硬くこわばった声をやわらげる。緊張が声に出る癖を直す
「声が硬い」「怖い」と言われる人へ。初対面のあいさつや後輩指導の場面を例に、緊張ではなく喉の締めすぎから声のこわばりを解く方法を紹介します。
奥津ユキ
名刺交換のあと「〇〇と申します、よろしくお願いいたします」と言った瞬間、自分の声が硬く、少し上ずって聞こえた。相手はにこやかに応じてくれているのに、自分では緊張が声に出てしまった気がして落ち着かない。他部署に初めて電話をかけて用件を伝えるときも、電話口の第一声だけがやけに硬くなる。後輩に一言注意をするときも、優しく言おうとしているのに声だけが硬くなり、怖がらせてしまったかもしれないと後から気になる。私のところにも、こうした「声が硬い、こわばると言われる」という相談はよく届きます。
声の硬さは、性格の硬さではありません
「自分は緊張しいだから声が硬くなる」と、性格のせいにしてしまう方が多いのですが、私はそうは考えていません。声の震えや小ささと同じで、硬さやこわばりもメンタルだけの問題ではなく、筋肉の使い方が関係しています。緊張すると筋肉が固まりやすくなる経路はあるので、対策は気持ちの持ちようではなく、喉や顎という体の側で打つほうが確実です。性格をどうにかしようとするより、ずっと再現性があります。
硬くこわばった声の正体は、喉の締めすぎです
声が硬いと感じるとき、多くの場合は喉を締めて発声しています。高い声を出そうとするときに声帯を平行に締めるほど、声は震えず硬くなり、伸びやかさが失われます。直すべきは喉を「締める」ことではなく、「前に伸ばす」感覚に変えることです。締めて我慢する発声から、伸ばして流す発声に変わるだけで、同じ言葉でも耳あたりがやわらかくなります。
初対面のあいさつで、声が一段こわばるのはなぜか
名刺交換や初めての自己紹介の場面では、「きちんとした人だと思われたい」という意識が働きやすく、そのぶん喉にも余計な力が入ります。声を整えようとすればするほど、逆に喉の締まりは強くなり、こわばりが増していきます。「〇〇と申します」の出だしで、まず一度だけ顎の力を確認してみてください。顎が上がって喉が締まっていないか、そこに気づくだけで最初の一言の硬さは変わってきます。
後輩に注意する場面ほど、声を強めようとして硬くなります
優しく伝えたいのに、内容が注意や指摘だと、無意識に声を強く出そうとしてしまう方がいます。ですが声を強めようとする力みは、そのまま喉の締めつけになって伝わります。腹に力を入れたまま話すと、喉の力みで硬くなる感覚は減っていきます。強く言い切ろうとするより、腹圧で支えながら最後の一音まで息を残すほうが、結果として落ち着いて聞こえる声になります。特に「これは直しておいてください」のような短い指摘は、語尾を強く止めるほど命令口調に響きやすく、逆に腹圧で支えながら息を流すように言い切るほうが、伝えたい厳しさは保ちつつ硬さだけが抜けていきます。
「よそ行きの声」を作り込むほど、硬さは増します
第一印象を良くしようと、普段より高く整えた声、いわゆるよそ行きの声を作ろうとする方がいます。ですが、あまりに作り込んだ声はかえって不自然に響き、聞き手には硬さや緊張として伝わってしまうことがあります。声を作り込むこと自体が、喉に余計な力をかける動作だからです。素の声のトーンを少しだけ明るくする程度にとどめておくほうが、印象にも自然さが残ります。
電話口の第一声だけが硬くなるのも、同じ理由です
対面の会話は自然にできるのに、他部署への電話で用件を切り出す第一声だけがやけに硬くなるという方もいます。相手の顔が見えない分、失礼にならないようにと身構える気持ちが強く働き、受話器を取る前から喉に力を入れてしまっているのです。受話器を持つ手と反対の肩を一度軽く落としてから話し始めるだけでも、出だしの硬さはやわらぎます。用件そのものより先に、体の力みを一度抜いておくことのほうが効きます。内線番号を押す指先が緊張で強張っているようなら、それは喉にも同じ力みが移っている合図だと思って、押す前に一度肩を落としてみてください。
大きく堂々と話すことだけが、自信ではありません
緊張を隠そうとして、ハキハキと大きな声で堂々と振る舞おうとする方もいます。ですが元気に大きな声を出すことは自信のひとつの形にすぎず、静かに落ち着いて話すことも、もうひとつの自信の形です。大声を出すからといって、自信満々な印象を必ず与えられるわけではありません。むしろ無理に元気を出そうとするほど喉が締まり、硬さが増してしまうことのほうが多いのです。声を大きくして虚勢を張ろうとすると、体はかえってその無理を感じ取り、次の一言でまた硬さがぶり返す、という悪循環になりがちです。堂々と見せようとする前に、まず喉の力を抜く。それだけで十分に落ち着いた印象は伝わります。
顎と軟口蓋の位置を変えるだけで、声の硬さは抜けます
