契約更新の提案で信頼される声。継続理由を弱くしない話し方

契約更新の提案で声が弱い、継続理由が事務連絡に聞こえる人へ。成果、課題、次の提案を声で区切ります。

奥津ユキ

契約更新の商談では、資料の中身より先に、実績の報告から次期の提案へ移る瞬間の声で印象が決まります。ここが崩れると、用意してきた提案がただの事務連絡に聞こえてしまいます。原因の説明はあとにして、まずスマホのボイスメモで確かめてください。

報告から提案へ移る一文を、二通りで録ってみてください

本番で口にする一文を先に決めます。

「これまでの運用結果を踏まえて、次期は問い合わせ後の対応速度を重点的に改善したいと考えています。」

これを二通りで録音します。一回目は、直前まで実績の数字を読み上げていたつもりになって、その流れのまま切れ目なく読みます。二回目は、読み始める前に口から短く息を吐き、一拍置いてから読み始めます。

聞き比べると、二回目だけ、ここから提案が始まったと分かる声になっているはずです。言葉は一字も変えていません。変わったのは、先に吐いた息と一拍だけです。更新の提案が事務連絡に聞こえるかどうかは話術ではなく、この切り替わりの一呼吸で決まっている。それが自分の録音で分かれば、練習すべき場所は最初から絞れます。

一文は、実際の商談で使う固有名詞や数字に置き換えて構いません。その場合も、聞き比べる場所は、報告から提案へ移る継ぎ目だけです。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

こちらの熱意が伝わるかどうかは、声の張りではなく、報告から提案へ移る一呼吸の使い方で決まります。

事務連絡に聞こえる時、崩れているのは三箇所です

場面を思い浮かべてください。会議室の向かいには、いつもの担当者と、今日は決裁の場だからと同席した部長が座っています。資料は先方の手元にもあります。読み上げるだけなら資料を送れば済む状況で、それでも同じ部屋で声に出して伝えるのは、これは続ける価値のある提案だと、声で示すためです。

更新の商談では、これまでの実施内容や成果を並べてから、次期の話へつなげます。この構成自体は変えなくて構いません。崩れやすいのは三箇所です。

出だし。実績を読み終えた勢いのまま提案に入ると、最初の音が小さく潰れて、聞き手は話の入口をつかみ損ねます。次に、重要語の前。次期に何を変えるかを示す言葉を急いで通り過ぎると、いちばん残したい意味が流れます。そして語尾。締めくくりの言葉が消えると、内容は正しくても、更新への意志が弱いまま相手に残ります。

並べた実績の量は、この三箇所の代わりにはなりません。同じ実績報告でも、三つのそろい方ひとつで受け取られ方が変わります。

お願いの気持ちが強いほど、出だしは硬くなります

更新をお願いする気持ちを声に乗せて強める。この場面で誰もが最初にやる直し方ですが、気持ちだけを強めると喉に力が集まり、出だしだけが硬くなります。

契約更新では堂々と声を張った方が熱意が伝わると思われがちですが、実際はそうとも限りません。念を押すように強く言うより、いちばん伝えたい一言の手前で少しだけ声を落として間を置く方が、相手の耳がこちらへ向くことがあります。押す声より、聞く姿勢を引き出す声の方が、更新の場では効くのです。

気持ちが先に立って声が上ずりそうな時は、お腹に力を入れたまま話してみてください。上ずりや震えは気持ちの問題だけではなく喉の締まりが関係していることが多く、お腹側の圧を抜かずに保っておくと、その締まりがゆるみます。

継続率という数字が頭にあるほど、この商談は落とせないという力みも声に出ます。けれど先方の担当者にとって、更新の場は社内へ持ち帰って説明する材料を集める場でもあります。聞き取りやすい声で材料を渡してくれる相手の方が、続けるための稟議は書きやすいのです。

商談の流れに沿って、四つの手を入れます

一つ目は、実績を読み終えた直後の息です。ここで大きく吸い込んで構え直すと、聞き手にはここから本題ですという身構えが伝わってしまいます。吸うのではなく短く吐き、その流れで提案に入ると、報告と提案が地続きに聞こえます。

