·プレゼンの声

保護者会・PTAで話す時の声。人前の緊張で上ずらせない

保護者会やPTAで自分の番が回ってきた瞬間に声が上ずる、震える方へ。緊張を根性で抑え込むのではなく、体の使い方から落ち着いて話す声を整える方法を解説します。

奥津ユキ

保護者会で自分の順番が近づいてくると、心臓が速くなり、話し始めた瞬間に声が上ずる。この経験がある方は少なくありません。多くの方はこれを人前が苦手な性格のせいと片づけますが、私が見ているのは、順番が来る直前に息をどう止めているか、最初の一音をどう出しているかという体の部分です。まず、家で一人のうちに確かめられる実験からやってみましょう。

名乗りの一文を、今この場で二回録音してみてください

スマホのボイスメモを出して、保護者会で実際に使う名乗りの一文を、そのまま録音してみてください。

「ひまわり組の保護者です。よろしくお願いいたします」

一回目は、何も準備せず、思い立ったまま話し始めます。二回目は、話す前に口を閉じて息をふっと吐き切り、短く吸ってから同じ一文を言います。二つを聞き比べると、緊張していない自宅ですら、一回目は最初の音が硬く出ていることに気づくはずです。息を止めたまま話し始めると声の出だしが乱れるという仕組みは、緊張の有無に関係なく、体にもともと備わっています。保護者会ではこの乱れが緊張で何倍にも増幅される、というだけのことです。

聞き返す時に、震えているかどうかは気にしないでください。見る場所は三つです。一つ目は最初の音。名乗る前に息が止まっていると、一音目が小さく震えて出ます。二つ目は「保護者です」の後の間。ここで焦って続きを急ぐと、いちばん聞いてほしい一文が流れます。三つ目は語尾。最後が消えると、内容はきちんと言えていても落ち着きのない印象が残ります。

なお、録音した自分の声が思っていたより高く頼りなく聞こえても、心配は要りません。自分の中で骨伝導を通して聞こえている声と、実際に周りへ届いている声はもともと違うもので、誰にでも当てはまる現象です。録音は震えの有無を判定する道具ではなく、この三点を確認する道具として使ってください。

保護者会で声が上ずるのは、性格ではなく息の止め方です

保護者会やPTAの場で緊張するのは、失礼なことを言わないか、周りにどう見られるかを気にしすぎているからだ、と考える方が多いです。もちろんそれもあるとは思いますが、それだけではありません。輪番で自分の番が回ってくる、大勢の視線が一斉にこちらへ向く、この状況そのものに体が反応して緊張する方も一定数います。性格の弱さだと自分を責める前に、体で何が起きているかを分けて見てください。

緊張すると声が高くなるのは、ある程度は仕方のない反応です。ただ、仕方ないからと諦める必要はありません。先ほどの録音で確かめたとおり、乱れの正体の多くは話し始める前の息にあります。息の使い方を整えるトレーニングを重ねると、同じ緊張度でも声の上ずり方は緩和していきます。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声が震える、上ずるという現象は、生まれ持った気の弱さだけで固定されているわけではありません。息の流し方、喉の力み方、体の構え、語尾の残し方。ひとつずつ整えるだけで、同じ緊張の中でも声の届き方は変わります。

場数・虚勢・目線そらし。よく聞く対策で解決しない理由

「場数を踏んで慣れるしかない」。保護者会の緊張について、こう言われた経験がある方も多いと思います。場数が助けになるのは事実です。ただ、それだけで解決すると考えるのは私は違うと思っています。緊張の根本は、場慣れそのものより、息をどう吸ってどう吐いているか、喉をどう使っているかという筋肉の使い方にあることが多いからです。回数を重ねても声の乱れ方が変わらない方の多くは、この体側の使い方がそのまま残っています。

無理に堂々と振る舞おうとするのも避けたいやり方です。堂々と大きな声で話すべきだと自分に言い聞かせて挑むと、それ自体が新しいプレッシャーになります。虚勢を張ろうとするほど喉に力が入り、結局いつも通り震えてしまうことが多いです。

聴衆の頭の上を見るとよい、という対策も聞きますが、私はおすすめしません。不自然な方向を見ていると、周りの保護者にはかえって緊張しているように映りますし、聞き手の反応が読めないぶん、話し手自身も安心材料を得られないまま話すことになります。見る場所を工夫するより、息を止めていないか、最初の一音を喉で押していないかを確認するほうが、実際の落ち着きにつながります。

