間の取り方の練習。詰め込みグセを直して伝わる話し方に

展示会や商談で説明を詰め込みすぎる人へ。間は黙る長さでなく息の動きで決まります。ざわつく環境でも伝わる間の取り方を練習法とあわせて解説します。

奥津ユキ

展示会のブースで同じ説明を何十回も繰り返していると、来場者が途切れなく続くうちに、言葉と言葉の間がどんどん詰まっていくことがあります。間が消えていくのは、話し下手になったからではなく、区切る位置をあらかじめ持たないまま繰り返し話しているからです。

同じ説明を繰り返すほど、間から先に消えていきます

展示会や商談会のブースで一日中立ち続け、次から次へと来場者に同じ説明を返す仕事では、最初の数人には丁寧に区切って話せていても、人が途切れずに続くうちに、言葉が一続きに流れていくことがあります。ブースにはBGMが流れ、周囲には人混みのざわめきがあり、次の来場者がもう待っている。この状況では、間を取ることが「聞こえなくなるのでは」「間延びして見えるのでは」という不安につながり、結果として言葉を隙間なく詰め込んでしまいます。

間が詰まっていくのは、話す技術が落ちたからではありません。区切るべき場所をその都度その場で判断しようとするから、疲れてくると判断ごと省略されてしまうのです。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

間は、黙る時間の長さで足りるかどうかが決まるものではありません。止まる前後で息がどれだけ動いているかで、聞き手への伝わり方は変わります。

「本製品は、価格改定により、来月から新料金プランに変わります」で崩れを聞く

実際に使う説明文を一つ用意します。

「本製品は、価格改定により、来月から新料金プランに変わります」

これを一気に流すように言うと、聞き手は「価格改定」も「新料金プラン」もひとまとまりの情報として受け取れず、結局どこが変わるのかを聞き返してきます。反対に、「本製品は」の後にわずかな間を置き、「価格改定により」の後にもう一度間を置き、「来月から新料金プランに変わります」まで語尾を保って言い切ると、同じ情報量でも相手の頭に区切りとして残ります。

録音して聞く時は、うまく言えたかどうかを判定しないでください。見る場所は三つです。一つ目は「本製品は」の後の間で息が止まっていないか。二つ目は「価格改定により」の後の間で喉に力みが入っていないか。三つ目は最後の語尾まで息が保たれているか。

長く黙るほど効果的な間になる、という思い込みを外します

間を取ろうとする時、多くの人は「長く黙れば印象的になる」と考えます。ですが長さだけを意識すると、止まる直前に喉へ力が入りやすくなり、止まった後に出す声が硬くなって、聞き手にはただの気まずい沈黙として届いてしまいます。

私が先に見るのは間の長さではなく、間の前後で息が動いているかどうかです。止まる前に、息はまだ流れているか。止まっている間、体は固まっていないか。再開する時、喉から声を押し出していないか。この三点さえ整っていれば、間は0.5秒でも十分に伝わります。

ざわついた場所では、間を取ると聞こえなくなると錯覚します

BGMや人混みのざわめきの中で説明していると、少しでも黙ると聞き手の注意が逸れてしまうという錯覚が起こりやすくなります。この錯覚が、詰め込みグセを強めていきます。

実際には逆で、ざわついた環境ほど、区切りのない説明はさらに聞き取りにくくなります。周囲の音に負けまいと声量だけを上げても、言葉がひとまとまりに流れていれば、相手は情報の切れ目を掴めません。ざわついた場所ほど、短くてもはっきりした間を意図的に作る方が、声を張り上げるより効果があります。

腹圧を保ったまま止まる練習をします

間を取ろうとして声が沈んでしまう人の多くは、止まる瞬間にお腹の圧を抜いてしまっています。腹式呼吸のようにお腹を膨らませたりへこませたりするのではなく、吸う時も吐く時も、常にお腹の内側にわずかな圧をかけ続けたまま止まる感覚を持ってください。

練習は、口を閉じて息を吐き切り、肩を上げずに短く吸ってから、「本製品は」まで言ってそこで一度止まります。止まっている間もお腹の圧を抜かないまま二秒待ち、それから「価格改定により」を続けます。圧を保ったまま止まると、再開する時の声も途切れずに前へ出ます。

