知らない番号からの電話を受けた相手は、最初の数秒で「営業の電話だ」と身構えます。この数秒で切られるかどうかは、話す内容よりも先に、声の出だしと息の流れで決まっていることが多いと私は感じています。
ガチャ切りされる理由を、声の暗さだけに求めないでください
電話でアポを取る仕事をしている人の多くは、切られる理由を声の暗さのせいにしがちです。ですが、暗さだけが原因とは言い切れません。それもあるかもしれませんが、内容がしっかり伝わるような話し方ができているかどうかのほうが大きいと私は感じています。
たとえば、こんな名乗りの一文を思い浮かべてください。
「お世話になっております、株式会社の者です。本日は5分だけお時間をいただけますか」
この一文を早口で押し出すと、内容は正しくても慌てて売り込んでいる印象になります。声を出す前に短く息を整え、社名の手前でひと呼吸置き、語尾の「ますか」まで息を残せると、同じ言葉でも受け取られ方は変わります。
明るく作った声ほど、電話では鬱陶しく響くことがあります
電話で切られないためにワントーン高い声で明るく話すべきだと考える人は多いですが、これは無条件に正しいわけではないと私は感じています。無理して高く作った声や、必要以上に明るく振る舞った話し方は、聞いている相手にとって鬱陶しく感じられ、かえって早く切られてしまうことがあります。
声の高さそのものが商談の主導権を左右するわけでもありません。声が相手より高いから話を聞いてもらえない、という関係はあまりないと私は見ています。大切なのは、無理に別人のような声を作ることではなく、気持ち悪くならない程度にわずかだけトーンを上げること、そして最後まで聞き取れる話し方を保つことです。
名乗りの一文を録音して、三か所だけ聞きます
長い台本を通して練習する必要はありません。まず名乗りの一文だけを録音してみてください。
「お世話になっております、株式会社の者です。本日は5分だけお時間をいただけますか」
聞き返すときは、感じがいいかどうかを判定しないでください。見る場所は三つです。一つ目は最初の「お」の音が急いで小さく入っていないか。二つ目は社名の手前に一拍の間があるか。三つ目は「いただけますか」の語尾まで声が残っているか。この三点だけで十分です。
アナウンサーのような話し方を目指す必要はありません
信頼を得るためにアナウンサーのようなきれいな標準語で話すべきだと考える人がいますが、私はそうは思いません。整いすぎた話し方より、その人らしさが伝わる話し方のほうが、電話越しでも信頼を得やすいことが多いです。
同じように、誰に対しても同じ元気で明るい声で対応する必要もありません。相手の年齢や業種、電話に出た時の声のトーンに合わせて、多少声色を変えるくらいの余裕を持つほうが、機械的な印象を避けられます。声を一種類だけ作り込むより、相手ごとに少し調整できる幅を持っておくことのほうが、電話でのアポ取りでは役に立ちます。
架電を始める前の30秒で、喉と息を整えます
架電リストを開く前に、時間をかけて発声練習をする余裕はまずありません。私が現場で伝えているのは、以下の程度に絞った準備です。
はじめに、唇を閉じたまま息を静かに吐き切ります。それから、肩を持ち上げないよう気をつけながら短く息を吸い直します。そのうえで、実際には声を出さず「お世話になっております」を口の形だけでなぞってみます。仕上げに、ごく小さな声で一度だけ声に出してみてください。
ここで確認したいのは、声の大きさではありません。出だしの音が急いでいないか、社名の手前で息が続いているか。この二点だけを見てください。
一日何十件も架電する日は、喉の締めすぎを疑ってください
一日に何十件も電話をかけ続けると、途中で声が枯れてくる人がいます。この枯れ方の多くは、長時間話し続けたことそのものよりも、喉を締めて声を出し続けていることが原因だと私は感じています。
私がすすめているのは、横隔膜のあたりを前に軽くつまむような感覚を、話している間ずっと保つことです。この感覚を保てると、同じ件数をこなしても喉への負担がかなり減ります。声を大きくして件数をこなそうとするより、喉を締めない話し方を保つほうが、一日を通して声を維持できます。
断られた直後の一言で、声を落とし切らないでください