手のひらで顎の下を軽く押さえ、顎が上がらないようにしながら発声してみてください。顎が上がる動きは喉を締める動きと連動しているため、これだけで声の締まりが緩みます。あわせて、喉ぼとけを下げようとするのではなく、口の奥の上側、軟口蓋を軽く持ち上げる意識を持つと、声の通り道が広がり、硬さの代わりに伸びやかさが出てきます。「喉を開けろ」と言われて喉ぼとけを無理に下げてしまうと、声帯がたわんでかえって硬さが増すことがあるので、下げる方向ではなく上げる方向で覚えておくほうが安全です。
部屋に入る前の数秒で、力みはすでに決まっています
会議室のドアを開ける直前、名刺入れを手に取った瞬間、すでに肩と顎に力が入っている方が多いです。声が硬くなるかどうかは、話し始めてからではなく、部屋に入る前の数秒でほぼ決まっています。ドアノブに手をかける前に、一度だけ肩を上下させて力を抜き、口を軽く閉じたまま息を吐き切っておく。この数秒の準備だけで、最初の一言の硬さがだいぶ変わってきます。話す内容や順番をいくら頭の中で確認しても、この体の準備を飛ばしてしまうと、結局は声のこわばりとして表に出てしまいます。
「はじめまして、〇〇部の〇〇と申します」で練習します
自己紹介の一文を練習に使います。
「はじめまして、〇〇部の〇〇と申します」
まず普段どおりに録音します。次に、話す前に手で顎を軽く押さえて顎の位置を確かめ、「はじめまして」の出だしで軟口蓋を軽く持ち上げる意識を持って、もう一度録音します。声量を変えていないのに、二回目のほうが硬さが抜けて、落ち着いた印象になっていることに気づくはずです。
続けて、後輩への一言も同じ形で試します。「これ、少し直しておいてもらえますか」を、腹圧で支えながら語尾まで息を残して言ってみてください。強く言おうとしなくても、内容はきちんと伝わります。
録音でチェックするのは、優しさの表現ではありません
自分の声を録音で聞くと、優しく聞こえているかどうかを気にしてしまう方がいます。ですが確かめたいのは、表情や態度の優しさではありません。顎が上がって喉が締まっていないか、軟口蓋が上がって声の通り道が開いているか、この二点だけを聞き分けてください。優しさの判定を始めると、そこで練習が止まってしまいます。
こわばりは、初対面の場面だけで終わりません
初対面のあいさつで硬さが出る人は、実は後輩への指摘や、他部署への急な電話でも同じ硬さを繰り返していることが多いです。場面が違っても、喉を締める癖そのものは共通しているからです。ひとつの場面で顎と軟口蓋の使い方を覚えておくと、他のどの場面でも同じ直し方が効いてきます。逆に言えば、場面ごとに別の対処法を探す必要はありません。名刺交換の前でも、電話の受話器を取る前でも、後輩に声をかける直前でも、確認することは顎と肩の力み、それだけです。
硬い声は、性格ではなく体の使い方で変えられます
声が硬い、こわばると言われるのは、性格が固いからでも、緊張しやすい気質だからでもありません。喉を締める発声の癖と、良く見せようとして声を作り込む力みが重なっているだけです。顎の力を抜き、軟口蓋を軽く持ち上げる。腹圧で支えながら語尾まで息を残す。この二つを、次に名刺交換をする前に、あるいは後輩に一言伝える前に、一度だけ思い出してみてください。性格を直そうとするより、この体の使い方を覚えるほうがずっと早く、そして確実に、声のこわばりはやわらいでいきます。
無料動画講座では、声を作り込まずに、喉の締めすぎを抜いて自然に落ち着いた声を作る方法をお伝えしています。
あわせて読みたい記事
よくある質問
- Q. 声が硬いと言われるのは、性格が固いからですか
- 性格の問題ではないと私は見ています。喉を締めた発声の癖と、良い印象を作ろうとして無理に声を作ることが重なっているだけなので、体の使い方から変えられます。
- Q. 初対面のあいさつだけ、いつも声が上ずってしまいます
- 初対面では良く見せようという意識が働きやすく、そのぶん喉に力が入りやすくなります。声を作り込むより、顎の力を抜いて第一声を短く置くほうが自然に伝わります。
声が変わると、人生が変わる。
通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。
登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
ビジネスボイトレで変えるべきものは、話し方の型だけではありません。会議・プレゼン・商談で選ばれる声を、息・喉・体の使い方から整える考え方を解説します。
上司との面談で声が硬くなる原因。緊張しても伝わる話し方
上司との面談で声が硬い、早口になる、語尾が弱くなる原因を、緊張ではなく息と間から整えます。
声が小さい・通らない人へ。大きい声を出さずに改善する方法
声が小さい、通らない、聞き返される悩みを、性格や気合いではなく息のスピード・喉の力み・第一声から整理します。会議やプレゼンで使える具体的な練習も紹介します。