「間を空けると素人っぽく見える」という思い込みを外します

展示会のブースでは、隣のブースの説明員が立て板に水のように話し続けているのが耳に入ることがあります。その速さにつられて、自分も間を詰めた方が手慣れて見えると思い込んでしまう人がいます。

実際には逆です。間のない説明は、聞き手にとって情報が次々に流れてくるだけの状態になり、どこが重要な変更点なのかが残りません。隣のブースの速さは、その場の説明員の癖であって、聞き手にとっての伝わりやすさとは別の話です。自分の間を、他の説明員の速度に合わせて縮める必要はありません。

早口の来場者に合わせると、間から先に消えていきます

来場者の中には、質問を早口でたたみかけてくる人もいます。その勢いに引っ張られて自分の説明まで速くなると、真っ先に消えるのは間です。区切りが消えた説明は、相手の質問には答えているように聞こえても、肝心の変更点が伝わらないまま終わってしまうことがあります。

相手が早口であるほど、自分の間は意識して残す必要があります。「本製品は」の後の間、「価格改定により」の後の間。この二つだけは、相手の速度に関わらず毎回同じ長さで保つと決めておくと、勢いに流されて詰め込んでしまう場面が減っていきます。

説明を三つの間に分解し、毎回同じ場所で区切ります

その場の判断で間を作ろうとすると、疲れてくるほど判断が追いつかなくなり、詰め込みに戻ります。あらかじめ、一つの説明を三つの間に分解しておくと、疲れていても同じ場所で区切れるようになります。

「本製品は」で一つ目の間。「価格改定により」で二つ目の間。「来月から新料金プランに変わります」で語尾まで言い切る。この三分割を決めておけば、来場者が何十人続いても、その都度どこで止まるかを考える必要がなくなります。判断を減らすことが、間を保つための一番の近道です。

この三分割は、説明の内容が変わっても考え方は同じです。一文の中で「主語」「変わる理由」「結果」のようにひとまとまりの塊を三つ見つけ、その塊の切れ目に間を置く。塊の中では詰めて構いませんが、塊と塊の間だけは削らない。この線引きを持っておくと、どんな説明文でも同じ手順で間を作れるようになります。

声を張るのでなく、高さで区切りを作ります

間の前後で印象を変えたい時、多くの人は声の大きさを変えようとします。ですが大きさで区切ろうとすると、ただうるさく聞こえるだけになりがちです。区切りは声の高さで作る方が、ざわついた場所でも効果があります。

「本製品は」を少し高めに置き、「価格改定により」でわずかに落とし、「新料金プランに変わります」で語尾に向けて自然に下げていく。抑揚を大きさでなく高さで作ると、声を張り上げなくても聞き手の耳に区切りとして残ります。

一日の終わりに、詰め込みが戻っていないか録音で確かめます

展示会や商談会が続く日は、朝の説明と夕方の説明とで、間の取り方がまったく別物になっていることがよくあります。一日の終わりに、朝と同じ説明文を録音し、朝の録音と聞き比べてください。

「本製品は」の後に間があるか。「価格改定により」の後に間があるか。語尾まで息が残っているか。夕方になるほどこの三点が削れているなら、それは話す技術が落ちたのではなく、疲労とともに区切る判断が省略されているだけです。省略されている場所さえ分かれば、翌日はそこだけを意識すれば戻せます。

間は、性格でなく手順で作れます

間が取れないのは、性格が早口だからでも、度胸がないからでもありません。区切る場所をあらかじめ決めておくこと、止まる前後で息とお腹の圧を保つこと、この二つの手順があるかどうかの違いです。

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よくある質問

Q. 間の取り方が下手なのは早口だからですか
速さだけの問題ではありません。声を止めずに話し続けると、聞き手は情報の区切りを見失います。速さより先に、区切る位置を決めておくことが必要です。
Q. ざわついた場所では間を取ると聞こえなくなりませんか
騒がしい場所ほど間を怖がって詰め込みがちですが、間の前後で息が動いていれば、短い間でも聞き手には区切りとして伝わります。
Q. 間を取る練習は何から始めればいいですか
実際に使う説明を一文ずつに分け、区切りたい場所を先に決めてから録音し、間の前後で息が止まっていないかを確認してください。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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