新入社員の自己紹介で声が弱くなる人へ。最初の一言を整える

新入社員の自己紹介で緊張して声が小さくなる、早口になる人へ。第一声と語尾を整える練習を紹介します。

奥津ユキ

配属先の朝礼で自己紹介の順番が回ってくる。その数十秒のために内容を覚え込む人は多いですが、覚えた文章がそのまま声になって出てくるとは限りません。緊張で名前や語尾が消えてしまう悩みは、性格ではなく、話し出す前の準備が足りていないだけのことがほとんどです。

覚える文章より先に、最初のひと呼吸を用意します

新人が初めて名乗る場面を想像してください。

「本日から配属になりました、奥津です。」

この一文を勢いで押し出すと、名前の部分が急ぎ足になり、聞き手の耳に残りにくくなります。私がまず整えるのは、口を開く前の呼吸です。話す前に息をひとすじ流しておくだけで、同じ一文でも出だしの硬さが変わります。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

第一印象は声色だけで決まりません。話し始める前の準備と、名前を言い終えたあとの余韻の両方が、相手の記憶に残るかどうかを左右します。

自己紹介文を長くするより、入り口の音を見ます

緊張すると、多くの新人は内容を増やして印象をよくしようとします。ただ、盛り込む言葉が増えるほど、話している途中で喉に力が入りやすくなり、かえって声が奥にこもっていきます。

見るべきなのは、最初に出す音がどこから始まっているかです。喉の奥から絞り出すように始まると、そのあとの言葉も奥にとどまったままになります。反対に、息の流れに乗せて音を出すと、名前まで自然に届きます。私がまず確かめるのも、口がちゃんと開いているかと、声のトーンがその二点で、声質そのものはあとから見ます。

第一印象を良くしようとして、普段より高いよそ行きの声を意識して作る人もいますが、私はあまりおすすめしません。作り込みすぎた声はどうしても不自然になり、かえって印象を損ねることがあります。新入社員の自己紹介では、無理に明るい声を演出するより、普段の高さのまま息を流し、語尾を残すほうが素直に届きます。

名前の語尾こそ、印象を左右する場所です

自己紹介の印象が薄いと感じるとき、原因は内容の量ではなく、名前を言い切る瞬間にあることが多いです。緊張するほど、名前を早口で片づけて次の話に進みたくなり、結果として語尾が消えてしまいます。

「本日から配属になりました、奥津です。」を一度録音してみてください。最初は普段どおりに、次は話す前に息を流してから、最後は語尾の一音まで声を残す意識で読みます。目的はきれいな声を作ることではなく、名前が相手にきちんと届く形をそろえることです。

長い挨拶文を練り込むより、最初のひと言と名前の終わりを整えるほうが、記憶には残りやすくなります。

話し出す前に、体の三か所を確認します

声を整える前に、体の状態を確かめておきます。ひとつ目は足元です。足の裏が床にしっかり着いているか。体が浮いていると、息も浅くなります。ふたつ目は喉です。喉で押して出す声は瞬間的には強く感じても、長くは続きません。小さな声で詰まりを感じるなら、大きく出しても負担が増えるだけです。みっつ目は首まわりです。首や顎、舌の付け根に力が入っていると、息が流れていても声が前に出ていきません。

足を床につけ、首の後ろを軽く伸ばしてから一文を出してみると、喉だけに頼っていた癖に気づきやすくなります。

練習は三段階、直そうとせず観察します

最初の一回は、普段のままで読みます。ここでは直そうとせず、いつもの声の入り方や語尾の落ち方をそのまま記録します。何も変えない状態を知らないと、変化した後の違いも分かりません。

二回目は、話す前に短く息を流してから読みます。大きく吸い込む必要はありません。ひとつ小さく吐いてから声を出すだけで、入りの印象は変わります。

三回目は、語尾まで声を残して読みます。伸ばすのではなく、最後の一音まで息が途切れないようにするという意味です。ここが整うと、同じ言葉でも届き方がしっかりします。

本番では、最初の一文だけに集中します

実際の朝礼では、内容全体を整えようとするとかえって崩れやすくなります。挨拶でも報告でも雑談でも、見るべき場所は変わりません。話し出す前に息を流す。話の途中で喉に力を入れない。最後の音を急いで消さず、語尾まで残す。この三つを一文だけで確認できれば、長い自己紹介にも応用できます。

