プレゼン当日は、内容の見直しに時間を使いがちで、声の準備は後回しになりやすいです。けれど冒頭で声が震えたり早口になったりする人の多くは、始まる前の数分で息が止まり、最初の一文を一息で急いでしまっています。当日にできる確認は、資料の読み直しより、この数分の使い方です。
朝のうちに、今日使う一文を一つ決めておきます
「本日は、三つのポイントに分けてお話しします。」
この一文を朝のうちに一度だけ録音しておきます。急いで出す必要はありません。声を出す前に小さく息を流し、体の前側に余白を作ってから話すと、当日の声の入りが記憶に残りやすくなります。
会場までの移動手段も、当日の声に影響します
満員の電車や慌ただしい乗り換えを経て会場に着くと、息が浅いまま緊張だけが高まった状態で本番を迎えることになります。可能であれば会場に早めに到着し、移動中の浅い呼吸を一度リセットする時間を作ってください。移動の疲れをそのまま声に持ち込まないことも、当日の準備の一部です。
開始直前に見る、5つの確認ポイント
1つ目は、息が止まっていないかです。声を出す前に息を吸い込んで固まると、第一声は喉から始まります。短く吐いてから一文に入ってください。
2つ目は、喉で押していないかです。大きくする前に、小さく出しても詰まらない声を確認します。
3つ目は、体が固まっていないかです。肩、顎、舌の根元が固いと、息は流れていても声が前に出ません。足の裏を床に置き、首の後ろを長くします。
4つ目は、語尾が落ちていないかです。語尾を伸ばす必要はなく、最後の一音まで息が残っているかを確認します。
5つ目は、最初の一文を一度だけ録音で確認することです。「本日は、三つのポイントに分けてお話しします。」を録音し、入り、息、語尾を聞きます。
当日の不安を消そうとして、無理にでも大きな声を出し堂々と振る舞おうとする人がいますが、私の実感ではこれは逆効果になりやすいです。虚勢を張ると体の方が身構えてしまい、かえって声が上ずったり震えたりします。緊張で声が揺れそうな時ほど、大きさで抑え込もうとせず、お腹に軽く圧をかけたまま話す方が、喉の締まりが抜けて安定します。開始直前の数十秒は、堂々と見せることより、この圧をかけたまま最初の一文を置くことだけを意識してください。
前日の夜は、声を作るより休ませることを優先します
前日に長く練習して声を仕上げようとすると、翌朝には喉が疲れた状態で本番を迎えることになりかねません。前夜は今日使う一文を一度だけ確認する程度にとどめ、睡眠と水分を優先してください。声の準備は、当日にすべてを詰め込むものではなく、前日までの体調管理も含めた積み重ねです。
会場や部屋の音の響き方も、事前に確認しておきます
会場によって声の返り方は大きく違います。天井が高く反響する部屋、狭くて音がこもる部屋では、同じ声量でも聞こえ方が変わります。可能であれば開始前に一言だけ声を出し、自分の声がどう響くかを確認してください。響きに合わせて声を張り直す必要はなく、いつも通りの声の出し方で、聞こえ方の違いを把握しておくだけで十分です。
待ち時間の使い方も、声の準備の一部です
発表前に話しすぎると、声が疲れることがあります。待ち時間は水分を取り、必要以上に雑談で声を使わないようにしてください。声を温めることと、声を消耗することは別です。
待ち時間が長い時は、頭の中で最初の一文だけ確認します。何度も声に出さなくても、姿勢と息の順番を整えるだけで準備になります。当日の声づくりは、足すよりも乱さない意識の方が役立ちます。
練習文は、直そうとせず三つの読み方で聞き分けます
一回目は、いつも通りの調子で一文を読みます。この時点ではどこも直さないでください。声の入り方、息が止まる瞬間、語尾の落ち具合を、飾らずそのまま録音に残します。直す前の状態を知らないままでは、何がどう変化したのか比べようがありません。
二回目は、声を出す直前に短く息を流してから同じ文を読みます。大きく吸い込む必要はなく、むしろ深く吸いすぎると胸や肩が固まり、第一声が喉のあたりから出やすくなります。
三回目は、語尾まで声を保って読みます。伸ばして聞かせるという意味ではなく、最後のひと粒の音を雑に手放さず、息の余りが残った状態で言い終えるという意味です。
全項目を一度に直そうとしないでください
当日の声の準備でつまずきやすいのは、息、喉、姿勢、語尾、間を一気にまとめて変えようとすることです。直すのはまず一箇所だけに絞ってください。第一声が硬く感じるなら息だけを確認します。途中で苦しくなるなら喉の状態だけを確認します。最後が弱く終わるなら語尾だけを確認します。早口になりやすいなら重要語の手前の間だけを確認します。
練習回数を増やすことよりも、条件をそろえて比べることの方が価値があります。前回と同じ一文を、同じ手順で録音してください。声量が上がったかどうかではなく、喉の力みが抜けているか、息が途切れていないか、語尾が保たれているかを聞き取ります。
本番の説明は、短い言葉から声を乗せていきます
練習で整えた声を、そのまま長い説明に持ち込もうとすると崩れやすくなります。まずは「お願いします」「確認します」「ありがとうございます」といった短い言葉を使い、声の入り方、息の流れ、語尾の残り方の三点だけを確かめてください。
