コールセンターで枯れない声。一日中話しても持つ話し方

コールセンターで一日100件を超える対応を続けると声が枯れる人へ。話し続ける量ではなく、抑揚と息の使い方から枯れない声の作り方を解説します。

奥津ユキ

コールセンターで一日に百件を超える対応をこなすと、午後には声がかすれ、夕方には一言ごとに喉に引っかかりを感じるようになります。話す量そのものが多いから仕方ないと思われがちですが、私の実感では、時間の長さより、電話越しに聞こえるよう抑揚を大きくつけすぎていることのほうが、喉への負担としては大きく効いています。

話し続ける量より、抑揚のつけすぎが喉を削ります

コールセンターの応対では、表情が見えないぶん、声だけで感じよく聞こえるよう意識的に抑揚を強めます。この抑揚が悪いわけではありませんが、毎回オーバーに上げ下げしていると、声帯は休む間もなく張力を変え続けることになります。話す時間そのものより、この上下動の激しさが、一日の終わりの枯れにつながっています。

出し方さえ整っていれば、百件を超える対応でもそこまで疲弊しません。件数を減らすことより先に、抑揚の付け方そのものを見直す余地があります。

コール間の数十秒でできる、喉を戻す準備

一件終えてから次の着信までの数十秒は、忙しい現場では消えてしまいがちですが、この間の使い方が一日の終わりの声を左右します。ここで多くの人がやってしまうのが、ため息のようにささやき声で独り言をつぶやくことです。ささやき声は喉に負担がないと思われがちですが、実は普通に発声するのと同じくらい喉を使っています。完全に発声を止めることのほうが、短い時間でもよほど喉は休まります。

数十秒の間、口を軽く閉じ、鼻からゆっくり息を吐くだけにしてください。声を出さない静けさそのものが、次の対応に向けた喉の回復時間になります。

「本日は誠にありがとうございました」を録音し、崩れる位置を探します

一日の中で何度も繰り返すこの一文を、休憩の合間に一度録音してみてください。

「本日は誠にありがとうございました」

聞くときに確かめるのは、声の感じの良さではなく三点です。「本日は」の出だしが、抑揚をつけようとして喉から持ち上がっていないか。「誠に」の手前で、必要以上に大きく音の高さを跳ね上げていないか。「ございました」の語尾で、声を張ったまま押し切っていないか。この三点のどこかで喉に力が入っていると、一件ごとの負担が少しずつ積み重なっていきます。

マイクに乗せる声は、張らずに前へ通します

ヘッドセットのマイクは口元に近いぶん、大きな声で話す必要はありません。それでも、聞き取りやすさを気にして声を張ってしまう人は少なくありません。マイクが拾ってくれる分まで声量で補おうとすると、喉に余計な力がかかります。

必要なのは、声を大きくすることではなく、息を前に流し続けることです。息のスピードが保てていれば、小さめの声量でもマイクにははっきり乗ります。一件ごとに声を張り直すのではなく、応対の間ずっと息の流れを保つ意識のほうが、喉への負担は少なくなります。

モニタリング評価と、喉を守る話し方は両立できます

コールセンターでは、抑揚や明るさがモニタリング評価の対象になることが多く、評価を気にするほど声を作り込みがちです。ですが、無理に高いトーンで明るさを演出しようとすると、聞き手にはかえって鬱陶しく響くことがあり、評価にも喉にも良い結果になりません。

評価される明るさと、喉に負担をかけない話し方は対立するものではありません。トーンをほんの少しだけ上げ、語尾まで息を残す。この程度の調整で十分に明るく聞こえます。無理に高く張り上げる必要はなく、そのほうが一日を通して安定した声を保てます。

横隔膜のあたりをつまむ感覚で、長時間の対応に備えます

長時間話しても枯れにくい人に共通するのは、喉ではなく横隔膜のあたりで声を支えていることです。前にスライムのように細くつまみ出すような感覚を、応対の間ずっと保ってみてください。声を吐く時だけでなく、次の言葉を吸うときにもこの感覚を抜かないことが、長時間の対応を支える核になります。

