初出社・着任の挨拶の声。第一印象を声で作る

初出社や異動先での自己紹介で声が小さくなる、緊張で早口になる人へ。フロア全体に向けた挨拶の第一声を整える方法を解説します。

奥津ユキ

初出社の朝、フロアの入口に立ち、見覚えのない顔ばかりの前で名乗ります。異動先での着任も同じで、これから一緒に働く人たちに向けて、最初の一言だけで印象が決まります。私がこの相談を受けるとき最初に聞くのは、挨拶文の言葉選びではなく、フロア全体の視線を感じた瞬間、喉がどう反応しているかです。

声が小さくなるのは、性格の問題だけではありません

初出社の挨拶で声が小さくなる人を「人前が苦手だから」の一言で片づけてしまいがちですが、それだけとは限りません。その場に慣れていないこと自体が、声を小さくする大きな要因です。普段の会話では問題なく声が出ている人でも、初めて立つフロアで、初めて見る顔に囲まれると、声の出し方がわからなくなることがあります。

「本日よりこちらに配属になりました、〇〇と申します。よろしくお願いいたします」

この一文を、緊張したまま喉だけで押し出そうとすると、名前の部分だけ小さくなったり、語尾の「お願いいたします」が消えたりします。声を出す前に、まず息をひとつ通してから言葉に乗せるようにしてください。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

初出社の挨拶で声が小さくなるのは、あなたの性格の弱さではありません。慣れていない場に立っているという、それだけのことです。

普段の何倍も大きく出す必要はありません

初出社の挨拶を意識するあまり、普段の何倍もの大きさで声を張ろうとする人がいます。ただ、無理に大きくしようとすると、声が上ずったり、がなり気味の音になったりして、かえって不自然な印象を与えることがあります。第一声は、普段の何倍にもする必要はなく、不自然にならない程度に明るいボリュームで挨拶する方が、自然に届きます。

声を大きくすること自体は間違いではありません。腹の圧をしっかりかけること、そして息のスピードを少し速めに出すことを意識すると、力まなくても声量は自然に上がります。喉で押して大きくしようとするより、息の流れで持ち上げる方が、聞き取りやすい声になります。

フロア全体に向けた挨拶は、視線をどこに置くかで喉が変わります

初出社の挨拶は、一対一の会話と違い、同時に何十人もの視線を受けながら話す場面です。誰か一人を見て話すか、全体をぼんやり見渡して話すか、視線の置き方に迷っている間に、声が定まらないまま話し始めてしまう人は多いです。

視線が泳いだまま声を出すと、言葉の勢いだけで押し切ろうとする形になり、硬さが増します。あらかじめ、部屋の中で少し遠めの一点に視線を置くと決めておくと、顔を上げてからの声の出だしが揃いやすくなります。全員の顔を順番に見ようとする必要はなく、まず一点に向けて第一声を置き、その後の言葉の中で視線を少しずつ広げていく方が、声全体の落ち着きは保ちやすくなります。

名前を名乗る瞬間だけ、声が引っ込む人がいます

自己紹介文の中で、部署名や業務内容は問題なく話せるのに、自分の名前を名乗る瞬間だけ声が小さくなる人がいます。名前は他のどの部分よりも自分自身を示す言葉であるため、無意識に身構えてしまうことが関係しています。

対策として、名前の部分だけを切り離して繰り返し声に出す練習が有効です。「〇〇と申します」の一文だけを、部署名や挨拶文から切り離して単独で何度も読み上げ、名前の一音目が小さくならないかを確認してください。名前の前で一拍分だけ息を多めに吸っておくと、名乗る瞬間の声が引っ込みにくくなります。

「本日よりこちらに配属になりました」を、フロアを想定して練習します

練習の手順は単純です。①何も想定せず一度声に出す、②何十人もの視線がある場面を思い浮かべながら少し離れた一点を見て声に出す、③②の直前に一度だけ小さく息を吐いてから声に出す。この三段階を録音しながら順番に試してください。

聞き比べる際は、うまく話せているかは気にせず、名前の一音目がこもっていないか、文の途中で早口になっていないか、「よろしくお願いいたします」の語尾まで音が残っているかだけを確認します。三段階のうちどこで声の引っ込みが消えたかを見つければ、あとは本番でその状態を再現するだけです。

朝礼での挨拶と、デスクを回っての挨拶では喉の使い方が違います

初出社の挨拶は、朝礼で全員の前に立ってまとめて行う形式と、デスクを一つずつ回って個別に挨拶する形式があります。朝礼形式では、フロア全体に声を届ける必要があり、届かせようと喉で押しがちですが、腹の圧を保ったまま息を流す方が、遠くまで通る声になります。