この短い言葉で喉に詰まりを感じないなら、その状態のまま長い説明にも移していけます。逆にここで喉が詰まるようなら、本番の長い説明ではもっと負担が出てくると考えてください。当日の直前にできることは限られています。凝った練習を積み増すより、この短い一文だけで確認を済ませるほうが現実的です。
控室での過ごし方が、そのまま第一声に出ます
控室で資料の細部を最後まで見直したり、他の参加者と緊張した様子で話し込んだりしていると、体はほぐれないまま本番を迎えることになります。控室では、内容の確認より、肩を軽く回す、足の裏を床に感じる、短く息を吐くといった体の準備に数分を使ってください。この数分の過ごし方が、開始直後の第一声にそのまま表れます。
録音のあとに書き残すのは三点だけにします
録音を聞いたあと、長々と反省文を書く必要はありません。出だしが慌てていなかったか、途中で息が途切れていなかったか、語尾が沈んでいなかったか。この三点さえ押さえておけば、次に確認すべき場所は自然と決まります。声の印象は一度の練習で仕上がるものではなく、同じ条件で毎回少しずつ確かめていくことで整っていきます。
服装や持ち物も、声の出やすさに関わっています
締め付けの強いネクタイやベルト、重いかばんを片方の肩にかけたままの状態は、呼吸の深さに影響します。発表直前は、ベルトやネクタイを少しだけ緩める、かばんを両手が空く形に置き直すといった小さな調整も、声の準備の一部として考えてください。見た目を整えることと、体を締め付けないことは両立できます。
発表当日は、声を作り込みすぎないことも大切です
発表当日は、練習量を増やすより、声が崩れない条件をそろえることが大切です。直前に長く発声すると、喉が疲れたり焦りが強くなったりします。確認するのは、姿勢、息、第一声、語尾の四つで十分です。
最初の一文は、内容よりも声の入り方を見てください。「本日はよろしくお願いします」を急がずに置き、息を流してから話し、語尾まで声を残します。この一文が安定すると、その後の説明にも余裕が出ます。不安が強い時ほど、声を大きくしようとしないことです。大きさより、言葉が前に届くかを確認してください。
発表中に崩れても、次の一文で戻します
発表は、途中で声が揺れることがあります。大切なのは揺れないことではなく、揺れたあとに戻れることです。噛んだり早口になったりしても、次の一文で息を流して語尾を残せば、聞き手の印象は戻ります。
本番中に細かい発声を考える必要はありません。戻る合図は、一文の前に息を流すことです。声が乱れた時ほど、次の言葉を急がず置いてください。発表の安定感は、完璧に話すことより、崩れた時の戻り方で決まります。
開始のアナウンスから登壇までの数十秒も準備の時間です
名前を呼ばれてから話し始めるまでの数十秒は、緊張が最も強くなる時間ですが、同時に最後の準備ができる時間でもあります。歩きながら息を止めず、登壇したら一度足の裏を意識してから話し始めるだけで、開始直後の硬さは軽くなります。この数十秒を無駄な時間と捉えず、声を整える最後の機会として使ってください。
仕上げの確認は、短い一回の録音で足ります
練習の最後に、長く話し込む必要はありません。本番でそのまま使う一文を一度だけ録音し、出だし、息、語尾の順番で聞き返してください。上手に聞かせようと作り込まず、いつもの声に近い状態のまま残すことが大切です。
一箇所でも直す点が見つかれば、その日の準備としては十分です。声は一度の練習で完成するものではなく、短い確認を積み重ねることで安定していきます。
まとめ
当日の声の準備は、始まる前に息が止まり、最初の一文を一息で急いでしまうことが起きていないかを見て、息、喉、体、第一声、語尾、間の順番で整えることに尽きます。
練習は「本日は、三つのポイントに分けてお話しします。」を録音するだけで十分です。冒頭の第一声を落ち着いて出せる状態を作るには、大きな声より、同じ条件で再現できる声を残してください。前日の休息、当日の服装、控室の過ごし方まで含めて、声の準備として考えてください。
よくある質問
- Q. プレゼン 当日 声 準備の原因は何ですか
- 声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
- Q. すぐできる練習はありますか
- 短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
- Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
- 痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →プレゼンで声が震える原因と対策。メンタルではなく筋肉から整える方法
プレゼンで声が震える原因は、メンタルではなく筋肉です。本番3分前にできる対策2つから、前日・1週間かけてやる本格対策まで、ボイストレーナーが時間軸別に整理しました。
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当日の声の準備は、気合いを入れることではありません。開始直前の数分間、息をどう使うかを決めておくことです。