電話を取り次ぐと「もう一度お願いします」と聞き返される。オンライン会議でマイクに声がうまく乗らない。接客の夕方になると声がかすれて弱くなる。相談を受ける面談で声が小さく頼りなく響く。どの場面でも、声量を上げようとしてもうまくいかない場合、原因は息が声帯の閉じないまま漏れ続けていることにあります。
声が弱いと感じると、多くの人はまず声量を足そうとします。ですが息が漏れたまま音量だけを上げても、聞き手に届くのは大きな息の音であって、芯のある声ではありません。まず見るべきは、大きさより先に、声帯がどれだけ閉じられているかという一点です。
| 場面 | 起きていること | 見る場所 |
|---|---|---|
| 電話の取次ぎ | 聞き返されることが続く | 出だしの息の量 |
| オンライン会議 | マイクに声がうまく乗らない | 声と息の割合 |
| 接客の夕方 | 声がかすれて弱くなる | 閉じ方の負担 |
| 面談・相談対応 | 声が小さく頼りなく響く | 声を抑える力み |
電話の取次ぎで、声が細く聞き取ってもらえない瞬間
受付や秘書の仕事で、電話を取り次ぐ場面を思い浮かべてください。
「恐れ入りますが、少々お待ちいただけますでしょうか」
丁寧に話しているのに、「もう一度お願いします」と聞き返されることが続く場合、声量ではなく声帯の閉じ方の弱さが関わっています。息のほうが声より多く出てしまい、相手の耳には言葉ではなく息の音として届いてしまうのです。私が見るのは、声を張っているかどうかではなく、「少々」の出だしで声がふわっと息にまみれていないかという一点です。
オンライン会議で、マイクに声がうまく乗らない瞬間
オンライン会議で発言しても、聞き返される、聞こえにくいと言われる場面です。
「今の説明で、よろしいでしょうか」
マイクの感度を疑って声量を上げる人が多いのですが、息の量が多く声の成分が少ない話し方だと、マイクにはむしろ息の音として拾われやすくなります。声を大きくする前に、声帯がしっかり閉じているかどうかを確かめてください。
接客の夕方になると、声がかすれて弱くなる瞬間
アパレルや小売の接客で、開店から夕方まで話し続けた終わりごろの場面です。
「こちらのお色でしたら、あと1点ございます」
朝は普通に出ていた声が、夕方には掠れて弱くなる。話した量が多いからだと思われがちですが、私の実感では、閉じ方の弱さを声量で補おうとして喉に負担をかけ続けていることのほうが大きく関わっています。
面談で相談を受けるとき、声が小さく頼りなく響く瞬間
相談員やカウンセラーが、相手の話を受け止める面談の場面でも同じ崩れが起きます。
「今のお話、詳しく聞かせていただけますか」
相手に威圧感を与えないよう声を抑えようとするあまり、息が多く声が少ない話し方になり、かえって頼りなく聞こえてしまうことがあります。優しさと弱さは別のものです。声を抑えることと、声帯を緩めて閉じないままにすることは、まったく違う動作です。相手を安心させたい気持ちが強いほど、この二つを混同しやすくなります。
奥津の見立て。締めて塞ぐのではなく、閉じ方の加減を整えます
息が漏れる、声がかすれるという悩みを持つ人ほど、喉を締めて塞ごうとします。ですが喉を意識して締めようとするほど、声はかえって硬くなり、息漏れも改善しにくくなります。一方で、喉を開いて力を抜けば自然に閉じると考えるのも違います。喉そのものは開けたまま、声帯だけはしっかり閉じる。この二つを分けて考えることが出発点です。
閉鎖の加減は、締めすぎでも緩すぎでも声を弱くします。締めすぎると声が硬く詰まり、緩すぎると息漏れやウィスパー気味の声になります。どちらに寄りやすいかは人によって逆なので、独学で自己判断するとかえって悪化させることもあります。
姿勢も無関係ではありません。猫背のまま画面や資料をのぞき込んでいると、腹圧がかけられず、息の流れそのものが弱くなります。腹圧というのは、お腹を大きく動かすことではなく、話しているあいだずっと横隔膜のあたりに圧をかけ続けることです。吐くときだけでなく、次の言葉を吸うときにもこの圧を抜かないでいると、閉じ方が整った状態を保ちやすくなります。
練習は、エッジボイスで閉じる感覚をつかむことから始めます
