採用面接で質問する声。圧をかけずに聞き出すトーンの作り方

採用面接で質問が強く聞こえる、または弱く聞こえる人へ。聞き出す声のトーンを息・間・語尾から整えます。

奥津ユキ

面接官として候補者に質問を重ねるとき、詰めているように響くのか、及び腰に響くのか。その分かれ目は、言葉づかいより手前にあります。

質問中の視線を応募書類に置いてみる

面接で、「前職でいちばん時間を使った業務を、一つ教えてください」と言ってみてください。一度目は、問いを言う間、相手の両目の間を見ます。二度目は、同じ問いを同じ言葉の長さで言いながら、机上の応募書類にある職歴欄を見てください。変えるのは、質問を口にしている間の視線の置き場所だけです。椅子の位置、上体の角度、声量、速さ、高さ、質問文、問いの後に待つ時間は一度目と二度目でそろえます。

私がこの場面でまず確認したいのは、相手が答え始める前に応募書類へ目を落とす回数と、答えの途中でこちらの顔へ視線を戻す回数です。視線が書類にあると、問いが相手自身の表情ではなく、紙に書かれた経歴へ向かうということが起こります。一度目と二度目で、相手が具体的な業務名を示すか、職歴欄を見直すかを観察します。相手が職歴欄を見て答えた場合も、こちらから資料を近づけたり、紙を示したりしません。質問文を言い終えたあとは、机上の物を動かさずに待ちます。目線だけが変わったことで、相手の目と手が職歴欄へ向かうかを、言いよどみの代わりに視線と書類の扱いで確かめます。差が出なければ、視線ではなく、質問に含まれる「いちばん」という限定の強さが別の原因です。

詰めて聞こえるのも、及び腰に聞こえるのも、根は一つです

強く響きすぎる人は声を抑えようとし、頼りなく響く人は声を張ろうとします。正反対の悩みに見えて、どちらも声の強弱だけで印象を調整しようとして、間と語尾で相手を受け止める準備をしていない点は同じです。

及び腰の側にも形があります。圧をかけたくない気持ちが強い人は、質問の語尾がふわりと上がって、尋ねているのか独り言なのか分からない形になりがちです。候補者は何をどこまで答えればよいのか掴めず、かえって不安そうな表情になります。遠慮は声を弱くすることではなく、間を渡すことで示すほうが、相手には親切です。

質問が詰めて聞こえるのはトーンが高い、あるいは強いせいだと思われがちですが、声を細かく見ていくと、トーンの高さそのものより、質問を出す速さと間の置き方のほうがずっと印象を左右している、というのが私の見立てです。直すのは声色ではなく、質問の前後にある時間の使い方です。

回答を聞いている間の息が、次の質問の第一声を決めます

候補者が話している間に頭の中で次の質問を組み立てていると、息はいつの間にか止まっています。止まった息のまま質問を出すと、一音目は喉から急いで持ち上がり、その硬さが文末まで続きます。

回答をいったん受け止め、軽くうなずくくらいの間をひとつ挟む。その間に、冒頭の録音で試した鼻からの短い息を済ませておく。これだけで、同じ質問でも候補者に届く硬さが変わります。早く聞かなければという焦りは、質問の中身ではなく、この数秒の使い方に表れます。

候補者の話が予想より長くなり、切り上げたい場面でも同じです。割って入る一言こそ、鼻からの息を先に済ませて、低く短く置いてください。強い声で遮ると、そのあとの質問がすべて圧の続きとして聞こえてしまいます。

語尾は切らず、答える余白は間で作ります

質問の語尾を強く言い切ると、その瞬間に会話が閉じます。かといって語尾を弱く濁すと、何を答えればよいのかがぼやけます。狙う形は、語尾の芯を残したまま置いて、言い終えたあとに半拍だけ黙ることです。

声を弱くする必要はありません。質問の輪郭は語尾まで保ち、候補者が考えるための余白は、声ではなく間で渡します。この半拍を惜しんで次の言葉を重ねるほど、同じ質問文でも尋問の並びに変わっていきます。

試しに、冒頭の質問文を、語尾を鋭く切る形と、芯を残して置く形の二通りで録ってみてください。文字にすればまったく同じ一文が、切った形では追及に、置いた形では対話の続きに聞こえるはずです。語尾は、質問の意図を運ぶ最後の部品です。

質問の声が硬くなるのは、息、喉、体の三か所です

息は、焦ったときほど止まります。話す直前にひと息だけ軽く吐く動きを作れば、それだけで硬さの半分は取れます。

喉は、鋭さを出そうとしたときに締まります。喉で押した声は瞬間の迫力こそあっても、午後の面接まで持ちません。力を抜いた小さな声で詰まりが出ないかを、面接の合間に一度だけ確かめておきます。

体は、姿勢を正そうと力んだときに固まります。候補者を前にして背すじを張るほど、首と顎がこわばり、息が流れていても声の通り道が塞がれます。履歴書を膝の上や手元の低い位置で追いながら話すのも、顎を引かせて声を詰まらせる姿勢です。書類は少し持ち上げるか机に置き、足の裏を床に預け、首の後ろの詰まりをほどいてから最初の質問を出してください。

