ロングトーンで声がすぐ揺れる、途中で苦しくなる、最後まで伸ばせない。その原因の多くは、実は伸ばし始める前の吸い方にあります。
伸ばしている間、音の中央を見失っていないか
発表の開始前を想定し、確認用の文として「これよりご説明を始めます」と言ってみてください。一度目は、その最初の母音「あ」を、自分が保てる長さで伸ばし、終わりまで続けることだけに意識を置きます。二度目は、同じ高さ、同じ声量、同じ長さで伸ばしながら、始まり・中央・終わりの音の太さが並ぶように意識してください。変えるのは、途中の太さを追う意識だけです。文、姿勢、口の形は一度目と二度目でそろえます。
二度目に中央だけ急に細くならず、「これより」の入りでも音が散らなければ、長く続けることより音の均一さを見られています。私がこの場面でまず確認したいのは、どれだけ長く保てたかではなく、途中で支えが抜ける瞬間があるかです。二つの感覚に差が出なければ、時間の設定ではなく、高さが合っていないことや開始時の力みが別の原因かもしれません。その原因を確認してください。音の太さは、音量計のように数値化する必要はありません。中央で急に頼りなくなる、または終わりだけ押し出したくなる感覚がないかに注目します。二度目も長さを伸ばさないため、持久力との違いを分けて見られます。
長く伸ばせば安定する、という考えが喉を疲れさせます
この練習でやりがちな失敗は、長く伸ばせば自然に安定すると考えることです。けれど、伸ばす時間は強く押せば延びるわけではありません。喉で支える癖がつくと、その癖のほうが強く残ります。長く、大きく、高く伸ばす前に、まず短く楽に伸びる声を確認してください。
腹式呼吸を意識すれば長く伸びる、というものでもありません。お腹をどれだけ使っても、最初の一息で吐きすぎていれば、後半の息は残りません。大切なのは呼吸法の名前ではなく、息が先に流れて、その上に声が乗っている状態を最後まで保つことです。
秒数への焦りは、たいてい比較から生まれます。長く伸ばせる人を見ると、肺活量の差だと感じるかもしれません。けれど、同じ人でも吸い方と配分を変えるだけで伸びは変わります。最初の録り比べで、それをすでに体感しているはずです。
確認用の一文を決めて、揺れの原因を三つに分けます
毎日の確認には、次の一文を使います。
「最初に息を使い切らず、細く流して、最後まで声を残します。」
入りで力むと、息は一気に減ります。途中で気が抜けると、声は揺れます。文末まで録音で確認しないと、伸ばせているかどうかが感覚だけの判断になります。
揺れの原因は三つに分けて見てください。一つ目は息の配分です。最初に使いすぎると後半で足りなくなり、少なすぎると声が立ち上がりません。二つ目は喉です。伸ばしている音を喉の力で支え始めると、声は硬くなって揺れます。三つ目は体です。伸ばしている途中で肩がせり上がる、胸がこわばる、顎が浮く。そのたびに息の通り方は変わります。座っている時は保てるのに、立って伸ばすと後半で揺れるという人は、姿勢が変わって息の通り道が変わっていることが多いです。一回の練習で確かめるのは、このうちどれか一つだけにします。
練習は、短く区切ってから伸ばします
一つ目は、息だけの準備です。声を出さずに、短く吐きます。吸う量を増やすことより、吐く息が細く前へ伸びていく感覚を先に作ります。ここでお腹を大きく膨らませたりへこませたりする必要はありません。吐いている間だけでなく、次に吸う瞬間もお腹の圧を緩めずに保ち続けてください。ここで圧が抜けると、伸ばしている途中で息が急に失速し、揺れの原因になります。
二つ目は、短い声です。大きく伸ばそうとせず、まず二、三秒だけ楽な音量で声を保ちます。
三つ目は、一文の録音です。先ほどの一文を実際の言葉として声に出し、伸ばす感覚が言葉の中でも保てるかを確認します。
練習する高さにも順番があります。ロングトーンというと高い音を長く伸ばす姿を想像しがちですが、最初に選ぶのは、話し声に近い楽な中音域です。高い音は、それだけで喉の力みを誘います。息の配分がまだ身についていない段階で高さまで足すと、どちらの練習をしているのか分からなくなります。楽な高さで最後まで残せるようになってから、少しずつ上下に広げてください。
| 段階 | ロングトーンの練習 | 確認する場所 |
|---|---|---|
| 1 | 声を出さず息だけを吐き切る | 体が固まっていないか |
| 2 | 二、三秒だけ声を保つ | 喉で伸ばしていないか |
| 3 | 練習文を録音して聞く | 最後まで息と声が残るか |
揺れる時は、伸ばす秒数を先に短くします
声が揺れる時ほど、もっと長く伸ばそうとしたくなります。けれど、喉で支えている状態のまま長さを伸ばすと、揺れはむしろ大きくなります。まず、伸ばす秒数を短くしてください。