手が空いた瞬間があれば、実際に横隔膜のあたりを軽くつまんでみて、その張りの感覚を体に覚えさせてから応対に戻ると、喉だけで支える時間が減っていきます。

シフト終わりの声を、翌日に持ち越さないためにできること

シフトが終わる頃には、声が重く感じられることがあります。ここで無理に大きな声を出して感覚を確かめようとすると、翌日にまで疲れが残ります。終業前にできるのは、口を閉じたまま静かに息を吐き、喉に力が入ったままになっていないかを確かめることだけで十分です。

声のかすれが数日続く、痛みを伴う、休んでも戻らないといった状態が続く場合は、無理に発声で乗り切ろうとせず、医師や専門家に相談することも考えてください。日々のコンディションの波を見ながら、練習と休息のどちらを優先するかを判断していく必要があります。

クレーム対応が続く時間帯ほど、喉に力が入りやすくなります

クレーム対応が立て込む時間帯は、謝罪の言葉を丁寧に伝えようとするあまり、声のトーンを必要以上に低く抑え、喉の奥で押し込むように話す人が増えます。落ち着いた低いトーンで謝ることが常に正解とは限りません。聞き取ってもらうには、場面によっては少し高めのトーンのほうが伝わりやすいこともあります。

一件のクレーム対応のたびに喉で低さを作ろうとすると、その負担は一日の終わりに大きな疲れとして残ります。低さを作ることより、語尾まで息を残して丁寧さを伝えることのほうが、喉への負担は少なく、相手にも真摯さは十分に届きます。

着信が途切れない時間帯こそ、水分補給のタイミングを決めておきます

着信が途切れず続く時間帯は、水を飲むタイミングすら後回しになりがちです。喉が乾いた状態のまま抑揚をつけて話し続けると、声帯への摩擦が増え、疲れに気づかないまま喉を締める癖が強まっていきます。

一気に大量に飲む必要はありません。着信の合間、数十秒の静かな時間を使って少量を口に含む習慣を、あらかじめ決めておいてください。忙しさに応じて水分補給を判断していると、結局取れないまま一日が終わってしまいます。

今日の休憩時間から試します

長い練習時間は要りません。今日の休憩中に、応対でよく使う一文をひとつ選び、録音してみてください。一回目は普段通りに、二回目はコール間で声を出さずに静かに過ごしてから、三回目は横隔膜のあたりをつまむ感覚を意識してから読みます。

三つを聞き比べると、声の張り方を変えなくても、二回目、三回目のほうが安定して聞こえるはずです。この差が、一日の対応件数を重ねたあとの喉の状態を左右します。

新人研修のロールプレイほど、声を消耗しやすい場面です

新人研修中のロールプレイは、本番の応対よりも声を大きく消耗しやすい場面です。評価されている意識から、必要以上に抑揚を強め、声を張って感じの良さを演出しようとする人が多いからです。研修だからと気を抜けない緊張も重なり、喉に力が入ったまま何度も同じ台本を繰り返すことになります。

研修中こそ、声を大きく作る練習ではなく、力を抜いたまま同じ抑揚を保てるかを確認する場にしてください。本番の応対で毎回声を張り直す癖は、研修の段階でついてしまうことが多いです。

オペレーター同士で、声の負担を分け合う工夫もあります

繁忙な時間帯が特定のオペレーターに集中すると、その人だけ声の消耗が積み重なっていきます。可能であれば、着信の振り分けを均等にする、長い対応が続いた直後は短い休憩を優先するといった運用面の工夫も、声を守る手段になります。

声の使い方を個人の技術だけで解決しようとせず、シフトや振り分けの仕組みごと見直すことも、長く声を使う仕事を続けるうえでは有効です。

まとめ

コールセンターで声が枯れるのは、話す量が多いからだけではありません。抑揚をつけすぎていること、コール間にささやき声で喉を使い続けていること、喉だけで支えていること。この三つが重なって、一日の終わりの枯れを作っています。

今日使う一文で、抑揚のつけすぎ、コール間の休め方、支える場所の三点を確かめてみてください。声量を落とすのではなく、この使い方を整えることで、一日を通して枯れにくい声に近づいていきます。

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よくある質問

Q. コールセンターで声が枯れるのは話し続けているからですか
話す時間の長さだけが原因ではありません。電話越しに抑揚を大きくつけすぎていることも大きく関わっています。
Q. コールとコールの間はささやき声で喉を休めたほうがいいですか
ささやき声も実は喉を使います。短い間なら、声を出さずに黙る方が喉は休まります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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