一次面接と最終面接では、硬くなる理由が違います

候補者を次々に見る一次面接では、確認したい項目が多く、進行に追われてテンポがどんどん上がっていきます。速さに引きずられた質問は、内容が柔らかくても事務的な圧として届きます。一問ごとに、鼻からの短い息を挟む余裕だけは手放さないでください。質問の数を減らせない日ほど、間だけは削らないのが現実的な守り方です。

一方、役員や現場責任者が同席する最終面接では、面接官自身が場の空気に緊張します。候補者の前で、実は自分の声も硬くなっている。この自覚があるだけで対処は簡単になります。緊張で声が硬くなるのは気持ちの弱さではなく、体の使い方が固まっているだけなので、足の裏、首の後ろ、息の手順という同じ場所に戻れば、同じ声に戻れます。

台本どおりの定型質問ほど、声が平板になります

志望動機や転職理由のような定型の質問は、一日に何度も口にするうちに、読み上げの声になっていきます。本人は省エネのつもりでも、平板な質問は候補者には冷たく響き、返ってくる答えも定型に寄っていきます。

文面を変える必要はありません。定型文こそ、出す前の息だけを毎回新しくやり直してください。息が新しければ、同じ文面でも、初めて尋ねる形を保てます。質問の前に候補者の名前を一度呼ぶのも、平板さを崩す簡単な方法です。呼びかけの分だけ自然に間が生まれ、声の向きが目の前の相手に定まります。

深掘りと詰問は、間の長さで分かれます

判断の理由を掘り下げる質問と、相手を追い込む質問は、文面がほとんど同じでも、間で別物になります。深く聞きたい質問ほど、出したあとの間を長めに取り、考える時間をこちらの沈黙で示します。矢継ぎ早に重ねれば、深掘りのつもりがそのまま尋問になります。間を長く取ることに不安があるなら、うなずきを一つ足してください。黙って見つめるだけの間は圧になりますが、うなずきながらの間は、続きを待つ合図として伝わります。

候補者の回答が短く終わったときも同じです。空白を埋めようと早口で次を出すと、圧だけが積み上がります。短い回答のあとほど、いつもより気持ち長めに間を置いてから、落ち着いた声で次へつなげてください。そして、話し上手な候補者にも口数の少ない候補者にも、質問前のひと呼吸と言い切ったあとの半拍は同じ長さで置きます。間合いの基準が一定なら、相手によって態度を変えている印象にもなりませんし、面接官自身も声の調子を毎回作り直さずに済みます。

面接が続く日は、最初の一問で調子を戻します

メモを取りながら質問を出すと、視線が手元に落ち、こもった声になります。書く手をいったん止め、顔を上げ、息を通してから口を開く。この順番だけ守れば、メモは取り続けて構いません。

一日に何件も面接が入る日は、後半ほど前の面接の勢いのまま質問を投げがちです。次の候補者と向き合う前に椅子へ座り直し、肩の力を一度抜いて、最初の一問だけをいつもの手順で出す。ここで整えば、その面接全体のトーンは保てます。

夕方の最終枠に座る候補者は、面接官の一日の疲れを知りません。朝いちばんの候補者と同じ声で迎えるのが筋です。朝の録音と、終業前にもう一度録った同じ質問文を聞き比べると、どの時間帯から声が惰性に変わるのかが見えてきます。翌日は、その時間帯の前に座り直しの手順を一つ挟むだけで、最後の候補者への声が変わります。

一日の面接を終えたら、朝の録音をもう一度だけ聞き返してください。

「その時、どのように判断されましたか。」

鼻からの短い息、語尾の芯、言い切ったあとの半拍。この三つがそろった質問は、鋭さを失わないまま、候補者から言葉を引き出す声になります。候補者にとって、その面接はこちらの一日の何件目かではなく、一度きりの本番です。次の面接は、候補者の回答を聞きながら吐く、鼻からのひと息から変わります。

よくある質問

Q. 採用面接で経歴を深掘りする質問は、どんな出だしが圧迫感を抑えますか?
問いの冒頭を強く落とすと、確認のつもりでも追及に聞こえることがあります。私は「差し支えなければ」「そのときは」を少し柔らかく置き、聞きたい核心の語を急がずに続けます。
Q. 応募者の答えが短いとき、追加質問の声はどう整えればよいですか?
短い返答の直後に大きな声で問い直すと、答えを責める印象になりかねません。私は一度うなずく余白を取り、次の質問は前の答えを受ける高さから始めるのが自然だと考えます。
Q. 面接で聞き取りにくい答えを確認するとき、失礼にならない言い方はありますか?
聞き返す際は、語尾を上げ過ぎるより、聞き取れた部分を穏やかに復唱して確認します。私は「○○という理解でよろしいですか」と、内容を確かめる声にすると対話を止めにくいと考えます。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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