ゲストを招いて話すポッドキャストでは、一人で喋り続ける収録とは違う疲れ方をします。進行しながら相槌を打ち、割り込まずに反応し、広告を読み、最後は自分の言葉で締める。役割が切り替わるたびに、声も知らないうちに作り直されています。進行役の声の消耗がどこで起きているのか、まずスマホの録音で確かめるところから始めましょう。
まず、相槌だけを30秒録音してみてください
スマホのボイスメモを回し、ゲストの話を聞いているつもりで、「はい」「なるほど」「そうなんですね」を自分の収録中の調子のまま30秒繰り返してみてください。聞き返すと、ほとんどの方が同じことに気づきます。最初の数回は柔らかいのに、回数を重ねるほど相槌が喉から押した硬い音になり、同じ「はい」でも角が立っていくのです。1時間の収録なら、この小さな声を何十回と打つことになります。本編の語りより先に、ここで喉が削られていきます。
今度は、口の前に細く息を流し続けながら、その流れの上に相槌を乗せるつもりで、同じ30秒を録ってみてください。二つを聞き比べると、後半の相槌の質感がまるで違うはずです。進行役の喉が本編の長さ以上に消耗する理由と、その直し方が、この30秒に全部詰まっています。
相槌は、本編の話しより喉を使っています
ゲストが話している間、進行役は黙っているようで、実際には相槌を絶え間なく打ち続けています。一つひとつは小さな声でも、喉から押し出すように出していると、回数が多いぶん本編よりも喉の消耗が大きくなります。
先ほどの録音で確かめたとおり、相槌は声を張るものではなく、息を軽く吐きながら乗せるものです。うなずきながら喉で強く出すのではなく、話を聞きながら細く息を流し続け、その流れに乗せる。これだけで、何十回繰り返しても喉に負担が残りにくくなります。ゲストの話に笑って反応する場面も同じで、盛り上げようと毎回大きく作った笑い声を絞り出すより、息が自然に漏れる範囲で反応するほうが、何時間の収録でも声が保ちます。
もうひとつ、相槌には役割が二種類あります。話の続きを促す相槌と、話を受け止める相槌です。促すときは軽く短く、受け止めるときは少しだけ長く、息を深めに乗せる。全部を同じ調子で打つより、この二種類を使い分けるほうが、ゲストは話しやすくなり、リスナーには進行役がちゃんと聞いている番組として届きます。声を大きくしなくても、息の乗せ方の違いだけで聞き分けられる差になります。
ゲストのペースに引っ張られない、トーンの土台を先に決めます
早口なゲストと話すと自分も早口になり、声が小さいゲストにつられて自分のトーンまで沈んでいく。これは合わせようとする自然な反応で、悪いことではありません。ただ、進行役の声がゲストのペースに完全に飲まれてしまうと、聞き手はどちらが話しているのか区別しにくくなります。
収録前に、自分のトーンの土台を一度だけ声に出して決めておいてください。
「それでは、今日のゲストをご紹介します」
この一文を、普段の自分の高さで一度読んでおくだけで、収録中にゲストのペースへ引っ張られても、戻ってくる基準を体が覚えています。番組の冒頭挨拶は毎回ほとんど同じ言葉だからこそ、基準として使いやすいのです。自分が他の番組にゲストとして呼ばれた時も同じで、相手の進行に合わせつつ、自分のトーンの土台を一度声に出してから収録に入ると、飲まれずに話せます。そして、ゲストの名前を実際に紹介する第一声だけは、顎を止めて口の形をはっきり作ってから発音してください。収録の後半で疲れから発音が多少崩れても、紹介の一声さえ立っていれば、聞き手には最後まで伝わります。
進行の声、感想の声、広告読みの声を行き来します
次の質問に移るときの進行の声と、ゲストの話に感じ入って感想を述べる声は、本来トーンが違って自然です。常に同じ司会口調で通そうとすると、感想の場面まで説明口調になり、聞き手には温度が伝わりにくくなります。質問を投げるときは語尾を少し立てて短く、感想を言うときは語尾まで息を残してゆっくり。この切り替えだけで、声質を変えなくても役割の違いが伝わります。
番組の途中に挟むスポンサー告知や広告読みも、行き来のひとつです。ここだけ声が作り込んだように浮く原因の多くは、会話の勢いのまま原稿に目を移し、そのままの速さで読み始めてしまうことにあります。広告に入る直前に一拍だけ間を置き、その間に軽く息を吸い直して、会話よりわずかにゆっくりめのスピードで最初の一文を出してください。原稿を読んでいる感じが薄れ、会話からの流れのまま自然に聞こえます。毎回同じ告知文を読んでいる番組ほど、口が覚えている分だけ早口になりやすいので、読み慣れた原稿こそ最初の一文のスピードを意識して落とす価値があります。
