歌の呼吸練習。息が足りない人が最初に確認したいこと

歌で息が足りない人へ。吸う量ではなく吐く息の配分と録音で安定させます。

奥津ユキ

歌の呼吸を練習する場面で声が安定しない時は、練習量より先に、息、喉、体、録音の順番を見ます。フレーズの途中で息が足りなくなる、高い音の手前で喉が締まる、語尾を伸ばし切れずに消えてしまうという状態があると、練習しているのに声が変わりにくくなります。

歌う前の呼吸で見るのは、吸う量より吐く流れです

歌で息が足りないと感じる人の多くは、まず吸う量を増やそうとします。けれど、深く吸っても、その息が声にうまく乗らなければ、フレーズの後半で声は痩せていきます。

声を出す前の息と体が、すでに固まっていることもあります。肩を上げて大きく吸うと、体は準備できたように感じても、実際は喉で支える癖が強くなりがちです。

たとえば、次の一文です。

「歌う前に短く息を吐き、声を乗せて、語尾まで録音します。」

短く息を吐きの部分で入りが硬直していると、声はそこから喉主導になります。声を乗せてで先を急ぐと、息の流れと声が離れてしまいます。録音しますまで実際に聞き返さずに終わらせると、変わったかどうかが感覚頼みの曖昧な判断になります。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は生まれつき決まっている部分だけで語れるものではありません。息、喉、体、そして録音を使った見直しを重ねることで、出し方そのものは後からいくらでも作り直せます。

「吸えば伸びる」という発想が、後半で声を痩せさせます

呼吸練習でつまずく人の多くがはまる罠は、たくさん吸えばロングトーンが伸びるという思い込みです。息切れを感じるたび、次はさらに深く吸おうとして、結果的にフレーズ後半まで喉に頼る癖を育ててしまいます。

高い音、伸ばす音、大きな音をいきなり狙う前に、まず楽に出せる入り方を確認する。これが遠回りに見えて一番早い道です。歌声を強くするには毎日大きな声で歌い込むしかない、とよく言われますが、私の実感ではむしろ、体そのものの筋肉を鍛えるブレストレーニングの方が効果的です。大声を出す回数を積むより、息を扱う筋肉を静かに鍛える方が、遠回りに見えて結果は早く出ます。

チェックする順序は、息、喉、体、録音の四つです。フレーズに入る前に呼吸が止まっていないか。高音の手前で喉が締まっていないか。肩や胸が固くなっていないか。そして録音を聞き、昨日と同じフレーズを同じ質で歌えているか。この順に見ると、練習が迷子になりません。

声が乗らない原因は、たいてい一つではなく重なっています

呼吸練習で結果が出ない時、原因を一点に絞り込もうとしないでください。フレーズ途中で息が切れる、高音の手前で喉が締まる、語尾が伸び切らない。この三つは、息・喉・体という別々の要因が絡み合って起きています。

まず息。強すぎれば声は押しつぶされ、弱すぎれば届きません。大事なのは吸う分量ではなく、フレーズが終わるまで途切れずに流れ続けることです。

次に喉。高音や伸ばす音を喉の力だけで作ろうとすると、声は硬直します。音程も響きも持続時間も、喉一本で支えようとした瞬間に不安定になります。

最後に体。肩が上がる、胸が固まる、顎が上がる。このどれかが起きると息の流れが変わり、体の力みが喉の代償行動を引き出します。

練習は、声を出す前の静けさから組み立てます

まずは息だけの下ごしらえです。声を出さず、短く吐く。大きく吸い込むより、吐く息が前方へ流れる感覚を先に作ります。慣れてきたら、息を吸ってから一気に速く吐き切る練習も加えてみてください。ゆっくり長く吐く感覚ではなく、吐くスピードそのものを体で覚える練習です。歌のうまい人ほど、実は一音一音の長さが短めです。伸ばしすぎた音は次の音とつながって重くなり、ブレスを取る隙間が消えていきます。

