会社の朝の挨拶で印象を作る声。起き抜けの声を起こす
出社してすれ違う人ごとに繰り返す「おはようございます」。起き抜けの喉のまま挨拶を重ねて印象が沈む人へ、声を起こしてから出社する整え方を解説します。
奥津ユキ
出社してからデスクに座るまでの数分間、私たちは何度も朝の挨拶を繰り返します。エレベーターで乗り合わせた他部署の人、廊下ですれ違う後輩、受付や警備員の方。この一言の声の出方だけで、その日一日の第一印象が決まってしまうことがあります。まず、自分の挨拶の声がいまどう出ているか、三十秒で確かめてみてください。
口角だけを変えて、挨拶を二回録音してみてください
スマホのボイスメモで、次の一言を二回録音します。
「おはようございます」
一度目は真顔のまま、ふだんの調子で言います。二度目は、口角をわずかに上げてから同じ調子で言います。再生して並べると、二度目のほうが声が明るく、少し前に出て聞こえるはずです。声の高さを作ろうとしていないのに、響く場所が変わるだけでこれだけ違う。朝の挨拶で沈む声は、ここから直せます。
なお、録音した自分の声が思ったより低く沈んで聞こえても、気にしないでください。自分の耳には骨を通して低く聞こえていて、外に届く声はそれより高いことがほとんどです。誰にでも起きる自然なことなので、録音は好き嫌いを判定する道具ではなく、最初の音が沈んでいないか、口角が上がっているかを確かめるためだけに使ってください。
朝の挨拶が「機嫌悪い?」に聞こえてしまう理由
出社直後、まだ喉が起きていない状態で最初の挨拶を言うと、声が低くこもって沈んで聞こえます。本人は普通に挨拶しているつもりでも、聞いた相手には元気がない、機嫌が悪いという印象として伝わってしまうことがあります。
これは気の持ちようの問題ではなく、体の準備が整う前に声を使い始めていることが大きな原因です。特に始業前は誰もが急いでいて、挨拶にかける時間は一秒あるかないかです。その一秒に沈んだ声を出してしまうと、取り返す間もないまま次の相手とすれ違ってしまいます。
喉を開けるより、口の奥の上側を持ち上げます
声の悩みの多くは、高い声を出そうとして声帯を締めてしまうことに帰着します。朝の挨拶でも同じことが起きていて、寝ている間に喉が閉じ気味になったまま最初の一言を発すると、声が固く小さく出てしまいます。
「喉を開けて話す」というアドバイスを真に受けて喉ぼとけを下げようとする人がいますが、これは逆効果です。効くのは喉を下げることではなく、口の奥の上側を軽く持ち上げる感覚のほうです。ここを意識するだけで、こもって沈んだ声が前に抜けやすくなります。喉仏を意識して下げようとすればするほど、逆に声帯がたわんで詰まった声になりやすいので、上を持ち上げる感覚に置き換えて覚えておいてください。
いつもの倍の声で挨拶する必要はありません
朝の挨拶で声が小さいと指摘された経験がある人ほど、次からは普段の倍の大きさで言おうと意気込みがちです。ですが、倍の声量を目指すと喉で押した声になり、かえって不自然な挨拶になってしまいます。
必要なのは声量を倍にすることではなく、不自然にならない程度の明るさとボリュームです。私の実感では、声の大小そのものより、最初の一音がきちんと立ち上がっているかどうかのほうが、聞いた相手の印象を左右します。声を張ろうと意気込むより、まず最初の一音を丁寧に立ち上げることを優先してください。挨拶の一言は短いので、出だしの一音が沈むと、挽回する場所が残っていないからです。
エレベーター、受付、すれ違いざま。場面で変えるのは一点だけです
朝、エレベーターの扉が開いて他部署の人と目が合った瞬間の一言。狭い箱の中では声がこもりやすく、普段より小さく聞こえてしまう傾向もあります。だからといって別人のように明るく作る必要はありません。気持ち悪くならない程度に、いつものトーンより少しだけ高さを上げるだけで十分です。明るさは声を張ることではなく、声の高さと響かせる場所の問題です。扉が開く前の数秒で軽く口角を上げておくと、扉が開いた瞬間の一声がすでに整った状態で出せます。
