言葉を飲み込んでもごもごする癖を直す。最後まで言い切る

語尾を飲み込んでもごもごする癖に悩む人へ。医療窓口やレジ接客の案内文言を例に、口の動かし方ではなく息の残し方から語尾を立て直す方法を紹介します。

奥津ユキ

「検査の結果は問題ありませんでした」と伝えたつもりが、患者さんから「今、なんとおっしゃいましたか」と聞き返される。レジで「以上でよろしいでしょうか」と言った語尾が、自分でも聞き取れないくらい小さくもごもごと消えていく。電話を取って名乗るときも、「お電話ありがとうございます、〇〇でございます」の後半、自分の名前の部分だけが特にくぐもって伝わりにくい。話の中身は最後まで用意しているのに、最後の一音だけがいつも飲み込まれてしまう。私のところにも、こうした「語尾がもごもごする、言葉を飲み込んでしまう」という相談がよく届きます。

語尾を飲み込む癖は、性格でも早口だからでもありません

「自分は喋るのが苦手だから語尾がはっきりしない」と、性格のせいにしてしまう方がいますが、私はそうは考えていません。早口だから語尾が消えるという単純な話でもありません。語尾が飲み込まれる場所を見ていくと、そこには決まって共通の理由があり、性格や話すスピードの問題ではなく、体の使い方の癖として直せる範囲のことです。

「聞き取れませんでした」と言われる場面は、たいてい同じ場所で起きています

医療窓口で検査結果や会計の案内を伝えるとき、聞き返されるのはたいてい文の最後の部分です。「問題ありませんでした」の「でした」、「〇〇円になります」の「なります」、患者さんが最も知りたい肝心な部分ほど、もごもごと消えてしまいます。文の前半ははっきり聞こえているのに、最後だけが弱くなるのは、そこで息が尽きてしまっているからです。伝えたい情報の核心が語尾に来ることが多いだけに、この癖は相手の理解に直結してしまいます。

口を大きく動かしても直らないのは、動かす場所が違うから

もごもごを直そうとして、口を大きく開けたり動かしたりする練習をする方がいますが、それだけでは直らないことが多いです。実は滑舌の良い人ほど、意外と口を大きく動かしていません。口をこもらせずにもごもご話している場合には口の動きが関係することもありますが、根本の原因は別のところ、つまり語尾での息の残り方にあります。口の動かし方を変える前に、まず息の使い方を見直すほうが、遠回りをせずに済みます。鏡の前で大きく口を動かす練習を積んでも語尾のもごもごだけが直らない、という方に共通しているのは、口の形は整っているのに、文の後半に届くころには息の圧がすでに落ちているという点です。

舌が上顎から離れているだけで、語尾は溶けます

もごもごと言葉がにじむように聞こえる人の多くは、話していないときに舌が上顎から離れ、だらんと下がった状態になっています。日常的に舌を上顎につけておくことは、話し出す瞬間の子音のはっきりさに関わってきます。特に語尾の子音、「です」「ます」の「す」の部分は、舌の位置が定まっていないと余計にくぐもって聞こえます。口を大きく動かすことより、舌がどこにあるかのほうが、もごもごには直接効いてきます。会話の合間、舌が上顎から離れていないか、ふと思い出したときに確認するだけでも変わってきます。パソコンに向かって黙々と作業している時間が長い仕事ほど、口を動かさない時間が延びて舌が下がったまま固定されやすいので、意識して思い出す回数を増やしておくとよいです。

語尾が消えるのは、そこで息が切れているだけです

上手に話す人ほど、一音一音が短く、区切りがはっきりしています。長すぎる一音はどこかでくっついてしまい、次の息継ぎが入らなくなるので、結果としてもごもごに聞こえやすくなります。逆にもごもごしてしまう人は、文の途中で息を使い切ってしまい、語尾に届くころには声を支える息がほとんど残っていません。「ここまで言えば伝わるだろう」と気を抜くタイミングが、ちょうど語尾と重なってしまうのです。直すべきは声を大きくすることではなく、文の最初から最後まで、同じだけの息の圧を保ち続けることです。

レジや窓口の決まり文句ほど、気を抜いて語尾が消えます

一日に何十回、何百回と繰り返す「ありがとうございました」「以上でよろしいでしょうか」のような決まり文句は、慣れているぶん気が抜けやすく、語尾から先に力が抜けていきます。初めて話す内容には自然と気を配れても、繰り返しの文言では脳が先に済ませたつもりになり、体がそれについていってしまうのです。決まり文句だからこそ、最後の一音まで息を残す意識を、あえて毎回思い出す必要があります。会計待ちの列が伸びている時ほど、早く済ませたい気持ちが先に立ち、語尾を最後まで置く前に次の動作へ気持ちが移ってしまいます。急いでいる時こそ、語尾だけは丁寧に置く、という順番を崩さないでおくことが大切です。

