朝一番の電話で声が出ない人へ。起きたての喉を数分で起こす整え方
始業直後、まだ喉が起きていないうちに電話が鳴って声がかすれる人へ。寝起きの喉が低くこもる理由と、数分でできる整え方を解説します。
奥津ユキ
始業のチャイムとほぼ同時に電話が鳴り、受話器を取った瞬間の第一声だけがこもってかすれる。相手に「もしもし?」と聞き返され、寝起きだと気づかれたくないのに焦って余計に喉が締まる。これは声が弱いからではありません。まず、いまの自分の喉の状態を、一分の録音で聞き比べてみてください。
準備なしと準備ありの第一声を、録音で並べてみてください
スマホのボイスメモで、朝一番に使う応対の一文を二回録音します。
「おはようございます、〇〇でございます。」
一度目は何の準備もせず、いまの調子のまま録ります。二度目は、鼻からゆっくり息を吸い、口を閉じたまま短く吐いてから録ります。再生して並べると、二度目のほうが最初の音のこもりが薄れて、立ち上がりが軽くなっているはずです。呼吸を一往復させただけで、声そのものは何も変えていません。
朝の第一声が沈むのは、声帯が弱っているからではなく、体がまだ発声の準備をしていないだけ。この録音の差が、それをいちばんはっきり教えてくれます。
始業と同時に外線が鳴る仕事は、声を起こす時間がない
受付、総務、経理の窓口、コールセンターの早番、営業事務。始業と同時に外線が鳴る仕事に就いていると、声を出す準備をする猶予がほとんどありません。歌い手や役者であれば本番前に発声練習をしますが、オフィスワークではそんな時間は与えられず、いきなり本番の第一声を求められます。
先ほどの一文を寝起きのまま急いで出すと、声は喉の奥にとどまったまま前に出ず、相手には低く沈んだ印象として届きます。内容は間違っていないのに、声だけで「まだ本調子ではない人」に見えてしまうのは損なことです。
私の実感では、朝一番の声がこもって低く聞こえるのは、寝ている間に喉まわりの動きが止まっていたことの延長にすぎません。だからこそ、無理に声を張るより先に、体を起こす順番を踏むほうが早く戻ります。
腹式呼吸の量より、腹圧を切らさないことです
朝の声が出にくいと相談すると、深く腹式呼吸をして声を出しましょう、という助言をよく耳にします。間違いではありませんが、これだけを頼りにすると、かえって喉に力を入れて押し出す声になりやすいです。
私が見ているのはお腹の動かし方そのものより、腹圧をかけ続けられているかどうかです。お腹を大きく膨らませて吐くときだけ力を入れるのではなく、吸うときも圧を抜かない状態を保つと、寝起きの体でも息が流れやすくなります。膨らませる・へこませるという動きの大きさより、圧を切らさないことのほうが、朝の第一声には効きます。
深呼吸を一回して電話に出ようとする人は多いですが、大きく吸い込むだけでは喉の締まりは取れません。吸うときにも軽く圧を保った状態で、短く息を通してから声を出す。この順番のほうが、始業直後の慌ただしさの中でも実行しやすいです。感覚がつかみにくければ、椅子に座ったまま両手でお腹を軽く押さえ、その手を内側から押し返すつもりで息を吐いてみてください。押し返している間の張りが、切らさずにおきたい圧の正体です。
布団の中と洗面所でできる、声を出さない準備
出社前、まだ声を出せない状況でもできることがあります。一つ目は、あくびを一度、途中で止めるように我慢することです。あくびをすると喉の奥が自然に開きますが、最後まで出し切らずに軽く止めると、声を出さずに喉の奥の通り道だけを起こせます。
二つ目は、鼻からゆっくり息を吸って、口を閉じたまま短く吐くことです。声を出さなくても、この呼吸を数回繰り返すだけで胸まわりの固まりが緩みます。洗面所で顔を洗いながらでも、通勤の支度をしながらでもできます。
三つ目は、口を閉じたままごく小さく鼻歌のような音を鳴らすことです。声を張る必要はなく、鼻の奥に軽く響きを感じられる程度で十分です。これは家族や同居人がいても気づかれない大きさでできます。
三つとも、通勤電車の中でもマスクの下でもできます。出社までの動線に一つずつ置いておくと、席に着くころには喉の準備が半分終わっている、という状態を作れます。
始業前の数分と、電話が鳴った瞬間の二点
出社してデスクにつき、始業まで数分ある場合は、もう一段階進めます。大きな声を出す必要はありません。私がよく伝えているのは、口から声をまっすぐ出そうとしないという点です。口と息を一緒に押し出すのではなく、鼻の奥のほうに声を軽く響かせるつもりで、小さく「んー」と鳴らしてみてください。喉で音を作ろうとするほど詰まった感じが残ります。逆に、鼻腔のあたりに軽く当てるようにすると、少ない息の量でも通りやすい音になります。これを十秒ほど、二、三回繰り返すだけで、喉の奥の締まりはかなり和らぎます。
とはいえ、一本目の電話は準備が整いきる前にかかってくることがほとんどです。そういうときに見るべきは二点だけです。一つ目は、受話器を取る前に短く息を吐いているかどうか。二つ目は、最初の一音を喉ではなく鼻の奥から出そうとしているかどうかです。この二つさえ意識できれば、寝起きの声でも沈んだ印象は薄まります。大きな声で挽回しようとするより、小さくても軽い音で出だしを整えるほうが、結果的に相手には落ち着いた第一声として届きます。