二つ目は言葉の頭です。「これまでの運用結果を踏まえて」の最初の音を、強く叩かず、相手が聞き取り始められる位置にそっと置きます。小さく縮めることとは違います。

三つ目は重要語です。「対応速度を重点的に」のような、次期の中身を示す言葉の手前に短い一拍を作ります。長い沈黙は要りません。聞き手が受け取るための余白です。

四つ目は語尾です。「改善したいと考えています」を最後の一音まで届けます。強める必要はなく、そのぶんの息を残しておくだけです。

録音で聞き分けるのは、三つの継ぎ目です

聞く場所確かめること
提案の出だし実績報告の勢いに潰されていないか
次期の中身を示す言葉の前受け取るための一拍があるか
締めの語尾最後の一音まで息が残っているか

自分の録音の声が硬く感じられても、その声を嫌う必要はありません。骨を通して自分に聞こえている声と、空気を伝って相手に届いている声は、響き方が違って当然です。録音で探すのは嫌な声ではなく、報告から提案へ移る場所で息がどう動いているかです。継ぎ目さえ聞き取れれば、その録音は役目を果たしています。

実績を並べている間に、息を使い切らないでください

更新の場で声が安定して聞こえる人は、成果を大きな声で読み上げているわけではありません。次期の提案の語尾まで届くだけの息を、後半のために残しているだけです。弱く聞こえる人は、数字や実施内容を並べている間に息を使い果たしています。

大きく吸えば読み切れるわけでもありません。吸いすぎると体が固まり、項目を並べる間に喉で押しやすくなります。項目ごとに短く吐いてから読む。区切りごとに一拍置く。提案に入るぶんの息を取っておく。この配分の方が本番では安定します。実績が三項目あるなら、吐く場所も三回あるということです。

一文の長さも見直してください。実績を一文に詰め込むほど息は足りなくなります。先に結果を一つ置く。次に、そこから見えた課題を一つ置く。最後に、次期でお願いしたい方向を置く。この順に短く区切ると、息の配分も声の置き場所も自然に決まります。

崩れた時は、次の一文の一箇所だけ立て直します

本番で出だしが潰れても、最初からやり直す必要はありません。次の項目に入る時に、頭の置き方だけをやり直します。数字を流してしまったら、次の大事な言葉の手前で待ちます。語尾が消えたら、次の文の最後だけ息を残します。

一度、成果報告が事務連絡のように流れてしまっても、商談全体が台無しになるわけではありません。声は一文ごとに立て直せます。戻す場所を一つ決めてある人は、更新の話が長引いても途中で軌道修正できます。先方から想定外の質問が入って流れが切れた時も同じです。答えの一音目を置くことだけ考えれば、崩れは次に持ち越されません。

崩れ方のパターンで、練習する一箇所を決めます

出だしが潰れやすい人は、実績の最後の一項目から提案の頭までの数秒だけを録って練習します。全文をさらうより、継ぎ目を取り出す方が濃い練習になります。

急ぎやすい人は、次期の中身を示す言葉の手前だけを見ます。一拍が長すぎる心配は要りません。自分では大げさに感じる間も、聞き手にはちょうどよく届いていることが多いものです。

語尾が消えやすい人は、締めの一言を言い終えて口を閉じるまでをワンセットにしてください。言い終わりと同時に気を抜くと、最後のひと息が抜け落ちます。

商談前の三十秒は、切り替わりの確認だけに使います

直前に長く練習すると、かえって喉が疲れます。確かめるのは、報告から提案への切り替わりを含んだあの一文だけで足ります。

「これまでの運用結果を踏まえて、次期は問い合わせ後の対応速度を重点的に改善したいと考えています。」

短く吐いてから入れたか。次期の中身を示す言葉の手前で待てたか。最後まで息が残ったか。仕上げの判断基準は、自分がうまく話せた感覚ではなく、相手が聞き返さずに一度で受け取れそうかどうかです。聞き返されそうな箇所が一つ残っていたら、そこだけ直して商談に向かいます。

声を出せる場所がなければ、口の中だけで一文をなぞって、息を吐く位置と一拍の場所を確かめるだけでも、本番の入りは変わります。

実績そのものは、資料が語ってくれます。声が受け持つのは、そこから先の一呼吸です。次の更新面談は、提案へ移るその一拍から変わっていきます。

よくある質問

Q. 契約更新の提案で声が弱く聞こえる原因は何ですか
更新の話題で遠慮する、成果を流す、次の提案の語尾が弱くなるなどで、息・喉・体・語尾・間のどこかが崩れていることが多いです。
Q. 声量を上げれば解決しますか
声量だけでは安定しません。最初の音、重要語の前の間、語尾まで息を残すことを先に整えます。
Q. 本番前に何を練習すればいいですか
本番で使う一文を録音し、入り、間、語尾の三点だけを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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