マイクを持つと声が急に大きく聞こえて、相手が耳を離したくなる。司会やプレゼンの本番でこれが起きると、内容よりも声の圧の方が印象に残ってしまいます。そんな場面でつまずく人の多くは、声そのものの性格を直そうとしますが、実際にはマイクとの距離感を忘れて普段の勢いのまま声を当ててしまうこと、そして息が強く当たりすぎることの方が原因になっているケースが目立ちます。
一文を録音して、圧が強くなる場所を先に特定します
次の一文を、いつも通りの声量でそのまま録音してください。
「それでは、次の内容に移ります。」
聞き返す時に確認するのは三点です。「それでは」の出だしが急いで飛び出していないか。途中で息が途切れていないか。「移ります」の語尾が力なく落ちていないか。うまいかどうかの採点はまだ必要ありません。この三点を耳で拾うだけで、圧の強さがどこから生まれているかが見えてきます。出だしが強い人、途中で息が切れる人、語尾で力が抜けきらない人では、その後に見るべき場所も変わります。
原因は声量不足ではなく、マイクに近づく前の入り方です
壇上でマイクを受け取った直後や、拍手が鳴りやまないうちに話し始める瞬間ほど、圧は強く出やすくなります。声が近すぎて圧が強くなり、聞き手が疲れやすい時、多くの人は声量を足そうとします。けれど、マイクに向かってさらに大きく話すと、喉に力が集まり、次の言葉がさらに出しにくくなります。確認したいのは、「それでは」の最初の音です。ここが喉の奥で鳴ると、続く言葉も奥にこもったまま出てきます。最初の音が息の流れに乗って出ると、同じ声量でも圧を感じさせずに前へ届きます。派手に発声し直す必要はなく、始まりの置き方だけを変えます。マイクを口元に近づけた瞬間に、無意識に喉へ力を入れてしまう人も多いので、その一瞬こそ確認する価値があります。マイクを使う時は自分の声もしっかり張るべきだと思われがちですが、実際にはマイクに声を乗せてしまえばよく、そこまで強く張る必要はありません。張ろうとする分だけ喉に力が入り、それがそのまま圧の強さとしてマイクに乗ってしまいます。会場が静かになった瞬間ほど、話し手は無意識に声を張ってしまいがちなので、そこは意識して力を抜いてください。
声を出す前に、息をひとつ通してから言葉を乗せます
この一文を声にする前に、まず口を開く形だけを作ります。声を出さない状態で、短く息をひとつ通します。そのあとで、その息の流れの上に同じ一文を乗せていきます。声を出す・出さない・乗せるという三段階に区切ることで、いつも喉から押し出していたのか、それとも息の上に声が乗っていたのかが、自分でもはっきり区別できるようになります。あわせて見てほしいのが顎の動かし方です。顎を大きく上下に動かして話すと、息の粒がそのままマイクに当たりやすくなります。顎はあまり動かさず、口を横に開く程度にとどめておくと、同じ声量でも当たる息の量が抑えられ、圧がやわらぐのを感じられるはずです。マイクを握る手に力が入っている時は、たいてい顎にも同じだけ力が入っているので、手の力を抜くところから始めても構いません。
息・喉・体の順番で確認します
一つ目は息です。マイクを持つ前に息が止まっていると、最初の音から硬くなります。順番を意識するだけで、練習の的が絞りやすくなります。深く吸い込もうとするより、短く吐く流れを先に作ります。吸う量を増やそうとすると胸や肩が上がり、かえって体が固まります。二つ目は喉です。喉で押して出す声は、その場では強く響いても長くは持ちません。声の大きさを先に測るのではなく、喉の奥をゆるめたまま出せる小さな声がちゃんと通るかどうかを先に確かめてください。三つ目は体です。首や肩、顎、舌の根元にこわばりが残っていると、息そのものは流れていても、マイクの手前で圧だけが余分に強くなります。足の裏をしっかり床につけ、首の後ろをすっと伸ばしてから一文を出してみると、喉ひとつで支えようとしていた癖に自分で気づけます。立ったまま話す司会の場面では、片足に体重が偏るだけでも首や肩に余分な力が入りやすくなります。
ハンドマイクでもピンマイクでも、確認する場所は同じです
