採用面接で質問する声。圧をかけずに聞き出すトーンの作り方

採用面接で質問が強く聞こえる、または弱く聞こえる人へ。聞き出す声のトーンを息・間・語尾から整えます。

奥津ユキ

面接官として候補者に質問を重ねるとき、詰めているように響くのか、及び腰に響くのか。その分かれ目は、言葉づかいより手前にあります。次の面接の前に、一分だけ録音で確かめてください。

次の面接で使う質問を、二通り録音してみてください

ボイスメモを起動して、実際の面接で使っている質問を録ります。

「その時、どのように判断されましたか。」

一回目は、候補者の回答を聞き終えた直後を想像して、思い立ったまますぐに。二回目は、鼻から短く一度、速く息を吐き切ってから同じ質問を出します。聞き比べると、二回目は第一声がすっと軽く立ち上がり、身構えた響きが薄れているはずです。文面は同じでも、質問を出す前の息だけで、詰問の気配は変わります。

聞き比べる点は三つあります。一音目が急いで飛び出していないか。質問の途中で息が切れていないか。文末の最後の一音まで音が残っているか。よく聞かせようとする必要はなく、この三点だけで十分です。

詰めて聞こえるのも、及び腰に聞こえるのも、根は一つです

強く響きすぎる人は声を抑えようとし、頼りなく響く人は声を張ろうとします。正反対の悩みに見えて、どちらも声の強弱だけで印象を調整しようとして、間と語尾で相手を受け止める準備をしていない点は同じです。

及び腰の側にも形があります。圧をかけたくない気持ちが強い人は、質問の語尾がふわりと上がって、尋ねているのか独り言なのか分からない形になりがちです。候補者は何をどこまで答えればよいのか掴めず、かえって不安そうな表情になります。遠慮は声を弱くすることではなく、間を渡すことで示すほうが、相手には親切です。

質問が詰めて聞こえるのはトーンが高い、あるいは強いせいだと思われがちですが、レッスンで確認していくと、トーンの高さそのものより、質問を出す速さと間の置き方のほうがずっと印象を左右している、というのが私の実感です。直すのは声色ではなく、質問の前後にある時間の使い方です。

回答を聞いている間の息が、次の質問の第一声を決めます

候補者が話している間に頭の中で次の質問を組み立てていると、息はいつの間にか止まっています。止まった息のまま質問を出すと、一音目は喉から急いで持ち上がり、その硬さが文末まで続きます。

回答をいったん受け止め、軽くうなずくくらいの間をひとつ挟む。その間に、冒頭の録音で試した鼻からの短い息を済ませておく。これだけで、同じ質問でも候補者に届く硬さが変わります。早く聞かなければという焦りは、質問の中身ではなく、この数秒の使い方に表れます。

候補者の話が予想より長くなり、切り上げたい場面でも同じです。割って入る一言こそ、鼻からの息を先に済ませて、低く短く置いてください。強い声で遮ると、そのあとの質問がすべて圧の続きとして聞こえてしまいます。

語尾は切らず、答える余白は間で作ります

質問の語尾を強く言い切ると、その瞬間に会話が閉じます。かといって語尾を弱く濁すと、何を答えればよいのかがぼやけます。狙う形は、語尾の芯を残したまま置いて、言い終えたあとに半拍だけ黙ることです。

声を弱くする必要はありません。質問の輪郭は語尾まで保ち、候補者が考えるための余白は、声ではなく間で渡します。この半拍を惜しんで次の言葉を重ねるほど、同じ質問文でも尋問の並びに変わっていきます。

試しに、冒頭の質問文を、語尾を鋭く切る形と、芯を残して置く形の二通りで録ってみてください。文字にすればまったく同じ一文が、切った形では追及に、置いた形では対話の続きに聞こえるはずです。語尾は、質問の意図を運ぶ最後の部品です。

質問の声が硬くなるのは、息、喉、体の三か所です

息は、焦ったときほど止まります。話す直前にひと息だけ軽く吐く動きを作れば、それだけで硬さの半分は取れます。

喉は、鋭さを出そうとしたときに締まります。喉で押した声は瞬間の迫力こそあっても、午後の面接まで持ちません。力を抜いた小さな声で詰まりが出ないかを、面接の合間に一度だけ確かめておきます。

体は、姿勢を正そうと力んだときに固まります。候補者を前にして背すじを張るほど、首と顎がこわばり、息が流れていても声の通り道が塞がれます。履歴書を膝の上や手元の低い位置で追いながら話すのも、顎を引かせて声を詰まらせる姿勢です。書類は少し持ち上げるか机に置き、足の裏を床に預け、首の後ろの詰まりをほどいてから最初の質問を出してください。