続いて小さな声。大きく出す必要はまったくありません。喉に押されていないかを確かめる目的だけで、楽な音量で発声します。

三段階目で、実際のフレーズを録音します。発声だけで終えず、歌詞に乗せた状態まで確認するのがポイントです。音階だけなら整っていても、言葉が乗った途端に崩れることは珍しくありません。歌詞になった状態でどう響くかまで見届けます。

練習で使う一文はこれひとつです。

「歌う前に短く息を吐き、声を乗せて、語尾まで録音します。」

短く息を吐きの部分が硬いと、声は喉先行で始まります。声を乗せての部分を急ぐと、息と声がばらばらになります。録音しますまで聞かずに終えると、変化が感覚だけの曖昧なものになります。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

声は、生まれつきの器官だけで決まるものではありません。息、喉、体、そして録音による確認を重ねると、出し方そのものを作り直せます。

音量ではなく、息の通り道を先に見直します

声が届かないと感じるほど音量を上げたくなりますが、喉で押している状態のまま音量だけ上げると負担が増えるだけです。まず一段階、音量を落としてみてください。

音量を落とすと、自分の癖が浮き彫りになります。息が止まっていないか。喉が押していないか。語尾が消えていないか。小さな声のフレーズで揺らぐものは、大きな声にしても揺らいだままです。

小さい声で「短く息を吐き」がすんなり出るか、「声を乗せて」へ息が途切れずつながるか、「録音します」まで息が残るか。この三つを小さな声で確かめてから、少しずつ音量を戻していきます。

喉の違和感を判断材料にすることも練習のうちです

喉に違和感があるのに、無理に高音やロングトーンへ進む必要はありません。痛みがある、かすれが強い、休んでも戻らない。こうした状態が続くなら、練習で押し切るのではなく専門家に相談する判断も必要です。

喉を守ることは練習を怠けることではなく、歌う声を長い期間使い続けるための技術です。一度だけ強く伸ばせることより、必要なフレーズをいつでも安定して歌えることのほうが価値があります。

録音で確かめるのは、声の好みではなく再現性です

録音した自分の声を聞くと、嫌な気持ちになることがあります。ただ、録音で確かめたいのは好き嫌いではなく、同じフレーズを同じように再現できているかどうかです。

昨日と比べて「短く息を吐き」が楽に入ったか。「声を乗せて」で息が止まらなかったか。「録音します」まで声が残ったか。見る点はこの三つに絞ります。

録音を挟むと、感覚ではなく音として確認できます。自分の頭の中で聞こえている声と、外に実際に届いている声は別物です。その差を埋めるために録音を使います。

最初の一週間は、フレーズを変えないほうが進みます

日替わりで違う曲やフレーズを練習すると、何が原因で変化したのか分からなくなります。最初の一週間は、あえて同じフレーズだけを使ってください。

「歌う前に短く息を吐き、声を乗せて、語尾まで録音します。」

この一文を毎日録音します。音域を広げる日をつくるのではなく、息を見る日、喉を見る日、語尾を見る日というふうに、一日一テーマだけ決めてください。

一週間続けると、自分がどの局面で崩れやすいかの傾向が見えてきます。傾向が見えてから練習量を増やせば、闇雲に長時間練習する必要はなくなります。

出せない時は、声を疑う前に手順を疑います

思うように声が出ない時、多くの人はすぐに声そのものを直そうとします。もっと高く、もっと伸ばして、もっと響かせて、もっとはっきりと。ただ、声を触る前に手順を元に戻すほうが安定します。

まず戻すのは息です。息が止まったままフレーズへ入ると、喉が先に働き始めます。次に戻すのは体です。肩や顎が固まると息の流れが乱れます。最後にようやく声を見ます。息と体が整った状態で、楽に出る声を確認するという順番です。

