絞ります。

確認する場所聞くポイント
このスライドで見ていただきたいのは出だしが小さく引っ込んでいないか
機能の数ではなく前を急いで通り過ぎていないか
確認時間が減る点です最後の一音まで息が保たれているか

一回目はいつも通りに読み、二回目は各文の前に一息だけ吐いてから読み、三回目は語尾を置く感覚だけを意識して読みます。うまく聞こえるかどうかではなく、どこで崩れが起きているかを探すための録音です。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は、生まれつきだけで決まるものではありません。息、喉、体、語尾、間の使い方で、相手に届く印象は変わります。

文字を漏らさず読もうとするほど、声は資料に縛られます

スライドの文言を一字一句そのまま読み上げようとするのは、自然な反応です。ただ、この意識だけで乗り切ろうとすると、目も声も画面に固定されたまま話すことになります。文字を追う速さと、声を届ける速さは本来別のものですが、資料の文字数が多いほどこの二つが同じ速さで進んでしまいます。

声量を上げれば伝わると考える人もいますが、仕事の説明で求められているのは大きさではありません。相手が内容を受け取り、その場で判断し、次の質問や会話へ進めるだけの届き方です。声を張っても途中で息が切れれば聞き手は落ち着きませんし、丁寧に話していても語尾が消えれば自信のなさが残ります。

資料を音読する声と、人に説明する声は別のものです。画面へ声を置いたままだと抑揚がなくなります。重要語の手前で一度、顔と息を聞き手側へ戻す。それだけで、読み上げではなく「説明している声」に変わります。抑揚をつけようとして声を大きくする必要はありません。効くのは大きさより高さです。「導入後の確認時間が減る点」のように残したい言葉だけ、声をほんの少し高く置く。声量はそのままで十分で、高さの差だけで資料を追っているだけの声から抜け出せます。重要な単語をすべて大げさに強調すれば抑揚がつくと思われがちですが、実際は全部を大げさにするほど不自然に響きます。この一文なら、本当に残したい語は一つか二つで足ります。

直す場所は、声色ではなく息・言葉の頭・語尾の三つです

最初に見るのは息です。話し出す直前に息を止めたままだと、最初の音を喉だけで押し出すことになります。次に見るのは言葉の頭です。「このスライドで見ていただきたいのは」の一音目が曖昧に始まると、聞き手はそこで話についていけなくなります。強く発音する必要はなく、短く吐いた息の上に最初の音を乗せる感覚で十分です。最後は語尾です。「確認時間が減る点です」を、押し込むのではなく最後の一音まで息を保ったまま置きます。語尾が残ると、そこで一区切りついたことが聞き手にも分かります。

説明の途中で声が単調になる人は、話し始める前からすでに体がこわばっていることがあります。肩が上がる、胸だけで浅く息を吸う、みぞおちのあたりが硬くなる。こうなると声は前に出ているつもりでも、実際には喉だけで支えた声になりがちです。大きく体を動かす必要はありません。足の裏を床に着けて、話す前に一度だけ短く息を吐く。それだけで声の出だしが変わり、言葉の頭も置きやすくなります。

スライドが切り替わる瞬間、声を聞き手へ戻す一拍を挟みます

クリッカーを押して次のスライドへ移る瞬間は、視線も声も画面へ引っ張られやすい場面です。新しい資料が表示された直後にすぐ読み始めると、声は聞き手に届く前に画面へ向かったまま話し出すことになります。

切り替えの直後こそ、押した手を止めたまま一拍だけ待ってください。この一拍で、画面ではなく聞き手のほうへ顔を戻します。急いで次の説明に入るほど、聞き手はまだ前のスライドの内容を頭の中で処理している途中です。声だけ先に進んでも、意味は置き去りになります。スライドの枚数が多いプレゼンほど、この切り替えの一拍を削って早送りのように話してしまいがちですが、聞き手が受け取れる速さは資料の枚数とは関係ありません。一枚ごとに、声を聞き手へ戻す一拍を同じように挟むことが、読み上げに聞こえない話し方の土台になります。

