営業で早口になる人へ。提案が軽く聞こえない声の整え方

営業で提案すると早口になる人へ。営業の早口は、説明量の多さ、相手の反応への不安、価格や条件を早く通過したい気持ちで起きます。 営業、商談、価格提示、クロージングで聞かれる声を、第一声・息・区切り・語尾・録音チェックから整える方法を解説します。

奥津ユキ

商談中に早口になる人の多くは、話の内容そのものよりも、資料を切り替える指の動きと息のタイミングが噛み合っていないことが原因です。声を作り直す前に、まずその噛み合わせを30秒だけ録音して確かめてみます。

30秒の録音で、早口の入り口を確かめます

スマートフォンのボイスメモを開き、いつも商談で使っているパソコンの前に座ってください。画面共有で資料を送るときと同じように、指をトラックパッドに置いた状態で「このプランなら、御社の課題はここで解決できます」と声に出します。台本も練習も要りません。指を動かす動作と声の出だしをそろえるだけです。

聞き直すときに見る場所は一つです。資料を送る指の動きと、声の出だしが重なっていないか。重なっていれば、それが早口の入り口です。指が先に動き、声があとから追いかけている状態が続くと、話す速さそのものは変えなくても、聞き手には急いでいるように届きます。

早口の原因は性格ではなく、指の動きと息のずれです

早口はせっかちな性格のせいだと思われがちですが、それだけとは言い切れません。オンライン商談を録音で聞き比べていると、性格よりもっと手前、資料を送る指の動きと息のタイミングがずれているだけで早口に聞こえている場面のほうが多くあります。

画面共有中は、次のスライドに話を進めたい気持ちが先に立ちます。相手の反応が画面越しでは読みにくいぶん、沈黙が怖くなり、指がスライドを送る前に言葉で埋めようとします。そうしているうちに、いちばん伝えたい一文の手前で息が浅くなり、言葉だけが先に走り出します。

私が商談の録音でよく確認するのは、息のスピードです。声が小さい人に大きく話すよう伝えると喉で押した声になるのと同じで、早口な人にゆっくり話すよう伝えると、今度は息が止まって不自然な間延びになります。直すべきは話す速さではなく、指が動くより先に息が流れているかどうかです。

初回30分の商談では、10枚前後のスライドを15分ほどで説明し切ろうとする人が多く、後半に進むほど残り時間が気になり、指のほうがスライドを先へ送ろうとします。聞き手は、スライドが切り替わった瞬間よりも、次の声の出だしのほうを先に聞いています。指が先走っている間は、その出だしがどうしても遅れて届きます。

先ほどの一文で、崩れる三箇所を聞きます

先ほど指を動かしながら声に出した一文を、もう一度聞き直します。うまく話せているかどうかは見ません。確認する場所は三つです。

一つ目は、最初の音です。指がスライドを送った直後に話し始めると、最初の言葉が小さく入り、聞き手はそこを取りこぼします。

二つ目は、重要語の前の間です。「ここで解決できます」の前に、ほんの少し間を置けているかを聞きます。次のスライドが気になっていると、この間が消え、いちばん伝えたい言葉ほど流れます。

三つ目は、語尾です。「解決できます」の「す」が消えると、内容が合っていても自信なく聞こえます。強く言い切る必要はなく、最後の一音まで息が残っていれば十分です。

そもそも早口そのものが悪いわけではありません。私がよく伝えるのは、上手い人ほど一音が短いということです。早口を我慢してゆっくり伸ばそうとするより、一音ずつ短く切ってその分だけブレスを入れるほうが、聞き手には落ち着いた説明として届きます。

三つの崩れは、商談の前半と後半で出方が変わります。前半は最初の音が小さくなりやすく、後半は残り時間を気にして重要語の前の間が消えやすくなります。今どちらの時間帯にいるかを意識しておくと、聞くべき場所が絞れます。

声を作り直すのは、自転車のブレーキを強く握るのに似ています

早口に気づいた瞬間、声の出し方だけを作り直したくなります。でも息のスピードを急に落とすやり方は、走っている自転車のブレーキを強く握るのに似ています。バランスを崩して、かえって不安定になります。

自転車は、ゆっくり漕ぐと車体が揺れて倒れやすくなり、ある程度スピードが乗っているほうがかえって安定して走れます。声も同じで、息のスピードを無理に落とすと言葉の間に隙間ができ、そこに喉の力みが入り込みます。必要なのは速さを落とすことではなく、指の動きより先に息を出しておくことです。

商談前に決めておくのは一つだけです。次のスライドに指が伸びる前に、まず短く息を吸う。これができていれば、話す速さそのものを変えなくても、声は聞き手に落ち着いて届きます。