一件断られたあと、次の電話で声のトーンが沈んだままになる人がいます。ここで無理にテンションを上げ直す必要はありません。むしろ、断られた直後こそ、次の名乗りの一文を短く区切り、語尾まで言い切ることだけを意識してください。
焦って早口で次の番号にかけ直すと、声はさらにこもり、次の相手にも伝わりにくくなります。断られた回数を引きずるより、次の一件で名乗りの語尾まで届けることに意識を戻すほうが、声の状態を保ちやすくなります。
名乗りの一文を、崩れた形と整えた形で比べます
崩れた例はこちらです。
「お世話になっております、株式会社の者です。本日は5分だけお時間をいただけますか……」
このように語尾に向かって声が小さくなると、内容は正しくても押し売りのような印象が残ります。
整えた例は、声を張り上げることとは別物です。
「お世話になっております、株式会社の者です。本日は5分だけお時間をいただけますか」
社名の手前で短く息を整える。語尾の「ますか」まで息を残す。この二つだけを意識すれば十分です。
相手の受付を通過する声と、担当者に届ける声は分けて考えます
法人向けにアポを取る場合、最初に電話に出るのは受付や取次の担当者であることが多く、その先で実際に会いたい担当者につながるかどうかが決まります。私は、この二段階で声の使い方をわずかに変えることをすすめています。
受付を通過する場面では、要件を短く区切り、聞き取りやすさを優先します。担当者につながった場面では、そこから急いで畳みかけるのではなく、社名と要件の間に一拍置き、相手が内容を受け止める時間を作ります。同じテンションのまま話し続けるより、この二段階を意識するほうが、途中で切られにくくなります。
クロージングの手前では、あえて声を小さくする場面もあります
日程調整の段階になると、押し切ろうとして声を大きく張ってしまう人がいます。ですが、堂々と大きな声で言い切ることだけが正解ではないと私は感じています。あえて少し声を落とし、聞く姿勢を相手に作ってもらうやり方が効くこともあります。
「では来週の水曜か木曜、お時間をいただくことは可能でしょうか」という一言を、声を張らず、語尾まではっきり届く声で言えるかどうか。声量で押すより、この語尾の届き方のほうが、日程を決める場面では効果を感じやすいです。
架電前日までに、名乗りの一文で耳を慣らしておきます
毎日長時間練習する必要はありません。今日の架電で実際に使う名乗りの一文をひとつだけ選んでください。
一回目は普段どおりに録音します。二回目は社名の手前の間だけを意識します。三回目は語尾まで息を残すことだけに集中します。この三回を聞き比べると、声質そのものを大きく変えようとするより早く、電話越しでの印象が変わる場所が見つかります。
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架電リストの後半になるほど、声の力みを見直します
架電リストの後半にさしかかる頃には、断られ続けた疲れから、声に余計な力みが混ざり始める人がいます。この力みは元気のなさではなく、喉のあたりに残った緊張が積み重なった結果であることが多いです。
リストの後半では、次の一件にかける前に、口を軽く開けたまま二回ほど短く息を吐き出す時間を挟んでみてください。件数をこなすことよりも、名乗りの語尾まで息を残せているかどうかのほうが、最終的にアポの取れる件数に影響します。
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よくある質問
- Q. 電話でガチャ切りされるのは声が暗いからですか
- 暗さだけが原因ではありません。私の実感では、内容がきちんと伝わる話し方になっているかどうかのほうが大きく影響します。
- Q. 電話営業ではワントーン高い声で明るく話すべきですか
- 無理に高く明るく作った声は、鬱陶しいと受け取られて逆効果になることがあります。少しだけトーンを上げる程度で十分です。
- Q. 一日何十件も架電すると喉が枯れます。どうすればいいですか
- 喉を締めて声を出し続けていることが多いです。横隔膜のあたりを軽くつまむ感覚を保つと、長時間話しても枯れにくくなります。
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