割り込みたい瞬間ほど、半拍の間をつくります
ゲストがまだ話し終えていないタイミングで質問を差し込みたくなる場面は多くあります。ここで喉に力を入れて割り込もうとすると、声がぶつかり合ってどちらも聞き取りにくい録音になります。差し込みたい時ほど、一度短く息を吸って半拍待つ。それだけで話の切れ目が生まれ、そこに自然に声を乗せられます。
ゲストが複数人のパネル回では、このすれ違いがさらに増えます。声が重なった瞬間にとっさに声量を上げて勝とうとするのは、喉への負担が大きいうえに、聞き手には言葉が聞き取れない録音になるだけです。重なったと感じたら、大きくするのではなく一度引いて、呼吸を整え直してから入り直してください。オンラインで繋ぐリモート収録も同じ考え方で対応できます。通信の遅延で相手の反応が一瞬遅れて届く分、相手が話し終えたと感じてから一拍多めに待つくらいでちょうどよく、急いで被せるより声に力みが残りません。
複数本を続けて録る日は、話す順番で消耗を管理します
配信頻度が高い番組では、一日に何本も続けて収録することがあります。1本目は元気に話せても、3本目、4本目になるにつれて声が重く沈んでいくのが普通です。こういう日は、テンションが高めの話題を最初の方に、落ち着いた話題を後半に置くよう収録順を工夫すると、声の消耗に合わせた無理のない進行になります。前の回の盛り上がりを引きずったまま次の回に入ると、冒頭だけ空元気な声になって編集でも浮くので、各回の頭では土台の一文に一度戻ってから録り始めてください。全部を同じ元気さで通そうとするより、順番そのものを声の状態に合わせるほうが、最後の1本まで聞きやすさを保てます。
回の形式によって、支える場所も変わります。一人で話すソロ回は、自分だけで間を作り続けるため息が浅くなりやすく、意識的に長めの間を取り、腹のあたりに圧をかけたまま話し続けることが支えになります。ゲスト回は、相手の話を受けて瞬時に反応する分、喉で押した反射的な声になりやすいので、反応する瞬間ほど一度息を吸ってから声を出すことを心がけてください。
収録の最後の一言まで、進行役の声です
会話が途切れて数秒の沈黙ができると、焦って早口で言葉を詰め込みたくなりますが、編集で切られる前提の沈黙まで声で埋める必要はありません。数秒の沈黙は、聞き手が内容を飲み込むための時間でもあります。埋めることを焦るより、次の一言の前に短く息を整えるほうが、落ち着いた進行に聞こえます。
そして収録が終わった直後、ゲストへのお礼や次回予告を話す声は、本編の最後よりさらに掠れやすくなります。収録全体で積み重なった喉の疲れが、緊張の解けたタイミングで表に出てくるためです。締めくくりの一言こそ、語尾まで息を残してください。ここで雑に流すと、番組全体の印象が最後で崩れます。
配信前の編集作業は、進行役にとって答え合わせの時間でもあります。ゲストの話を整えるついでに、自分の相槌だけを何か所か拾って聞いてみてください。収録の何分あたりから相槌が硬くなり始めるかが分かると、次回はその手前で息を流し直す、という具体的な対策が立てられます。
次の収録の前に、もう一度だけ土台の一文を録音してみてください。
「それでは、今日のゲストをご紹介します」
出だしが喉から押されずに出ていれば、その日の進行役の準備は整っています。ゲストの話を引き出す番組の聞きやすさは、この最初の一声と、息に乗った相槌から始まります。
よくある質問
- Q. ゲストと話すと自分の声のトーンが引っ張られるのはなぜですか
- 相手のペースに合わせようとする体の反応です。悪いことではありませんが、進行役としての自分のトーンの土台を先に決めておくと引っ張られにくくなります。
- Q. 広告読みの部分だけ声が浮くのを直したいです
- 会話の勢いのまま原稿に入ろうとすると浮きます。読む前に一拍だけ間を作ってから声のスピードを整えると、会話との差が目立たなくなります。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
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