重要語の手前で、顔を画面から上げられるかを見ます

話すスピードそのものより、重要語の手前で顔を画面から上げて待てているかどうかが、急いで聞こえるかどうかを左右します。聞き手が受け取りたい言葉の直前に余白がないと、意味は通り過ぎてしまいます。

「機能の数ではなく」の手前は、長く黙る必要はありません。ほんの一拍で十分です。その一拍は資料を確認するための間ではなく、相手に受け取ってもらうための間です。画面を読み続ける、聞き手へ声が戻らない、語尾が単調になる。この三つは一つの悩みのように感じますが、実際には入り・途中・終わりという別の場所で起きています。分けずに練習すると、毎回なんとなく声を出すだけで再現性が出ません。まず入りだけ、次に間だけ、最後に語尾だけと順番に絞って練習してください。不自然に感じる時は録音で確かめてください。話している本人には長く感じても、聞いている側にはちょうどよいことがよくあります。

声量より先に、息を置く場所を変えます

声が弱く感じられると、多くの人はまず声量を足そうとします。聞こえないほど小さければ声量も必要ですが、声量だけを上げると喉で押した声になり、かえって硬く伝わります。

先に見るべきは息の置き場所です。話す直前に息が止まっていれば、最初の音は喉で押し出すしかありません。逆に短く吐いた息が前に流れていれば、声は自然に立ち上がります。この一文を読む時、最初に大きく吸い込まないでください。軽く吐いてから先ほどの一文の出だしを置きます。吸って身構えるのではなく、吐く流れに言葉を乗せる。それだけで出だしの硬さが変わります。声を足そうとするほど喉だけが前に出てしまい、力を抜きすぎると言葉の頭と語尾の両方が消えます。ちょうどよいのは、息が先に動き、言葉の頭が置かれ、語尾が残っている状態です。

本番前は、三つの断片だけを声に出して最終確認します

本番前に何分もかけて発声練習をする必要はありません。次の三つの断片だけを、張らない声で読んでください。

  • 「このスライドで見ていただきたいのは」
  • 「機能の数ではなく」
  • 「確認時間が減る点です」

それぞれ見るのは、出だし、重要語の前の間、語尾の残り方の一点だけです。録音で確かめたのと同じ三か所を、短時間で見る場所を絞って確認するだけで、本番にそのまま反映されます。姿勢を整えるのは見た目のためではなく、声の通り道を確保するためです。足を床に着け、一度短く息を吐き、言葉の頭を置く。それだけで出だしの印象は変わります。

説明の途中で言葉に詰まっても、資料に助けを求めて視線を落としたまま話し続けないでください。詰まった瞬間こそ、いったん顔を聞き手側に戻し、短く息を吐き直してから続きを話します。資料に視線を戻したまま無理に言葉をつなごうとすると、声はそのまま画面向きに固定され、詰まりを立て直す間もなく次の一文まで単調に流れていきます。

画面ではなく、この三点に意識を向けます

プレゼンのスライド説明の声は、根性や話術で整えるものではありません。最後にもう一度録音を聞く時は、自分がどう話せたかではなく、相手にどう届いたかで聞きます。出だしが弱ければ相手は聞き返したくなり、重要語が流れれば判断材料が抜け落ち、語尾が消えれば話の終わりがはっきりしません。資料の枚数や説明の長さが変わっても、確認する場所はいつも同じ三つのままです。

声色を作り替えようとするより、入り・間・語尾の三点を整えるほうが、資料説明では効果があります。次に画面の前に立つ前に、今日録音した一文をもう一度思い出してみてください。良し悪しではなく、届く順番が整えば、聞かれ方はそこから変わります。

よくある質問

Q. プレゼンのスライド説明で声が弱く聞こえる原因は何ですか
画面を読み続ける、聞き手へ声が戻らない、語尾が単調になるなどで、息・喉・体・語尾・間のどこかが崩れていることが多いです。
Q. プレゼンのスライド説明では大きな声を出せば解決しますか
声量だけでは安定しません。最初の音、重要語の前の間、語尾まで息を残すことを先に整えます。
Q. 本番前に何を練習すればいいですか
本番で使う一文を録音し、入り、間、語尾の三点だけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
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