うまくいかない時は、練習量を増やすより、姿勢・呼吸・語尾のどれかひとつを元の状態に戻します。戻す場所が決まっていれば、本番で声が揺れても立て直しやすくなります。

録音メモは、三つのチェックだけで十分です

録音を聞いたあと、長い反省文を書く必要はありません。確認するのは、最初の音が急いでいなかったか、話の途中で息が止まっていなかったか、名前の語尾が落ちていなかったかの三点だけです。

声の印象は一度で完成するものではありません。毎回同じ条件で、喉に負担がないか、息が前に流れているか、語尾が相手に届く位置で終わっているかを確認していく作業です。この基準を持っておくと、初出社の朝にも使えます。

喉が疲れたと感じたら、練習の強さを落とします

練習中に喉が疲れる、声がかすれる、肩や首に力が入る場合は、量を増やす前にいったん戻ります。強く出す練習を重ねるより、小さくても詰まらない声を確かめるほうが優先です。

戻る場所はいつも同じ短い一文です。普段どおりに読み、息を流してから読み、語尾まで残して読む。この三回を比べるだけで、どこに負担が集まっているかが見えてきます。

大きくする前に、順番を戻します

声が届かないと感じると、多くの人はまず音量を上げようとします。ただ、息が止まり喉で押し、語尾が落ちたままの状態で音量だけを足すと、疲れやすい声になってしまいます。

戻す順番は決まっています。まず姿勢を起こす。次に息を短く流す。そのあとに一文を声に出す。最後に語尾まで声を残す。この順番であれば、内容を作り込まなくても声は整います。

場面が変わっても、準備するのは最初の一文だけです

声の悩みは場面によって形を変えます。挨拶、報告、雑談、面接、それぞれ言葉も相手の受け取り方も違います。それでも、最初に使う一文を決めておけば、声の準備は安定します。

本番の前に長い発声練習を重ねるより、その場で最初に使う言葉を一回だけ整えるほうが実用的です。息を流してから話す。語尾まで声を残す。この短い準備さえあれば、声はその場の勢い任せになりにくくなります。

崩れるのは、話している最中より話す直前です

声が崩れる瞬間をよく見ると、話している途中よりも、話し出す直前に原因があることが多いです。相手の反応を気にする。失敗しないよう言葉を選ぶ。早く終わらせたい。こうした思いが重なると、その瞬間に息が止まり、喉と肩がこわばります。

この状態のまま話し始めると、最初の音は喉から出て、そのあとの言葉も奥にとどまります。だからこそ直す場所は、話している最中ではなく話す前です。短く息を流し、最初の一文だけを急がずに置く。全部を整えようとせず、入り口だけを整えれば、そのあとの声も崩れにくくなります。

配属初日だけで完成させようとしなくて大丈夫です

自己紹介の声は、配属初日の一回だけで仕上げるものではありません。朝礼のたびに名乗る機会がある職場もあれば、取引先を訪ねるたびに初対面の挨拶が続く職場もあります。毎回の機会を、声を整え直す練習の場として使えば十分です。

先輩や上司から話し方について何か言われたときも、性格を否定されたと受け取る必要はありません。多くの場合、それは息の入り方や語尾の残り方についての指摘です。指摘された箇所を、次の自己紹介で一つだけ直してみる。それだけで、声は少しずつ場になじんでいきます。

配属先が変わるたびに、また同じ緊張がやってくることもあります。そのたびに一から声を作り直す必要はありません。息を流す、語尾を残すという二つの手順さえ体が覚えていれば、新しい場所でも同じ手順を当てはめるだけで済みます。慣れない環境ほど、決まった手順を持っていることが安心につながります。

異動や転職で自己紹介をやり直す場面は、社会人であれば何度も訪れます。そのたびに一から悩み直すのではなく、一度整えた息と語尾の使い方を持ち運べると考えてみてください。声の準備は、一度きりのものではなく、これから先も何年にもわたって繰り返し使い続けられる、自分だけの持ち物になっていきます。今日整えた息と語尾の感覚は、来年、再来年の自己紹介でも、そのまま取り出して使うことができます。

まとめ

新入社員の自己紹介で声の弱さに悩むときは、声質や性格のせいにしない方がよいです。内容を覚えることに気を取られ、声の入りと語尾の準備が抜け落ちていないかを見て、息、喉、体、第一声、語尾の順番で整えます。

練習は「本日から配属になりました、奥津です。」を録音するだけで十分です。普段どおり、息を流してから、語尾まで残す。この三つを比べれば、どこで声が崩れているかが見えてきます。短い自己紹介でも名前と印象が残る声を作るには、大きな声よりも、同じ条件で再現できる声を持っておくことが役立ちます。

よくある質問

Q. 新入社員 自己紹介 声の原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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