マイクの圧の悩みは、持ち方や部屋によっても違って聞こえます。ハンドマイクでは近づきすぎて割れる。ピンマイクでは声を張って強くなる。オンライン配信では音量調整前の生の圧がそのまま届く。会場が広くなるほど後方まで届かせたい気持ちが先に立ち、マイクを通しているのに声を張ってしまう人もいます。反対に狭い会議室では、マイクが拾いすぎることを恐れて声を抑え込みすぎ、語尾が消えてしまうこともあります。見え方は違っても、確認する場所は同じで、入り、息、喉、体、語尾、間です。とくに見ておきたいのは、マイクを持ち上げる直前です。圧の強さは、話している最中よりも話し始める前にすでに決まっていることが多いです。切り替えを急いでいる、息を止めている、肩が上がっている、喉を先に固めている。この状態のままマイクに近づくと、声を出してから直すのは難しくなります。マイクを受け取ってから話し始めるまでの数秒間を、確認のための時間として使えるかどうかで、最初の一音の圧はかなり変わります。
うまくいかない時は、声ではなく条件を戻します
練習を重ねても圧が変わらない時は、声の才能ではなく、マイクに近づく前の条件がずれていることが多いです。切り替えを急いでいる。息を吸いすぎて胸が固い。強く届けようとして喉が上がっている。語尾を最後まで聞かずに次の言葉へ移っている。こうした小さな条件が、聞き手が感じる圧の強さを左右します。うまくいった日だけ時間をかけて練習するのではなく、短時間でも同じやり方を繰り返す方が、後で同じ声を出しやすくなります。マイクを長く持つ日や、声を張る時間が続いた日に、喉に痛みや強い違和感が残る時は、その日は練習で押し切らないでください。水分を取る、休ませる、その場では声量を上げない判断も必要です。圧を整えることと、喉を無視して声を出し続けることは別の話です。長時間の司会を控えている日ほど、練習の量より、声を出す前の準備を丁寧にすることの方が効いてきます。
仕上げは、短い言い換えと語尾の余白で確認します
「それでは、次の内容に移ります。」に慣れたら、同じくらいの長さの一言で確認します。「よろしくお願いします」「ありがとうございます」のように、司会や進行でよく使う短い言葉ほど、入りの圧と語尾の癖がそのまま出ます。確かめる時は、言い切った後に半拍分だけ、そっと声を止めてみてください。その止めた半拍の間に、喉に苦しさが残っていないか、息がまだ止まりきっていないか、肩に力が入ったままになっていないかを観察します。この半拍を確認する癖がつくと、本番でも自分の圧を耳で追いかけられるようになります。語尾が急に切れると、内容は同じでも圧だけが強く残ります。反対に語尾まで息が残ると、同じ声量でも威圧感が薄れます。もう一度、いつも通りの声量、息を流してから、語尾まで残す、の三パターンで録音して、じっくり聞き比べてみてください。
練習量より、再現できる条件を残します
圧を早く変えたいほど、練習の回数を増やしたくなります。ただ、切り替えを急いだままの条件で回数だけ増やすと、喉で押す癖の方が強くなることがあります。短く、同じ一文で、同じ順番で確認する方が、圧が和らいだ状態を残しやすくなります。回数を重ねることより、同じ条件を再現できることの方が、本番での安定につながります。一回練習するごとに、息・喉・体・語尾・間のうち、どこが変わったかを一つだけ選んで確認します。すべてを一度に直そうとすると、声はかえって不自然な作りものになってしまいます。まず息を止めないこと。次に喉で押さないこと。最後に語尾を残すこと。この三つを順に見ていくだけで、マイクを通した時の圧は自然と落ち着いていきます。焦って三つ全部を一度に確認しようとせず、今日はどれか一つだけと決めて臨む方が、本番でも思い出しやすくなります。大きく出せた一回よりも、同じ条件で何度でも出せる一回を残しておくことの方が、司会やプレゼンの本番では、結果として長く役に立ちます。
よくある質問
- Q. マイク 声が大きすぎるの原因は何ですか
- 声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
- Q. すぐできる練習はありますか
- 短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
- Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
- 痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →プレゼンで声が震える原因と対策。メンタルではなく筋肉から整える方法
プレゼンで声が震える原因は、メンタルではなく筋肉です。本番3分前にできる対策2つから、前日・1週間かけてやる本格対策まで、ボイストレーナーが時間軸別に整理しました。
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