デスクを回る形式では、一人ひとりに近い距離で何度も同じ言葉を繰り返すことになり、回数を重ねるうちに声が単調になったり、疲れて小さくなったりしやすくなります。同じ挨拶文でも、相手ごとに間の取り方を少し変えるだけで、単調に流れ作業化するのを防げます。何十人にも挨拶を繰り返す日は、長時間話し続けて枯れることもあるため、横隔膜を前につまむような感覚を保っておくと、最後まで声が保ちやすくなります。

出社前の数分でできる準備

初出社の朝は、電車の中や会社の前で緊張が高まりやすい時間です。この数分間に、口を閉じたまま静かに息を吐き、肩を上げずに短く吸う呼吸を数回繰り返しておくと、フロアに入った瞬間の第一声が出しやすくなります。

声には出さず「本日よりこちらに配属になりました、〇〇と申します」と口の形だけをなぞっておくのも有効です。喉が力みやすい人は、あくびをするときのように口の奥をゆったり開き、そのまま小さく「あー」と声を置いてみてください。喉の奥が開いた感覚を保ったままフロアに入ると、最初の一声が出しやすくなります。

声を出す前に、口の開き方を確認します

挨拶で聞き取りにくいと言われる人がまず見直すべきなのは、声そのものの質ではなく、口の開き具合と声のトーンです。緊張していると口の動きが小さくなり、もごもごした響きのまま挨拶が終わってしまいます。声を張り上げる前に、口をどれくらい開けて話せているかを確かめてみてください。名乗りの言葉と結びの言葉とで、あえて少しだけ高さに変化をつけると、単調に流れず耳に残りやすくなります。

オンラインで参加するリモートメンバーへの挨拶は、こもりの原因が変わります

支店やリモート勤務のメンバーが多いチームでは、初出社の挨拶を画面越しの朝会で行う場合もあります。相手に届いていないのではと不安になり、画面に覆いかぶさるようにマイクへ近づいてしまう人がいますが、距離を詰めすぎるとかえって音がひずみ、聞き取りにくくなることがあります。マイクとは普段どおりの距離を保ちながら、言葉の一つひとつを少し丁寧に区切って話す方が、回線越しでも安定して届きます。

画面越しの挨拶では、リアクションが薄く見えることを気にして表情やうなずきを普段の何倍にも大きくしようとする人もいますが、そこまで変える必要はありません。過剰な動きはかえって騒がしく映り、話の内容が相手の頭に入ってきにくくなります。カメラのレンズを見続けることにこだわらず、画面に映る相手の顔を見ながら話しても、伝わり方が大きく損なわれることはありません。

挨拶のあと、雑談で話しかけられる場面こそ素が出ます

挨拶文を読み終えたあと、周囲から「どこの部署から来られたんですか」と話しかけられる場面があります。用意していた挨拶文とは違い、その場で即座に答える必要があるため、多くの人は答えを考えながら息を止めてしまい、最初の一音が小さくこもった声になります。

このとき、答えの内容を完璧にまとめてから話し始めようとせず、まず短く息を吐いてから話し始める癖をつけてください。挨拶文を読んでいる間の声とは違い、雑談での受け答えは素の声に近くなるため、名乗りの場面より気を抜きやすい分、語尾が消えやすくなります。挨拶を終えたあとも、しばらくは語尾まで息を残す意識を保っておくと、印象の落差が出にくくなります。

まとめ

初出社・着任の挨拶で声が小さくなるのは、性格の弱さではなく、慣れていない場に立っているというだけのことが多くあります。声を何倍にも張り上げず腹の圧と息のスピードで持ち上げる、視線を一点に定めてから話し始める、名前の部分だけ切り離して練習する。この三つを整えるだけで、フロア全体に向けた第一声は届きやすくなります。喉に強い違和感がある場合は、無理をせず医師や専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 初出社の挨拶は普段より大きい声で言うべきですか
普段の何倍もの大きさにする必要はありません。不自然にならない程度に明るいボリュームで挨拶する方が、無理に張り上げるより自然に届きます。
Q. 初出社の挨拶で声が小さくなるのは人前が苦手だからでしょうか
人前が苦手なことも関係しますが、それだけとは限りません。その場に慣れていないことも大きな要因なので、性格のせいだけにせず、声の出し方から整える方が現実的です。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事