閉じる感覚を体で覚える練習として、「あ゛ぁ゛」と少しつぶした声を短く出すエッジボイスが有効です。とくに息が漏れやすいタイプの人には、この感覚が閉じ方の手がかりになります。
あわせて、ウィスパーのような小さな声で長めに基礎練を取ることも効きます。いきなり大きな声を出そうとせず、楽に出る小さな声のまま、「恐れ入りますが、少々お待ちいただけますでしょうか」を繰り返し出してみてください。小さい声で閉じ方が整えば、声量を上げてもその閉じ方は保たれやすくなります。
電話やオンライン会議でこもって聞こえる場合は、意図的に鼻にかけるより、口角を軽く上げることを試してください。口角を上げるだけで自然に鼻腔のほうへ声が乗り、こもりも息漏れも同時に和らぐことがあります。
録音では、出だしの息の量だけを聞き分けます
本番で使う一文をスマホで録音してください。「今の説明で、よろしいでしょうか」でも構いません。
一回目は普段どおりに読みます。二回目は出だしの前に短く息だけを吐いてから、軽い声で言葉に乗せます。三回目はエッジボイスで一度声帯を閉じる感覚を作ってから同じ一文を言います。三つを聞き比べると、声量を変えなくても、出だしの息の量だけで印象が変わる場所が見つかります。
聞くときに見るのは、声の好き嫌いではありません。出だしで息が先に漏れて聞こえていないか、文の途中で息の音が増えていないか。この二点だけに絞ってください。うまく言えたかどうかを採点し始めると、練習はそこで止まってしまいます。
本番前は、小さな声のまま閉じ方だけを確かめます
電話を取る前、会議に入る前に、長い発声練習をする時間はありません。口を閉じたまま一度息を吐き切り、肩を上げずに短く吸い直し、実際に使う一文を、声を出さず口の形だけでなぞります。そのあと、いつもより一段階小さい声で一度だけ言ってみてください。
ここで確かめるのは声の大きさではなく、閉じ方です。小さい声のままでも息漏れが目立たなければ、そのまま普段の声量で話しても閉じ方は崩れにくくなります。大きな声を先に練習するより、小さな声で崩れない状態を先に作るほうが、結果として長く安定した声を保てます。
喉に違和感がある日は、無理に閉じようとしないでください
喉に痛みや強い違和感がある日は、練習量を減らし、水分をこまめに取り、休息を優先してください。かすれや息漏れが数日続く、あるいは強い違和感が続く場合は、無理に声で乗り切ろうとせず、医師や専門家への相談も選択肢に入れてください。
場面が変わっても、確認する順番は同じです
電話ではうまく閉じられても、会議になるとまた息が漏れてしまうことがあります。これは後退ではなく、場面ごとに緊張の質や声の抑え方が違うために、体の準備が追いついていないだけです。そういうときも確認する順番を変える必要はありません。腹圧がかけられているか、声帯の閉じ方が締めすぎでも緩すぎでもないか。この二点を、その場面の一文で確かめ直せば十分です。
一度で完璧に閉じ方を整えようとせず、今日の一場面、ひとつの言葉だけで試してみてください。小さな声のまま閉じ方が変わったと感じられれば、それは前進です。
まとめ
息漏れで声が弱いと悩む人が直すべき場所は、声量ではなく、声帯の閉じ方の加減です。電話の取次ぎ、オンライン会議、接客、面談。場面は違っても、確認する順番は同じで、出だしの息の量と、文の途中で息が増えていないかの二点です。
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よくある質問
- Q. 息漏れは喉を締めれば直りますか
- 締めようとするほど声はかえって硬くなり、息漏れは減りにくくなります。締めるのではなく、息の流れに軽い声を乗せる順番を整えてください。
- Q. 夕方になると声がかすれて弱くなるのはなぜですか
- 話す量そのものより、閉じ方の弱さを声量で補おうとして喉に負担をかけていることが多いです。声量より閉じ方を先に見直します。
- Q. オンライン会議でマイクに声が拾われにくいのも息漏れが原因ですか
- 関係していることがあります。息の量が多く声の成分が少ないと、マイクには息の音として拾われやすくなります。
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息漏れは声量の問題ではありません。声帯がどれだけ閉じられているかという、閉じ方の加減の問題です。