この順番さえ守れば練習の質は変わります。声を直接いじろうとするより、声が出やすい環境を整えるほうが、喉への負担も少なくて済みます。

録音で聞き分けるのは、たった三つの変化です

録音を聞くときに、フレーズ全体の巧拙を判定しないでください。全体を評価しようとすると、好き嫌いや気恥ずかしさに引っ張られます。見るべき場所は三つだけです。

一つ目、フレーズの入り。声が喉から押し出されていないかを聞きます。

二つ目、途中の息。声が途切れたり、不意に強くなったりしていないかを聞きます。

三つ目、フレーズの終わり。語尾や音の切れ目まで息が残っているかを聞きます。

このどれか一つでも変化があれば、練習は前に進んでいます。劇的な変化だけを成果と見なさないでください。歌声は、小さな再現性を積み上げることで変わっていきます。

一度で仕留めようとしないほうが、結局早く変わります

上達を急ぐほど、一回の練習で強い手応えを求めたくなります。ただ、強い手応えを求めるほど、喉に頼って頑張る癖がつきます。

最初は楽に出せる音域だけで十分です。高音も低音も大きな声も、まず楽なフレーズを確立してから広げていきます。楽な範囲を飛ばして難しい音へ進むと、声はかえって不安定になります。

一日目は息だけを観察する。二日目は喉の力みだけを観察する。三日目は録音で語尾だけを観察する。これくらいの分量で十分です。テーマを分けるほど、何が変わったのかが具体的に分かります。

喉の違和感がある日は、あえて練習を軽くします

喉に違和感がある日は、まず練習を続けるかどうかを判断してください。痛みがある、かすれが強い、休んでも戻らない状態が続くなら、発声で無理に解決しようとしないことです。

軽くする日は、音域を広げません。高音を攻めません。長く伸ばしません。息を流して、短いフレーズを一回だけ録音する程度にとどめます。

喉を守ることは怠けることではなく、安定して歌い続けられる状態を維持することも、呼吸練習の一部だと考えてください。

仕上げの確認は、いつも同じフレーズで行います

練習の最後には、同じフレーズを録音します。毎回違う曲を使うと、何が変わったのか判別しづらくなります。同じフレーズであれば、息、喉、語尾の違いが耳で聞き取りやすくなります。

昨日より楽に出せたか。昨日より喉が押されていないか。昨日より最後の音が残っているか。この三点だけで十分です。

歌声を変えるというのは、別人の声になることではありません。自分の声を、フレーズの最後まで同じ質で再現できるようにすることです。

練習を締めくくる時は、条件と喉の状態を両方見ます

最後は新しいことを増やさず、同じ条件で一度だけフレーズを録音します。同じ音量、同じフレーズ、同じ距離で録ると、声の変化が比較しやすくなります。

聞く場所は固定します。入りが喉から押し出されていないか。途中で息が止まっていないか。最後の音まで残っているか。そして喉が軽く、同じフレーズをもう一度歌える余力が残っているか。この四点です。

条件をそろえて比べれば、感覚ではなく音そのもので判断できます。歌声は一回の手応えよりも、再現できる回数を積み重ねることで変わっていきます。

まとめ

呼吸練習で結果が出にくいと感じたら、たくさん吸えば伸びると考える前に、息、喉、体、録音という順番で見直してください。「短く息を吐き」の入り、「声を乗せて」の息の流れ、「録音します」までの確認。この三か所を整えるだけでも、練習の質は変わります。

声を変えるということは、喉で頑張ることではありません。フレーズの最後まで、体で再現できる声を積み重ねていくことです。

よくある質問

Q. 歌 呼吸 練習では何から始めるべきですか
最初は声量や高音より、息が止まっていないか、喉で押していないか、録音で再現できるかを確認してください。
Q. 毎日練習した方がいいですか
短い練習を続けるのは有効です。ただし喉に痛みや強い違和感がある日は無理に続けず、練習量を落としてください。
Q. 録音は必要ですか
必要です。自分の中で聞こえる声と相手に届く声は違うため、録音で入り、息、語尾を確認します。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事