話し方と声のレッスンで変わること。仕事で信頼される声の作り方
話し方や声のレッスンを検討している人へ。発声、第一声、語尾、滑舌、録音チェックで仕事の印象がどう変わるかを解説します。
奥津ユキ
話し方や声のレッスンを受けると別人の声になれると思われがちですが、実際に変わるのはもっと地味な部分です。仕事で毎日使う一文が、相手に届く形に整うこと。その中身は、申し込む前にスマホで体験できます。
最初のレッスンでやることを、先に体験してみてください
ボイスメモを開いて、次の一文を二回録音します。
「では、今週の進捗からご報告します」
一回目は、いつも会議で話すとおりに読みます。二回目は、録音を始める前に口を閉じたまま息を細く吐き切り、肩が上がらないように短く吸ってから、同じ一文を読みます。
二本を聞き比べてください。二回目のほうが、出だしの一音がはっきり入り、語尾の「します」が残っているはずです。変えたのは声ではなく、声を出す前の息だけです。レッスンの初回で私がやってもらうのは、まさにこの聞き比べです。声色の作り込みではなく、息と体の順番を思い出す作業から、レッスンは始まります。
この小さな差に気づけたなら、レッスンで何が変わるのかの半分は、もう分かったことになります。残りの半分は、この差を本番の会議でも毎回再現できるようにする道のりです。
レッスンで最初に見るのは、癖ではなく声を出す前の四点です
レッスンを検討する人の多くは、話し方の癖そのものを直したいと考えています。ただ、癖だけを直そうとすると喉で押した声になりやすく、強く出したつもりでも、聞き手には硬く余裕のない声として届きます。
私が最初に確認するのは四点です。声を出す前に息が止まっていないか。最初の一音を喉で押していないか。重要語の前で息を吸い直していないか。語尾の前で息が終わっていないか。このどれかが崩れると、内容が正しくても声は弱く聞こえます。性格の問題にする前に、体で起きていることを分けて見る。これがレッスンの出発点です。
四点は、場面が変わっても同じです。対面の会議で小さくなる人も、オンラインだと暗く聞こえると言われる人も、電話になると語尾が流れる人も、崩れている場所はこの四点のどこかに収まります。レッスンが場面ごとの小手先の対策で終わらないのは、見る場所がこの四点に絞られているからです。
録音で聞くのは、入り・間・語尾の三か所だけです
長い文章を読む練習は要りません。さきほどの一文の録音で、三か所だけ聞きます。
最初の音。話し始めが小さいと、聞き手は最初の言葉を取りこぼします。重要語の前の間。残したい言葉の手前にほんの少しの間があるか。急ぐと、いちばん大事な言葉ほど流れていきます。そして語尾。「です」「ます」が消えると、内容は合っていても自信がなさそうに聞こえます。強く叩くのではなく、最後の一音まで息を残します。
崩れた読み方の典型は、一文を一息で流してしまうことです。息が続かないまま最後までたどり着くので語尾が落ち、内容まで軽く聞こえます。直すときに、全部を強く読む必要はありません。文の前に短く息を入れ、残したい言葉の手前でわずかに待ち、締めの一音までを息の上に置く。手を入れるのはこの三か所だけです。
録音した自分の声への違和感は、誰にでもあります。内側で聞こえる声と相手に届く声は別物だからです。録音は嫌な声を責める道具ではなく、直す場所を絞り込む道具として使ってください。好きな声かどうかを判定し始めると、そこで練習が止まります。
声を作り込む方向のレッスンは、本番で元に戻ります
避けたいのは、声そのものを表面的に加工する受け方です。無理に低いトーンを作る、張り上げて明るく見せる、といった調整は、その場では変わった気がしても、体の使い方が変わっていなければ本番で崩れます。とくに喉で作った低さと、遠慮して絞った声量は、語尾から先に消えていきます。
喉で作った声は、自分の耳には堂々と響くことがあります。だからこそ判断は録音に任せてください。作った声は録音で聞くと、硬さと語尾の消え方に正直に表れます。
レッスンの目的は、声質の変身ではなく順番の獲得だと考えてください。最初に何を言うか、どこで待つか、どの音まで息を残すか。順番さえ体に入れば、声は作り込まなくても安定します。受け始めると実感しますが、変わっていくのは声色より、話す前の準備のほうです。低い声にしたい、通る声にしたいという入口の希望はそのままでかまいません。ただ、変化を実感する順番は準備が先で、声質は後からついてきます。