ビルに入ってすぐ、受付や警備員の方と交わす短い挨拶も、同じ作りで変わります。相手は毎朝何十人もの挨拶を受けている立場なので、声がこもっていると流れる挨拶の一つとして埋もれてしまいます。顎を大きく動かして口を開けるより、口角をわずかに上げたまま短く発するほうが、通る声としてしっかり届きます。歩きながら声をかけると足音や荷物の音に紛れて声がさらに沈みやすくなるので、できれば一瞬だけ歩調をゆるめてから発するくらいの余裕を持っておくと、こもりにくくなります。
廊下ですれ違いざまに声をかけるときは、体の向きにも注意が要ります。つい相手のほうへ首だけをひねって挨拶しがちですが、これでは息の通り道が狭くなり、声が細く出てしまいます。急いでいるときほど前かがみになりやすく、それがそのまま声のこもりにつながります。立ち止まって挨拶する一瞬だけでも、胸を軽く開いておくと、声の通り道が確保されます。
マスクをつけたまま挨拶する朝も、直す場所は同じです。布一枚越しになるぶん、こもった声はさらにこもって届きます。マスクの下では表情が見えないからと口元をさぼりがちですが、見えていなくても口角を上げれば響く場所は変わります。むしろ表情が隠れている朝ほど、声の明るさだけが相手への手がかりになります。
何人に挨拶を重ねても、喉が枯れない保ち方
出社してから始業までの間に十数人と挨拶を交わし、そのたびに声を張っていると、午前中だけで喉が疲れてしまう人がいます。長時間声を使って枯れる原因は、ほぼ喉の締めすぎです。
横隔膜のあたりを前に軽くつまむ感覚を、挨拶している間も次の一言を待つ間も保っておくと、同じ回数だけ挨拶を重ねても喉への負担が変わってきます。声量を上げるのではなく、この感覚を保つことが、朝の挨拶を何度繰り返しても枯れない声につながります。給湯室で別の部署の人と何度もすれ違う日や、朝から来客対応が重なる日ほど、この感覚の有無が昼過ぎの喉の疲れ方に表れます。
挨拶は、こちらから声をかけるだけでなく、かけられて返す場面も半分あります。返す側は準備の時間がゼロなので、沈んだ声が出やすい場面です。相手の声が聞こえた瞬間に口角だけ先に上げてから返すと、とっさの一言でも立ち上がりが変わります。
出社前1分でできる、声を起こすウォームアップ
道具は要りません。家を出る前か、会社に着いて席に座る前の1分でできます。
まず手で顎の下を軽く押さえ、顎が上がらないようにしたまま「んー」と鼻から短くハミングします。声を張らず、鼻腔のあたりに響きを感じられれば十分です。これを数回繰り返してから、実際に「おはようございます」と小さめの声で言ってみます。
このとき確かめるのは声の大きさではなく、最初の音が沈まずに立ち上がっているかどうかです。冒頭の録音で聞いた、口角を上げたときのあの立ち上がりが出ていれば十分です。ここまで整えてから最初の挨拶に臨むと、起き抜けの声のまま一日を始めるより印象が変わります。エレベーターの中や洗面所の前など、人に聞かれにくい場所を選んで試してみてください。
朝いちばんの一言は、慣れで変えられます
挨拶で声が小さくなるのは人前が苦手だからだと思い込んでいる人がいますが、それだけが理由ではありません。繰り返す動作にまだ慣れていないことも大きく関わっています。多くの人は普段、声の力を出し切らない状態で過ごしていて、その初期値を少し引き上げるだけで、朝の挨拶の印象は変わります。
声を起こしてから出社する。口角を軽く上げる。横隔膜のつまむ感覚を保つ。この三点を意識するだけで、何人に挨拶を重ねても沈まない声を作れます。一度で完璧に整える必要はありません。まずは出社してから最初に交わす一言だけ、意識して声を起こしてみてください。二人目、三人目と挨拶を重ねるうちに、体のほうが自然と同じ準備を思い出すようになり、朝の忙しさの中でも、声が先に整った状態で出るようになっていきます。
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よくある質問
- Q. 朝の挨拶は普段より大きい声で言うべきですか
- いつもの倍のボリュームを意識する必要はありません。不自然にならない程度の明るさとボリュームがあれば、それだけで十分に好印象は作れます。
- Q. 挨拶のたびに声が小さくなるのは性格のせいですか
- 人前が苦手という面もありますが、それだけでなく繰り返す動作に慣れていないことも関わっています。慣れの問題として練習で変えられる部分です。
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