アナウンスの声。聞き取りやすく信頼される読み上げ方

仕事のアナウンスで声がこもる、早口、聞き取りにくい人へ。案内文を分かりやすく届ける声の整え方を解説します。

奥津ユキ

発車間際のバス車内、混雑した館内、次の到着駅を告げる直前。案内を読み上げると、こもる、早口になる、聞き返される。そんなときは言い回しを直す前に、まずスマホで一回録ってみてください。声を張るより先に直せる場所が、録音を聞くとすぐに分かります。

案内の第一声を録って、三か所だけ聞く

長い練習は要りません。まず「ただいまより、ご案内いたします」を、いつもどおりの調子で一回だけ録音します。聞き返すときに追うのは、出だしの音、重要語の手前の間、語尾の三か所だけです。出だしが小さいと聞き手は言葉の入り口を取りこぼし、重要語の前を急ぐと案内の核心が流れ、語尾が消えると内容は正しくても頼りなく響きます。

二回目は同じ一文をもう一度録り、出だしの音だけをわずかにはっきり入れてみてください。三回目は語尾だけを意識して残します。一回目と聞き比べると、変えたのは一か所だけなのに、案内全体の印象が変わっているのが分かるはずです。周囲の音を消して静かな場所で録る必要はありません。実際に読み上げる環境に近いほど、本番で崩れる場所がそのまま見つかります。

大声にする前に、抜けている場所を探す

聞き取りにくいと言われると、まず声を大きくしようとする人が多いです。ですが原因は音量不足だけではありません。言葉の頭、母音、息の通り道、語尾のどこか一箇所が抜け落ちると、内容が正しくても相手は聞き返します。

読み上げる前に息が止まっていないか、最初の一音を喉で押していないか、数字や場所名の前で余計に息を吸い直していないか、語尾の手前で息が先に切れていないか。このどれかが崩れていると、声量を上げても聞き取りやすさは戻りません。まずは自分がどこで崩れているかを、体の使い方として分けて確認してください。

たとえば発車が近づいていて焦っているとき、多くの人は息を止めたまま話し始めます。息が止まった状態で声を出すと、最初の一音がわずかに遅れて出るため、聞き手には案内の頭を聞き逃したように感じられます。焦っているときほど、読み始める前に一度だけ短く息を通すことが効きます。

息のスピードは自転車の走り方に似ています。ゆっくり漕ぐほど車体はふらつき、少し速く漕いだ方がかえって安定して自走します。声も同じで、息をゆっくり出そうとするほど声量は不安定になり、むしろ少し速く吐き切るつもりで読み始めた方が、大きく張らなくても声はまっすぐ通ります。次の停車駅や到着番号など、数字を含む部分ほどこの差がはっきり出ます。

マイクの前では、口を横に保ったまま話します

館内や車内のアナウンスは、聞こえないなら声を張り上げるしかないと思われがちです。ですが私の実感では、張り上げるほど声は喉にかかって硬くなり、かえって隅々まで届きにくくなります。

はっきり読もうとして口を縦に大きく開け閉めすると、母音の形がそのたびに崩れてマイクに音がのりにくくなります。私が現場で伝えているのは、口を大きく上下させず、横方向の形を保ったまま読むことです。開け閉めの動きを減らすだけで、同じ声量でも音の輪郭がマイクに乗りやすくなり、通りが変わります。

数字や場所名で聞き返されやすいのも、この開け閉めが原因であることが多いです。「3番出口」「4番のりば」のように似た音が並ぶ言葉ほど、口を縦に動かすたびに輪郭がぼやけます。横の形を保ったまま、一音ずつ短く区切って読むと、似た音同士でも聞き分けやすくなります。上手な読み上げほど一音一音が長く伸びておらず、短く切れて次へ渡っています。

声を別物に作り変えるのは遠回りです

低く作る、無理に明るくする、ひたすら大きく張る、ゆっくり読もうと意識しすぎる。どれも読んだ直後は変わった気がしますが、体の準備が変わらないまま本番を迎えると元に戻ります。喉で押して作った声ほど、語尾の手前から先に崩れていきます。

必要なのは新しい声を作ることではなく、伝えるべき情報を順番どおりに置くことです。最初の一文を短くする、重要語の前に一拍置く、最後の音まで息を残す。この三つだけで聞き取りやすさはかなり変わります。