腹式呼吸の質問より、腹圧と息のスピードです
「腹式呼吸ができていないから声が出ないのでは」という相談をよく受けます。私が見ているのは、お腹の膨らませ方ではなく、腹圧をかけ続けられているかと、息のスピードが保てているかの二点です。吸うときも圧を抜かない感覚のほうが、会議や電話の場面ではずっと扱いやすくなります。
滑舌の相談には、顎を動かさず固定したまま五十音を一通り言う練習を勧めています。顎を止めると口の中の動きだけで音を作ることになり、マイク越しやオンライン会議での聞き取りやすさが変わってきます。
喉より先に、足裏・胸の向き・顎を確かめます
声が弱いと感じると喉を直したくなりますが、喉だけ触っても安定しません。まず足裏です。床にしっかりついていないと、その上に乗る息も不安定になります。次に胸の向きです。資料や画面ばかり見ていると胸が縮こまり、声を前に送り出せません。最後に顎と首です。顎が前に出たり首の前側がこわばったりすると、出だしの一音を喉で押しやすくなります。
会議の直前なら、三十秒で足ります。口を閉じて息を吐き切り、肩を上げずに短く吸い、声を出さずに一文分だけ口を動かし、小さな声で一度だけ言ってみる。確かめるのは、最初の音が欠けていないかと、語尾まで息が保てているかの二つです。長い直前練習は、かえって焦りにつながります。
持ち帰りを一点に絞ると、レッスンは仕事につながります
レッスンの時間内に息も喉も語尾も間も指摘されると、家に帰ってから何を練習すればよいか分からなくなります。先生に、今日いちばん直したい一点はどこかを聞き、復習ではその一点だけを見てください。指摘が出だしの弱さなら、次の録音でも出だしだけです。一つずつ持ち帰る繰り返しが、仕事で使える声への近道になります。
持ち込む一文は、架空の例文より実物に近づけてください。実際に送るメールの読み上げや、会議で使う一言のほうが、癖がそのまま出て、直す場所が見つかります。整っていない言葉ほど、よい教材になります。
体験レッスンを選ぶ段階では、カリキュラムの豪華さより、その場で録音して聞き比べる時間があるかどうかを見てください。聞き比べのないレッスンは、変化の判断を先生の耳だけに預けることになります。自分の耳で差を確認できる進め方なら、次のレッスンまでの期間も、一人で練習を前に進められます。
続けるかどうかの判断は、声の上手さより仕事の変化で見ます。聞き返される回数が減ったか、電話の後の疲れが軽くなったか。声が劇的に変わらなくても、困る回数が減っていれば正しい方向です。録音を残しておき、声量ではなく第一声の硬さと語尾の消え方を数回前と比べてください。期限を強く決めすぎると喉に力が入るので、今日の一文が昨日よりわずかに整ったかだけを見ます。
本番で崩れても、三段階で立て直せます
本番の途中で声が崩れたら、全部を一度に直そうとしないでください。一文を短く区切る。語尾まで言い切る。それでも崩れるなら、次の文の前に一拍だけ間を置く。この間は黙り込む時間ではなく、聞き手に言葉を受け取ってもらう時間です。この立て直しの手順を持っているかどうかも、レッスンで身につく実用的な部分です。
最後にもう一度、「では、今週の進捗からご報告します」を録音してみてください。最初の体験録音と比べて、出だしか語尾のどちらかが変わっていれば、レッスンで伸ばせる部分がもう見えています。次の会議のその一言が、レッスンの最初の成果になります。
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よくある質問
- Q. 話し方 声 レッスンで最初に確認することは何ですか
- 声量だけでなく、息、言葉の頭、間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
- Q. 録音練習は必要ですか
- 必要です。自分の体感ではなく、相手にどう届いているかを確認できます。
- Q. 本番前にできることはありますか
- 実際に使う一文を短く録音し、出だしと語尾だけを確認してください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
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