二本目からの受け方と、在宅でオンラインに出る朝
一本目の電話をなんとか乗り切っても、そのあと立て続けに電話が鳴る仕事では、二本目、三本目で喉に負担をかけない受け方も必要です。焦って毎回大きな声で出ようとすると、喉が温まっていない時間帯ほど締めすぎてしまいます。受話器を置いたあと、次の電話が鳴るまでの数秒でも、口を閉じたまま短く息を吐く時間を作ってください。この数秒があるかないかで、午前中のうちに声がかすれてくるかどうかが変わってきます。
応対しながらメモを取る時間帯も要注意です。手元に目を落とすと顔ごと下を向き、声は受話器ではなく机に向かって出ることになります。姿勢を正す余裕がなければ、メモを取る紙を少し手前に引き寄せて、顔の角度だけでも浅く保ってください。それだけで声のこもり方が変わります。
出社せず自宅から働く日でも、始業直後にオンライン会議や通話がいきなり入ることがあります。画面越しでは表情も一緒に映るため、声がこもっていると「まだ寝ぼけている」印象がより伝わりやすくなります。自宅であれば、通話が始まる前に周りを気にせず声を出せる利点があります。マイクをまだ繋いでいない段階で、鼻の奥に軽く響かせる小さな声出しを一度挟んでおくと、画面が繋がった瞬間の第一声がまるで違ってきます。在宅か出社かで環境は変わっても、確認する場所は同じ二点です。
前日の夜からできることと、続くかすれの線引き
朝の声の出にくさは、当日の準備だけでなく前日の過ごし方にも関わります。前の晩に長く話し続けて喉を酷使した日や、乾燥した部屋で眠った翌朝は、喉の粘膜が乾いたまま起きることが多く、こもった声がより出やすくなります。当日の朝は、起きてすぐに水を一口飲むだけでも喉の通りは変わります。私の実感では、冷たすぎる水より常温の水のほうが、起きたての喉には馴染みやすいです。
もう一つ、第一声がかすれてしまったときのその場のリカバリも決めておきましょう。焦って強い咳払いを何度もすると、喉にはかえって負担が積み重なります。かすれた一言を言い直すより、次の一文の前に短く息を吐き、鼻の奥に響かせる意識で続けるほうが、声は早く戻ります。かすれは失敗ではなく、準備がまだ途中だという合図にすぎません。
なお、喉の痛みや強い違和感が数日以上続く場合は、乾燥や寝不足だけのせいにせず、医師や専門家に相談することも考えてください。無理に声を出す練習を増やす場面ではありません。
一本目の受話器は、鳴る前のひと呼吸で決まります
朝一番の電話で声が出にくいと悩む時は、声が弱いからだと決めつけず、喉と体がまだ発声の準備を終えていないだけだと捉えてください。あくびを止めて喉の奥を起こす。鼻から息を通す。腹圧を切らさない。受話器を取る前に短く吐く。この順番さえ体が覚えれば、始業直後の第一声は今よりも軽く出せます。
明日の朝、始業前にもう一度だけ録音してみてください。
「おはようございます、〇〇でございます。」
寝起きのままの声と、ひと呼吸置いてからの声。今日聞いたその差を毎朝作れるようになれば、一本目の電話はもう怖くありません。
よくある質問
- Q. 朝一番の電話で声が出にくいのはなぜですか
- 声帯そのものが弱いというより、寝ている間に体と喉がまだ動く準備をしていないことが関わっています。腹式呼吸の量よりも、腹圧を保ったまま息を流せているかを見てください。
- Q. 始業前に発声練習をする時間がない場合はどうすればいいですか
- 声を出さずにできる準備でも変わります。あくびを一度我慢しながら喉の奥を開く、鼻から短く息を通す、この二つだけでも出だしの硬さは和らぎます。
- Q. 何日も朝の声がかすれたままの時はどうすればいいですか
- 乾燥や寝不足だけで片付けず、痛みや強い違和感が続く場合は無理に声を出す練習を増やさず、医師や専門家に相談することも考えてください。
声が変わると、人生が変わる。
通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。
登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
ビジネスボイトレで変えるべきものは、話し方の型だけではありません。会議・プレゼン・商談で選ばれる声を、息・喉・体の使い方から整える考え方を解説します。
電話の第一声が暗く聞こえる原因。声色より先に整える入り方
電話の第一声が暗い、低い、元気がないと言われる時に、声色ではなく息・間・語尾から整える方法を解説します。
話すと喉が乾く人へ。水分だけでなく発声の負担も見る
話していると喉が乾く、声が出しにくくなる人へ。水分補給に加えて、喉で押す癖、息の浅さ、語尾の使い方を見直します。

朝の声がこもるかどうかは、その日の調子や性格で決まるものではありません。喉と体が発声の準備を終えているかどうかで、同じ一言でも届き方は変わります。