秒数を短くすると、自分の癖が見えやすくなります。息が最初から出過ぎていないか。喉で支えていないか。語尾まで息が保てているか。短い秒数で安定しないものは、長くしても安定しません。楽な息で入れて、揺れずに保てて、文末まで残る。そこまで確認できてから、秒数を少しずつ延ばします。
伸ばしながら片手をお腹に軽く当てておくのも、確認の助けになります。後半に近づくにつれてお腹の張りが抜けていくようなら、揺れの原因は喉ではなく、圧の維持のほうにあります。張りが抜けやすい人は、伸ばす前に一度だけ、吐き切ってから軽く吸うという順番を試してください。吐き切った直後は、吸いすぎそのものが起きにくくなります。
喉が痛む日は、記録を諦める判断をします
喉に違和感がある時に、無理にロングトーンを続ける必要はありません。ずきずきする痛みがある、いつもよりかすれる、時間を置いても戻らない。こうした日は、押し切らずに専門家へ相談する判断も必要です。
長く伸ばして声が枯れるのは声帯そのものが弱いからだと思われがちですが、私の実感ではそうとは限りません。多くの場合、伸ばしている間に声が大きすぎたり、息が必要以上に流れすぎていたりする使い方の癖のほうが関わっています。無理に伸ばした一回分の記録より、明日も同じように出せる状態を残すことを優先してください。違和感がある日は、秒数を伸ばさない、高音や低音を攻めない、息の配分だけを短く確かめる。それで十分です。伸ばす日と休む日を分けられることも、練習の力のうちです。
録音は秒数ではなく崩れた場所を聞きます
録音で見るのは秒数の長さではなく、同じ状態を再現できるかです。入りが楽だったか、途中で揺れなかったか、文末まで声が残ったか。この三つだけを聞きます。伸び全体をまとめて評価しようとすると、揺れの印象だけに気持ちが引っ張られます。
自分の頭の中で響く声には、骨を伝わった音も混ざっています。相手が実際に聞いているのは、そこを含まない外に出た音そのものです。録音の声に違和感を覚えても、それは失敗ではなく、聞こえ方のルートが違うだけのことです。
最初の一週間は、練習する一文を固定してください。一日目は息の配分だけ、二日目は喉の力みだけ、三日目は録音で語尾だけ、とテーマを日替わりで一つに絞ります。毎日秒数だけを記録するより、どの部分で崩れたかを一言メモしておくほうが、次の練習に生きます。メモは長く書く必要はありません。入りで押した、途中で揺れた、語尾が消えた。この程度の一言で、翌日の練習のテーマが決まります。
秒数の記録より、本番前の一息のために
ロングトーンは、秒数の記録を競う練習ではありません。歌う前や、長く話す場面の前に、息の配分を体に思い出させるウォームアップとして使うと効果的です。本番の直前は、短く二、三回、伸ばす感覚をなぞるだけで十分です。ここで確かめたいのは秒数ではなく、息が先に流れているかどうかです。この確認を挟んでおくだけで、本番の途中で息が切れて焦る回数は減っていきます。
歌だけでなく、朝礼の挨拶や長めの説明など、話す場面の前にも同じ使い方ができます。話し声は歌ほど音を伸ばしませんが、息が先に流れてから言葉を始めるという順番は同じだからです。
「最初に息を使い切らず、細く流して、最後まで声を残します。」
最初の録り比べを思い出してください。たっぷり吸った声より、軽く吸って細く流した声のほうが長く安定していたはずです。明日のロングトーンを延ばすのは、今日の吸い込みの深さではなく、細く流し続ける息の設計です。
よくある質問
- Q. ロングトーンで音程が下がるとき、息を増やすべきですか?
- 息だけを足すと声帯の閉鎖が緩み、音程がさらに不安定になることがあります。私は吐きながらも腹部の圧を抜かず、閉鎖を強めすぎない中間の加減で音を保ちます。
- Q. 長く伸ばすと後半だけ声がかすれるのはなぜですか?
- 始めを強く出しすぎて、後半に喉で支え直すと息漏れやかすれが出やすくなります。私は最初から大きく鳴らさず、均一な息の速度と短すぎない閉鎖を保てる音量を選びます。
- Q. ロングトーンは長さを競う練習にしてよいですか?
- 私は秒数を伸ばすことより、始まり・途中・終わりで音色が変わらないことを目標にします。苦しくなっても押し切る練習は喉を締める癖につながりうるため、余裕のある長さで止めます。
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詳しいプロフィール →声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
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