新人の自己紹介で声が震える原因。最初の名前を安定させる準備

新人研修や初出社の自己紹介で声が震える、名前が小さい、早口になる原因を、第一声と間から整えます。

奥津ユキ

配属先の研修室や朝礼で自己紹介の順番が近づいてくると、名前を言う前から手のひらが汗ばみ、実際に声にした瞬間に震えてしまう。これは新入社員にとても多い悩みです。

名札の下端に指を置き、名前を飛ばさない

自己紹介の順番が来たら、次の比較を試してみてください。「開発部の井上優です」と言います。声量、速さ、高さ、言葉、視線の高さは二度とも揃えます。変えるのは、名札に置く右手の指だけです。一度目は名札から指を離して言い、二度目は右手の人差し指を名札の下端に当てたまま、同じ文を言ってください。左手の位置、立つ場所、言い始める時刻は動かしません。

私がこの場面でまず確認したいのは、名字から名前へ移る瞬間に胸元が跳ねるかどうかです。二度目に名札が上下せず、「井上」と「優」の間で唇が急に閉じなければ、自分の名前だけを出す瞬間に手の置き場が働いています。差が出なければ、名札への指では変わりません。名字と名前の間にある子音の並びや、前の人から順番が回る間隔など、別の原因へ送ります。

一度目と二度目のあいだで、名札をなでたり持ち上げたりしません。指先は下端に触れるだけにして、胸元を押さえ込まないようにします。二度目に観察するのは、名札が揺れる量と、名前を言う直前に右肩が上がるかどうかです。どちらも変わらない場合、手の置き場を変える練習ではなく、名前の中にある音の並びを扱う別の原因へ送ります。

震えはメンタルの弱さではなく、体の反応です

声の震えはメンタルの弱さだと思われがちですが、私の実感ではメンタルだけの問題ではありません。息の出し方や、声帯まわりの筋肉の使い方も大きく関わっていて、気持ちの持ちようだけで100%説明がつくものではないと感じています。

震えを抑えたい時は、前にスライムを細くつまみ出すように横隔膜のあたりをつまむ感覚を、名乗る前から名乗り終えるまで保ってみてください。吸う時も吐く時もこの感覚を抜かずにいると、体の支えが安定し、震えに引っ張られにくくなります。感覚がつかみにくければ、みぞおちの少し上に手を当てて、そこが前に保たれたまま話せているかを確かめるだけでも構いません。

手が震える、心臓が速くなるといった反応そのものは止められなくても、息を吐くことは自分で選べます。震えの全部を相手にしようとせず、コントロールできる息だけを相手にする。この割り切りが、結果として声の揺れをいちばん小さくします。

順番を待つ数分間に、震えの準備が進んでいます

新人の自己紹介がほかの場面と違うのは、待ち時間の長さです。三人前、二人前と順番が近づくのを見ている間、多くの人は頭の中で名乗りの文言を繰り返しています。この待ち時間に、体には三つのことが起きがちです。

一つ目は、文言を頭でなぞるたびに呼吸が浅くなること。黙って繰り返している間、息は止まりやすく、自分の番が来た時には呼吸が戻らないまま立ち上がることになります。

二つ目は、直前の人と比べてしまうこと。前の人の自己紹介が落ち着いて聞こえるほど、同じように話さなければという力みが、肩と喉に先回りして入ります。

三つ目は、名前の部分だけ早口になること。いちばん聞いてほしい名前を、緊張している自分を悟られたくない気持ちから、かえって急いで通り過ぎてしまいます。そして名乗り終えた瞬間に安堵して、語尾への意識が切れます。

この三つが重なると、名乗りの数秒間は、息が減ったまま、力みが入ったまま、速度が上がったままという、震えの出やすい条件がそろってしまいます。

この三つは気の弱さではなく、緊張という体の反応が呼吸・話す速さ・語尾の維持に影響しているだけです。原因が分かれば、待ち時間の使い方も変わります。順番が近づいたら、文言を繰り返すのはやめて、静かに吐く息だけを整えておいてください。名乗りの文言はごく短いので、本番で忘れる心配はほとんどありません。それよりも、止まったままの息のほうこそ、意識して整えないと本番までに戻らないのです。

録音で耳を澄ませるのは、名前がどう残ったかです

自分の録音を聞くと、声の好みで判定したくなりますが、それをやると練習が前に進まなくなります。まず聞くべきは、名前の出だしがどう始まっているかです。急に飛び出すように出ていないか、喉のあたりで詰まりながら始まっていないかを確認します。

次に、息を先に通してから名乗れているかです。この準備があると、力を込めなくても声が前へ運ばれていきます。準備を省いて息を止めたまま話し出すと、声は喉の近くに留まり、名前の語尾まで一緒に沈んでしまいます。