名乗りの語尾がもごもごすると、名前を何度も聞き返されます

電話に出て最初に名乗る一言は、一日に何十回と繰り返す言葉です。「お電話ありがとうございます」までははっきり出せていても、続く自分の名前の部分になると、慣れと油断からふっと息が抜けてしまう方が多くいます。名前は短い言葉である分、息が残っていないと一瞬でもごもごに埋もれてしまいます。名乗りの言葉は前半より後半、つまり名前のところに向けて息を残しておく、という順番で捉え直すと変わってきます。名前を聞き返されるたびに大きな声で名乗り直そうとする方もいますが、声量を上げるより、息の残し方を変えるほうが、次の一回で聞き返されずに済むようになります。

患者さんへの説明では、語尾ほど丁寧に扱います

検査結果や次回の予約について伝えるとき、内容が専門的であるほど、話し手は前半の説明に意識を集中させてしまい、結論にあたる語尾がおろそかになりがちです。ですが患者さんが本当に聞きたいのは、たいてい文の最後にある結論の部分です。前半に力を使いすぎず、語尾のために息を残しておくという配分に変えるだけで、聞き返される回数は減っていきます。専門用語を正確に言うことに気を取られるあまり、そこで息を使い切ってしまい、肝心の「問題ありません」「様子を見ましょう」という結論部分がもごもごと弱くなってしまうことも少なくありません。用語の正確さと同じくらい、結論の語尾に息を残すことを意識してみてください。

「検査結果は問題ありませんでした」で練習します

医療窓口で使う一文を練習に使います。

「検査結果は問題ありませんでした」

まず普段どおりに録音します。次に、話す前に一度大きく息を吸い、文の前半で息を使いすぎないよう意識しながら、「ありませんでした」の語尾まで息を残して録音します。同じ速さで話しているのに、二回目のほうが最後の一音まではっきり届いていることに気づくはずです。忙しい診察の合間でも、この一文だけなら一日の始まりに一度練習しておくだけで十分です。

続けて、レジや窓口の決まり文句も同じように練習します。「以上でよろしいでしょうか」を、最後の「か」まで息を切らさずに言い切ってみてください。声を張り上げる必要はなく、息を最後まで持たせるだけで、語尾のもごもごは薄れていきます。名乗りの「お電話ありがとうございます、〇〇でございます」も同じ形で、名前の部分に向けて息を残す練習をしておくとよいです。

録音でチェックするのは、滑舌の良さではありません

自分の声を録音で聞くと、滑舌が良いかどうかを気にしてしまう方が多いのですが、確かめたいのはそこではありません。文の語尾まで息が残っているか、舌が上顎から離れっぱなしになっていないか、この二点だけを聞き分けてください。滑舌の判定を始めてしまうと、本当に直すべき息の配分から意識がそれてしまいます。数日にわたって同じ一文を録音し続けると、自分がどのあたりで息を使い切ってしまう癖があるのか、パターンとして見えてくるはずです。

もごもごは、口先ではなく息の配分で変わります

言葉を飲み込んでもごもごする癖は、性格でも早口だからでもなく、文の後半で息が尽きてしまっていることが大きな原因です。舌を上顎に軽くつけておく習慣を持ち、文の前半で息を使いすぎず、語尾のために息を残しておく。この二つを、次に検査結果を伝える前に、電話で名乗る前に、あるいはレジで会計を案内する前に、一度だけ思い出してみてください。口を大きく動かす練習を増やすより、ずっと早く語尾は戻ってきます。

無料動画講座では、口の動かし方に頼らず、息の配分から語尾までしっかり届く話し方を作る方法をお伝えしています。

あわせて読みたい記事

よくある質問

Q. 語尾がもごもごするのは、口を動かさずに話しているからですか
口をあまり動かさずに話すこと自体は、滑舌の良い人にもよく見られます。もごもごの原因は口の動かし方より、語尾で息が尽きてしまっていることのほうが大きいと私は見ています。
Q. 案内の決まり文句ほど語尾が消えてしまいます。直せますか
決まり文句は繰り返すうちに気が抜けやすく、語尾から力が抜けていきます。文の最後まで息を残す意識を持つだけで、決まり文句でも語尾は戻ってきます。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事