作り込んだ声が続かないのは、体の準備が変わっていないからです。声の高さや大きさは表面の結果にすぎず、その手前で息がどう流れているかが決まらないうちに声色だけ変えても、長くは保ちません。表面を作る前に、まず読む前の一拍を整える方が近道です。

本番の30秒前は、これだけ整えます

読み上げの直前に長く発声練習をすると、かえって力みます。口を閉じたまま一度だけ息を吐き、肩を上げずに短く息を入れ、声を出さずに案内文を口だけで一度なぞる。最後に小さな声で一度だけ言ってみます。

確認するのは大きさではなく、最初の音が欠けていないか、喉で押していないか、語尾まで息が残っているかの三点です。ここまでできていれば、あとは普段どおりの声で十分届きます。

到着案内と迷子放送では、間の置き方を変えます

同じ「ただいまより」でも、発車の合図と到着の案内では急ぎ方が変わります。発車直前は時間に追われて早口になりやすく、到着案内は次の動作を促す情報が多く、聞き手が実際に動くための間が必要です。迷子や忘れ物の呼び出しはさらに落ち着きが要ります。慌てて読むと固有名詞が埋もれ、聞き手はかえって聞き返しに来ます。

場面が変わっても、直す場所は同じです。出だしの音、重要語の手前の間、語尾。この三か所さえ保てれば、急ぐ場面でも、落ち着かせたい場面でも、同じ体の使い方で対応できます。読む内容ごとに声を作り替える必要はありません。

姿勢が崩れると、喉だけ直しても戻りません

聞き取りにくいと感じると、多くの人はまず喉に力を入れます。ですが喉に力を入れるほど、声はかえって不安定になります。

足の裏が床についているか、原稿や周囲に気を取られて胸が閉じていないか、顎が前に出たり首の前側が固まったりしていないか。この三点を見てください。体が浮くと息も浮き、胸が閉じると声が前に出にくくなり、顎が固まると最初の一音を喉で押しやすくなります。立ったまま読む人はかかとに体重が寄りがちで、座って読む人は前かがみになって胸が閉じがちです。姿勢は場面によって崩れ方が違うので、まず自分がどちらの癖に寄っているかを知っておくと直しが早くなります。

読み上げ中に声が崩れても、すべてを一度に立て直そうとしないでください。一文を短くする、語尾まで言い切る、それでも崩れるなら次の文の前に一拍置く。この一拍は沈黙ではなく、聞き手に情報を渡す時間です。焦って次の文を重ねるほど、声はさらに浅くなります。次に読む一文の最初の音さえ思い出せれば、そこから立て直せます。

型を二つ決めておけば、言葉に迷いません

本番中に声が崩れる人の多くは、読みながらその場で言葉を選んでいます。選びながら読むと息が止まり、声は喉のあたりに詰まります。

アナウンスは言い方の種類を増やす必要はありません。案内を切り出す型は「ただいまより、ご案内いたします」。締めくくる型は「ご協力のほど、よろしくお願いいたします」。この二つを決めておけば、読みながら言葉を探さずに済み、息の流れも途切れにくくなります。

大切なのは立派な言い回しを増やすことではなく、短く、言いやすく、語尾まで届く一文を選ぶことです。長い言葉は緊張すると崩れますが、短い言葉は本番でも立て直しやすくなります。原稿に長い一文が来たときも、そのまま読もうとせず、意味の切れ目で自分の中で区切ってしまって構いません。区切った分だけ、語尾まで息を残す機会が増えます。

案内の内容が毎回違っても、直す場所は変わりません。最初の音、重要語の手前の間、語尾。この三か所を体に覚えさせておけば、原稿が変わるたびに読み方を作り直す必要はなくなります。

次にマイクの前に立つときは、うまく読もうとしなくて構いません。最初の音と語尾、この二か所さえ思い出せれば、案内は今日から聞き取りやすくなります。

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よくある質問

Q. アナウンス 声で最初に確認することは何ですか
声量だけでなく、話し始める前の息、重要語の前の間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
Q. 本番で声が弱くなるときはどうすればいいですか
最初の一文を短く決め、話す前に一拍置いて息を入れてから始めます。
Q. 練習では何を録音すればいいですか
実際に使う一文を録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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