上司や先輩に相談や進捗を伝えに行く直前、息が浅いまま言葉を発してしまうことがあります。声が小さく震え、続く言葉が尻すぼみになる。深く吸えば直ると思われがちですが、吸う量を増やそうとするほど体が硬くなり、かえって浅さが強まることもあります。デスクを立つ前のわずかな時間に、すでに呼吸は乱れ始めています。
スマホで確かめる、話しかける前の一呼吸
まず、声をかけるときに実際に使う一文で試してみます。
「お忙しいところすみません。少し進捗を共有させてください。」
一回目は大きく息を吸ってから読みます。二回目は、吸う代わりに短く息を吐いてから読みます。三回目は、「共有させてください」の語尾だけを、最後の一音まで置く意識で読みます。
聞き比べると、大きく吸った一回目のほうが出だしは強くても後半で失速し、短く吐いた二回目のほうが最後まで安定して届くのが分かるはずです。三回目で語尾を意識すると、内容の伝わり方まで変わって聞こえます。声量を足したわけではないのに印象が変わるのは、息の使い方そのものが変わったからです。
浅い呼吸ほど、吸う量を増やそうとする
呼吸が浅くて声が弱いと感じるとき、多くの人はもっとたくさん息を吸おうとします。ですが吸う量を増やす動きそのものが胸や肩を持ち上げ、体を硬くして息の通り道を狭めてしまいます。吸えば吸うほど余裕が生まれるように思えますが、実際には逆の結果を招きやすいのです。
私が確認するのは、吸えているかどうかではなく、話す直前に短く吐けているかどうかです。短く吐き切ってから声を出すと、声量は無理に張らなくても自然に立ち上がります。大きく吸ってから一気に押し出す声は、出だしこそ強くても長くは持ちません。相談を切り出す最初のひと言ほど、この違いがはっきり出ます。
喉より先に、顎と横隔膜を見る
声が弱いと感じると、多くの人はまず喉をどうにかしようとしますが、喉に力を込めるほど声はかえって不安定になります。見るべき順番を間違えると、練習を重ねても改善が積み上がりません。
顎と首がすでに硬くなっている人には、手のひらで顎の下を軽く押さえたまま声を出す練習が効きます。顎が上へ逃げるのを押さえで止めながら、同時にお腹には圧を残しておく。吐くときだけでなく、吸うときもこの圧を抜かないようにしてください。これだけで、喉だけに乗っていた力がすっと抜けていきます。慣れないうちは違和感がありますが、数回続けると声の出だしが軽くなるのが自分でも分かります。
声をかける前、体はすでに縮こまっている
相談を切り出す直前は、資料や相手の反応に神経を使いすぎて、上半身がすでに縮こまっていることがあります。胸が閉じると、息の通り道自体が狭くなります。画面や手元の資料に集中するほど、この縮こまりは強くなりがちです。
足の裏を床に置き直し、肩の力を抜いてから声を出すだけでも、出だしの硬さは変わります。体の準備が整うと、言葉の頭がきちんと入り、語尾まで残りやすくなります。立ったまま声をかける場面でも、この順番は変わりません。
声をかける三十秒前にできること
本番前に深呼吸を繰り返す必要はありません。むしろ胸が張って落ち着かなくなることがあります。声をかける直前は、これだけで十分です。
口を閉じたまま一度しっかり息を吐き切り、肩を持ち上げないよう短く息を取り込みます。「お忙しいところすみません。少し進捗を共有させてください。」を、声に出さず口の動きだけでなぞってから、一度だけ実際に声にしてみてください。見るのは、たくさん吸えたかどうかではなく、出だしが欠けずに出ているか、語尾まで息が保たれているかの二点です。この二点さえ確認できれば、あとは普段どおりに話し始めて構いません。
崩れかけたら、続けず区切る
話し始めてから浅さに気づいても、その場ですべてを立て直す必要はありません。まずは話している一文をその場で短く区切り、区切った範囲は語尾まで言い切ります。それでも浅さが抜けなければ、次の一文に移る前にひと呼吸だけ間を挟んでください。
この間は会話を止める沈黙ではなく、息を整えて相手に言葉を渡すための時間です。焦って畳みかけるほど、息はかえって浅くなっていきます。区切りを一つ作れただけでも、そのあとの言葉は安定しやすくなります。
吸う力より、置き方を変える
呼吸が浅いのは肺活量が足りないせいだと思われがちですが、私の実感ではそこが本質ではありません。足りていないのは呼吸に使う筋肉の使い方です。話し出す前にどれだけ吐いておくか、どこに間を置くか。この並び順さえ押さえれば、無理に吸い込まなくても声は安定します。
次に声をかける場面が来たら、まず一度だけ録音してみてください。吸う量を増やす前に、吐き方から見直す価値があります。呼吸そのものを鍛え直さなくても、置き方を変えるだけで声の印象は変わっていきます。
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よくある質問
- Q. 呼吸 浅い 声で最初に確認することは何ですか
- 声量だけでなく、息、言葉の頭、間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
- Q. 録音練習は必要ですか
- 必要です。自分の体感ではなく、相手にどう届いているかを確認できます。
- Q. 本番前にできることはありますか
- 実際に使う一文を短く録音し、出だしと語尾だけを確認してください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →腹圧呼吸とは。腹式呼吸で声が通らない人に必要な体の使い方
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