最後に文末です。名前の最後の一音まで息が保たれているか、途中で放り出すように終わっていないかを確認してください。ここが残っていると、短い名乗りでも「ちゃんと届いた」という印象を相手に残せます。

名前のあとに続ける一言も、短く決めておくと震えにくくなります。出身地でも、研修で学んだことでも、内容は何でも構いません。大事なのは、名前を言い終えた直後に次の一文の出だしが決まっていることです。次に何を言うかを探しながら話すと、そこで息が止まり、せっかく整えた声がまた揺れ始めます。

名乗る直前の数秒でできる準備

本番の直前に長い発声練習を挟む必要はありません。必要なのはほんの数秒の確認だけです。呼吸を止めていないか、あごに力が入っていないか、肩が上がっていないか、文末まで言い切る心構えができているか。これだけの確認でも、第一声の質はかなり変わります。

慣れてきたら、声量ではなく言葉の置き場所を意識してみてください。自分の喉の中で響かせるのではなく、相手のすぐ手前の空間に名前をそっと置くようなイメージです。力任せに投げるのではなく、呼吸の流れに乗せて運ぶ。これができると、声を張らなくても届き方が安定します。

朝礼のように立ったまま名乗る場面では、立ち上がる動きそのものも使えます。椅子から立つ時に一度息を吐き、立ち切ったところで吸い直す。この動きに呼吸を合わせるだけで、立った瞬間に息が止まっている状態を避けられます。準備の中身が誰かに気づかれることはありません。息と姿勢の確認は、隣の席から見ればただ座っているのと変わらないからです。

少人数の名刺交換でも、大人数が並ぶ研修会場でも、この準備は同じ形で使えます。場面ごとに対策を増やす必要はなく、話し出し、呼吸、喉、体、文末、間という同じ場所を、同じ順番で確かめるだけで足ります。

たくさん練習するより、崩れない条件を見つけます

声を変えたい気持ちが強いほど、練習の回数を増やしたくなります。ただ、崩れた状態のまま回数だけ重ねてしまうと、喉に頼る癖のほうが定着してしまうことがあります。一度の練習では、呼吸・喉・体・文末・間のうち、どれか一つだけに注目してください。全部を同時に良くしようとすると、声はぎこちない作り物のようになってしまいます。

変化を感じられない時も、才能ではなく手順を見直します。話す前に気が急いている。息を吸いすぎて胸のあたりが硬くなっている。明るく見せようとして喉の位置が上がっている。文末を最後まで聞かずに次へ進んでしまっている。こうした細かなずれが、届き方に影響します。

喉に痛みや強い違和感を覚える日は、無理に発声練習を増やさないでください。水分補給、休養、声量を控える判断も時には必要です。声を育てることと、喉の不調をおして続けることは、まったく別の話です。

名前は、震えごと届いて構いません

最後に、録音をもう一度だけ残します。

「営業部に配属されました、奥津と申します。」

今度は、横隔膜のあたりをつまむ感覚を保つことと、名前の最後の一音まで息を残すこと。この二つだけを意識してください。最初の録音と並べて、名前の聞こえ方だけを比べます。

完全に震えを消してから本番に臨む必要はありません。多少揺れていても、名前の一音ずつが立って文末まで届いていれば、聞き手の記憶に残るのは震えではなく名前のほうです。

配属直後は、自己紹介の機会が一度では終わりません。部署の朝礼、他部署への挨拶回り、歓迎会。同じ一文をそのまま使える場面が続くからこそ、一度整えた名乗りは何度でも働いてくれます。研修室で立ち上がる直前に思い出すのは、うまい自己紹介のお手本ではなく、録音で確かめたあの息の通り方だけで十分です。

よくある質問

Q. 新人の自己紹介で声が震えるとき、最初に止めるべき癖は何ですか?
震えを消そうとして喉を固める癖は、かえって揺れを目立たせることがあります。私は肩を下げるより先に、吐く息の速度を一定にして、喉を前へ伸ばす方向を作ります。
Q. 自己紹介中に声が震え始めたら、その場でどう立て直せますか?
早く言い終えようとせず、次の句点で一度だけ息を整えます。名前や所属を繰り返す必要はなく、次の文の頭を少し短く出すと、震えに意識を奪われにくくなります。
Q. 自己紹介前の震え対策として、腹式呼吸を意識すれば十分ですか?
呼吸法の名前より、吸う時も吐く時も腹部の圧を急に抜かないことが重要です。お腹を大きく動かすより、息を細く一定に流し、声帯閉鎖を強めすぎないようにします。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事