パイプ椅子で順番を待つ間の姿勢が、話す前の声を決めます

保護者会は体育館や教室のパイプ椅子に並んで座り、端から順に立ち上がって話すことが多い場です。この待ち時間の過ごし方が、実は話し始めの声に影響します。

背中を丸めてスマートフォンの画面を見ながら順番を待つと、胸まわりが縮こまり、息も浅くなります。浅い息のまま急に名前を呼ばれて立ち上がると、最初の音が出にくくなるのは自然なことです。自分の番が近づいてきたら一度だけ姿勢を正し、足の裏が床にきちんとついているかを確かめてください。体が浮ついていると、息も同じように浮つきます。隣や後ろの保護者の私語が気になって緊張が高まることもありますが、そちらに意識を向けるより、自分の呼吸が止まっていないかを確認するほうが、話し始めの安定につながります。

立ち上がる瞬間も一つの山場です。パイプ椅子は動かすと大きな音が鳴りやすく、その音に焦って、立ちきる前に話し始めてしまう方が多くいます。椅子の音は誰も気にしていません。完全に立って、足の裏に体重が乗ってから口を開く。この順番を守るだけで、第一声の高さは変わります。

自分の番の直前30秒でできる準備

順番が近づいた時に深呼吸を何度も繰り返す方がいますが、かえって息が浅くなり逆効果になることがあります。やることは短くて十分です。

口を閉じたまま息を一度吐き切る。肩を持ち上げないよう気をつけて短く吸う。そのうえで、名乗りの一文を声には出さず口の形だけで動かしてみる。仕上げに、小さな声で一度だけ実際に発してみる。ここで確かめたいのは、震えが完全に消えたかどうかではなく、最初の音が抜け落ちていないか、それだけです。家で録音した二回目の入り方を、そのまま会場で再現する手順だと考えてください。

言うことを書いたメモを手に持って話す方は、紙の揺れで手の震えが目立ってしまい、それを見てさらに緊張が増すことがあります。メモは手に持たず、膝の上のバインダーや机に置いたまま視線だけ落とすようにすると、震えの連鎖をひとつ断てます。

話している途中で震え始めたら、一文を短く区切ります

自分の番になって話し始めてから震えが強くなることもあります。そこで全部を立て直そうとする必要はありません。話している一文を短く区切り、語尾まで言い切る。それでも収まらなければ、次の一文に移る前にひと呼吸分の間を置く。この間は気まずい沈黙ではなく、聞いている保護者たちに言葉を受け止めてもらうための時間です。焦って言葉を継ぎ足すほど、声はさらに震えて浅くなります。

自己紹介だけでなく、行事の分担を決める話し合いで急に意見を求められる場面や、役員として前に立って説明する場面でも同じことが起きます。話す分量が増えるほど途中で息が切れて語尾から崩れやすくなるので、短く区切る習慣は長めに話す場面ほど効いてきます。長く話すと分かっている日は、伝えたいことをあらかじめ一文ずつの箇条書きにしておくと、区切る場所を本番で探さずに済みます。震えを我慢して一息に最後まで詰め込むより、多少震えが残っていても、録音で確認したあの三つの場所さえ守れていれば、聞き手には落ち着いた発言として届きます。

次の保護者会の第一声は、今日録った一文です

保護者会やPTAで求められているのは、緊張を完全にゼロにすることではありません。震えが多少残っていても、聞いている保護者たちがそのまま受け取れる声です。

「ひまわり組の保護者です。よろしくお願いいたします」

今日この一文を二回録音した経験が、そのまま本番の準備になっています。人前で話す機会は、保護者会の後も、子どもの行事や地域のつながりの中で繰り返しやってきます。そのたびに緊張と根性で向き合うより、一度体の使い方を整えておくほうが、長い目で見て気持ちの負担は軽くなります。パイプ椅子から立ち上がる直前の、吐いて、吸って、口の形を確かめる数秒を、自分の型として持っておいてください。型があるという事実そのものが、順番を待つ時間の心細さを軽くしてくれます。

よくある質問

Q. 保護者会で声が震えるのは性格が弱いからですか
性格の問題だけではありません。人前という場そのものに体が反応しているだけのことも多く、筋肉の使い方を変えると同じ緊張度でも声の乱れ方は変わります。
Q. 場数を踏めば保護者会の緊張はなくなりますか
場数は助けにはなりますが、それだけで解決するとは限りません。緊張の根本は息の止め方や喉の締め方にあることが多く、体側からの対処も合わせて必要です。
Q. 自分の番の直前に何をすればいいですか
長く深呼吸を繰り返す必要はありません。息を一度吐き切ってから短く吸い、最初の一言だけ声に出さず口の形で確認するだけで十分です。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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