一次面接と最終面接では、硬くなる理由が違います

候補者を次々に見る一次面接では、確認したい項目が多く、進行に追われてテンポがどんどん上がっていきます。速さに引きずられた質問は、内容が柔らかくても事務的な圧として届きます。一問ごとに、鼻からの短い息を挟む余裕だけは手放さないでください。質問の数を減らせない日ほど、間だけは削らないのが現実的な守り方です。

一方、役員や現場責任者が同席する最終面接では、面接官自身が場の空気に緊張します。候補者の前で、実は自分の声も硬くなっている。この自覚があるだけで対処は簡単になります。緊張で声が硬くなるのは気持ちの弱さではなく、体の使い方が固まっているだけなので、足の裏、首の後ろ、息の手順という同じ場所に戻れば、同じ声に戻れます。

台本どおりの定型質問ほど、声が平板になります

志望動機や転職理由のような定型の質問は、一日に何度も口にするうちに、読み上げの声になっていきます。本人は省エネのつもりでも、平板な質問は候補者には冷たく響き、返ってくる答えも定型に寄っていきます。

文面を変える必要はありません。定型文こそ、出す前の息だけを毎回新しくやり直してください。息が新しければ、同じ文面でも、初めて尋ねる形を保てます。質問の前に候補者の名前を一度呼ぶのも、平板さを崩す簡単な方法です。呼びかけの分だけ自然に間が生まれ、声の向きが目の前の相手に定まります。

深掘りと詰問は、間の長さで分かれます

判断の理由を掘り下げる質問と、相手を追い込む質問は、文面がほとんど同じでも、間で別物になります。深く聞きたい質問ほど、出したあとの間を長めに取り、考える時間をこちらの沈黙で示します。矢継ぎ早に重ねれば、深掘りのつもりがそのまま尋問になります。間を長く取ることに不安があるなら、うなずきを一つ足してください。黙って見つめるだけの間は圧になりますが、うなずきながらの間は、続きを待つ合図として伝わります。

候補者の回答が短く終わったときも同じです。空白を埋めようと早口で次を出すと、圧だけが積み上がります。短い回答のあとほど、いつもより気持ち長めに間を置いてから、落ち着いた声で次へつなげてください。そして、話し上手な候補者にも口数の少ない候補者にも、質問前のひと呼吸と言い切ったあとの半拍は同じ長さで置きます。間合いの基準が一定なら、相手によって態度を変えている印象にもなりませんし、面接官自身も声の調子を毎回作り直さずに済みます。

面接が続く日は、最初の一問で調子を戻します

メモを取りながら質問を出すと、視線が手元に落ち、こもった声になります。書く手をいったん止め、顔を上げ、息を通してから口を開く。この順番だけ守れば、メモは取り続けて構いません。

一日に何件も面接が入る日は、後半ほど前の面接の勢いのまま質問を投げがちです。次の候補者と向き合う前に椅子へ座り直し、肩の力を一度抜いて、最初の一問だけをいつもの手順で出す。ここで整えば、その面接全体のトーンは保てます。

夕方の最終枠に座る候補者は、面接官の一日の疲れを知りません。朝いちばんの候補者と同じ声で迎えるのが筋です。朝の録音と、終業前にもう一度録った同じ質問文を聞き比べると、どの時間帯から声が惰性に変わるのかが見えてきます。翌日は、その時間帯の前に座り直しの手順を一つ挟むだけで、最後の候補者への声が変わります。

一日の面接を終えたら、朝の録音をもう一度だけ聞き返してください。

「その時、どのように判断されましたか。」

鼻からの短い息、語尾の芯、言い切ったあとの半拍。この三つがそろった質問は、鋭さを失わないまま、候補者から言葉を引き出す声になります。候補者にとって、その面接はこちらの一日の何件目かではなく、一度きりの本番です。次の面接は、候補者の回答を聞きながら吐く、鼻からのひと息から変わります。

よくある質問

Q. 採用面接 質問 声の原因は何ですか
声質だけでなく、声を出す前に息が止まること、喉で押すこと、体が固まることが関わります。
Q. すぐできる練習はありますか
短い一文を決め、普段通り、息を流してから、語尾まで残す形で録音して比べてください。
Q. 喉に違和感がある時も練習してよいですか
痛みや強い違和感がある時は無理に声を出す練習を増やさず、休息や専門家への相談も考えてください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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