画面に顔を近づけるほど、声は浅くなります

早口になる場面では、声だけでなく姿勢も同時に崩れています。相手の反応を画面越しに確認しようとするほど、上体が前に倒れ、ノートパソコンの画面へ顔が近づいていきます。

背中が丸まると胸が閉じ、息の通り道が狭くなります。息が浅いまま話そうとするから、指が動く前に言葉だけが先に出てしまいます。背もたれから軽く背中を離し、画面より少しだけ高い位置に目線を置くだけで、息の入り方は変わります。

顎の位置も見てください。相手に聞き取ってもらおうと顎が前に出ると、核心の一文の最初の音を喉で押しやすくなります。顎を軽く引いたまま、画面ではなくカメラのレンズあたりに視線を置くと、声は自然に前へ出ます。

早口を止めようと声だけを直す前に、まず座り方を見てください。指の動きと息のタイミングを整えるには、喉だけでなく、上体の傾きと目線の高さを戻す必要があります。

商談前の30秒は、指と声の順番だけ整えます

商談の直前に長く練習すると、かえって緊張が強くなることがあります。直前にやることは少なくて構いません。

まず、キーボードから両手を離し、一度息を吐きます。次に、肩を上げずに短く息を入れます。そのあと、声を出さずに先ほどの一文を、口の形だけでなぞります。最後に、実際に画面共有を始める前に、小さな声で一度だけ言ってみます。

ここで確認するのは、声が大きく出せているかではありません。指がスライドに伸びる前に息が入っているか。語尾まで息が残っているか。この二つです。

画面共有の途中で早口が戻ったら、指を止めます

商談の最中に早口が戻ってきても、全部を一度に直そうとしないでください。

まず、今話している一文を短く切り上げます。次に、その一文の語尾まで言い切ります。それでも急いでしまうなら、次のスライドに指を伸ばす前に一拍だけ待ちます。

この一拍は気まずい沈黙ではありません。相手が言葉を受け取るための時間です。沈黙を埋めようと次の説明を重ねるほど、声はさらに浅くなります。画面共有中は相手の表情が見えにくいぶん、この一拍を怖がる人が多いのですが、実際には指を止めている数秒のほうが、相手には丁寧な間として伝わります。

複数の商談が続く日は、前の商談の勢いのまま次の商談に入ってしまうこともあります。そのときは、通話をつなぐ前の数秒で一度だけ肩の力を抜いてください。前の商談の速さを一度リセットしてから話し始めると、指も声も新しい相手に合わせやすくなります。

次の商談で話す一文に絞って、練習を仕事に移します

練習でできても、本番の商談で出なければ意味がありません。移すためには、練習する一文を実際に話す言葉に近づけます。

まず、次の商談で話す予定の一文をそのまま書き出します。次に、余計な説明を削って短くします。最後に、資料のどのスライドを送る前に、その一文を言うかを決めておきます。

「このプランなら、御社の課題はここで解決できます」を録音し直すときは、指を動かす前に息を入れているか、語尾まで声が残っているかの二つだけを聞き直してください。本番では全部を完璧にする必要はありません。指を一度止められる。語尾だけ消えない。このどちらかができれば、声の印象は変わります。

この考え方は、今日決めた一文だけでなく、次の商談、その次の商談で使う別の一文にもそのまま使えます。話す内容が変わっても、指が動く前に息を出しておく順番だけは変えなくて構いません。スライドの枚数が増えても、核心の一文の手前でこの順番を守れれば、説明全体の印象は崩れにくくなります。

早口を直すというのは、話し方をまるごと入れ替えることではありません。指の動きより先に、息を出しておく順番を体に覚えさせることです。

関連して読む記事

商談での声について、もう少し違う切り口から見てみたい方はこちらもどうぞ。

よくある質問

Q. 営業で早口になる原因は何ですか
断られる前に全部伝えたいという焦りで、息を吸う間を削ってしまうことが大きな原因です。息の間がなくなると、速度は自分では制御できなくなります。
Q. 提案を短くすると情報不足になりませんか
なりません。相手に残るのは情報の量ではなく、金額や結論といった大事な一言が聞き取れたかどうかです。削った分、その一言の語尾まで息を残してください。
Q. 価格提示で早口になるときはどうすればいいですか
金額の手前でひと呼吸置き、数字だけは一音ずつ短く区切って伝えてください。金額を言い切ってから少し黙る余裕のほうが、早口よりも信頼につながります。
無料動画講座

声が変わると、人生が変わる。

通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。

登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

詳しいプロフィール →
関連記事