採用担当の面接官の声。応募者が話しやすい問いかけの声

採用担当として面接で応募者を身構えさせてしまう人へ。緊張をほぐし本音を引き出す、落ち着いた問いかけの声の作り方を解説します。

奥津ユキ

椅子に座って相手の正面に向き、「前職で工夫したことを教えてください」と一度言ってみてください。次に、同じ椅子、同じ言葉、同じ速さで、質問を終えた直後に机の上のペンから手を離し、両手を太ももに置いて五秒待ってみてください。一度目と二度目で、相手が言葉を探す顔や視線の動きに違いが出るかを観察してみてください。差が出なければ、待つ姿勢ではなく、質問が広すぎることや、情報の前提が共有されていないという別の原因を確認してみてください。

問いかけの声は質問文だけで決まらない

採用面接で問いかける声は、質問の文面や声量だけで決まりません。質問を言い終えた後に、面接官がどのように待つかまで含めて、応募者は次の言葉を選びます。質問の末尾で視線を外し、すぐにメモへ手を伸ばし、続けて別の質問を準備する様子が見えると、応募者は答えを短く切り上げたり、面接官が求める語を急いで探したりすることがあります。反対に、質問の後に答えを置ける余白があれば、応募者は内容を組み立てる時間を持てます。ここでいう余白は、長い沈黙を演出することではありません。問いかけを終え、相手が話し始める前に、面接官自身の次の動作を止めることです。ペンを握ったまま質問すると、答えの途中で書き始めたくなることがあります。画面を見ながら質問すると、相手の最初の反応を見落とすことがあります。質問を終えた後に手を置く場所と視線の先を決めれば、待つ時間を急いで埋めなくて済みます。話しやすい問いかけは、柔らかい声色を作ることと同じではありません。応募者が何について、どの範囲で、どのくらい待って答えればよいかを分かることです。「教えてください」と言った後にすぐ補足を重ねると、質問の範囲が広がり続けます。面接官の声が穏やかでも、答えを置く場所がなければ、応募者は話しにくくなります。

質問の終わりに置く余白を決める

質問の終わりには、応募者が内容を探すための短い時間が必要になることがあります。その時間を面接官が不安に感じて、「具体的には」「たとえば」「難しければ別の質問にします」とすぐ追加すると、応募者は最初の質問に答える前に、どれを優先するか選ばなければなりません。質問を一つ言ったら、数えるためではなく、相手が息を入れ、視線を動かし、言葉を始めるまで待つと決めます。待つ長さは固定の秒数ではなく、相手の最初の反応で見ます。余白を作る時は、質問の語尾を上げたまま止めるより、文を終えてから顔を相手へ向けます。「教えてください」と言い終えた後、口を開いたまま次の補足を待つと、応募者はまだ質問が続くと受け取ることがあります。口を閉じ、手を置き、視線を保つ。外から見えるこの三つの状態が、質問が終わったことを示します。声を優しく聞かせるより、終わりが明確である方が、応募者は話し始めやすくなります。答えがすぐに出ない時、面接官は無言の時間を失敗と見なさないことが大切です。応募者が過去の経験を思い出している、話す順番を組み立てている、質問の意図を確認しているということが起こります。面接官が待つ姿勢を保てば、その過程を急かさずに済みます。

待つ間の目線と手の置き場を固定する

待つ時間に面接官の視線が資料、画面、時計へ移ると、応募者は話し始める前から評価されているように感じることがあります。常に見つめ続ける必要はありませんが、質問の直後だけは、相手の顔の近くに視線を置きます。目を合わせ続けることが負担になりそうなら、顔の横や肩のあたりを見る位置を決めます。視線の先が安定していれば、応募者が話し始めた時に顔を上げる必要がありません。手の置き場も同じです。ペンを持ったまま待つ、キーボードに指を置いたまま待つ、資料の端をめくり続けると、質問の後に面接官が急いでいるように見えることがあります。質問をする前にペンを置き、両手を太ももか机の端へ置くと決めます。応募者が話し始めたら、必要に応じて記録のために手を動かします。この順番なら、待つ時間と書く時間を分けられます。オンライン面接でも、同じ考え方を使えます。質問を終えたら、画面の下のメモ欄をすぐ見ず、カメラの近くか応募者の表示へ視線を置きます。チャット通知や次の質問の欄へ手を伸ばすと、画面越しでも動きは伝わります。機器の操作を完全になくすことはできませんが、質問の直後だけ操作を止めると、応募者は答えの最初の言葉を出しやすくなります。目線と手を固定しても、応募者の答えが短くなる場合は、待ち方だけを原因にしません。

答えを急がせる追い質問を分けて扱う

応募者が話し始めた直後に、「それはなぜですか」「何人のチームでしたか」「成果は何ですか」と追い質問を重ねると、相手は最初の話を終える前に次の答えを準備することになります。必要な情報を集めるための質問でも、入れる位置が早いと、話しにくさにつながります。面接官は、応募者が一つのまとまりを話し終えたか、明らかに言葉を探しているかを見てから、次の質問を選びます。追い質問をしないのではなく、答えの途中に混ぜないことが重要です。話が長くなりそうな時は、途中で遮る前に、面接官が何を知りたいのかを短く示します。「その中で、ご本人が担当した部分を教えてください」と言えば、応募者は話の方向を選べます。「もう少し簡潔に」「要点だけ」と言うと、どの要点を選ぶかが分からないまま、速度だけを上げることがあります。問いを細くする時も、面接官の急ぎを声量で伝えるのではなく、知りたい範囲を言葉で渡します。沈黙の後に追い質問をする場合は、二つの質問を同時に渡しません。「成果と課題を教えてください」より、「成果から教えてください」と一つにします。応募者が答えた後で、課題を聞けばよいからです。質問を増やすほど、面接官は次を待つ姿勢を保ちにくくなります。

話しにくい内容を聞く時の声量と速度

退職理由、困難だった経験、対人関係の課題など、話しにくい内容を聞く時には、質問を小さな声で曖昧にするより、普段の会話量で短く言う方が、何を聞かれているかが明確になります。声量を落としすぎると、応募者は聞き返す必要があり、内容に入る前に注意が分かれます。反対に、早い速度で続けて聞くと、質問の重さが増して受け取られることがあります。声の量と速度を極端に変えるより、質問を一文にし、文末を決めます。たとえば「差し支えなければ、前職で難しかった局面について、もし可能であれば教えていただけますか」と前置きが長くなると、応募者はどこまで答えればよいかを探します。「前職で難しかった局面を教えてください。業務上のことで構いません」と二文に分ければ、質問の対象と範囲を順に受け取れます。配慮の言葉をなくすのではなく、質問そのものの前に積み重ねないことが大切です。話しにくい内容では、答えの後の受け取り方も声に表れます。応募者が話し終えた時に、すぐに評価の言葉を返す必要はありません。「ありがとうございます」と短く言い、次に聞きたい点があれば一つだけ聞きます。過度に共感を示そうとして長く話すと、応募者は自分の答えを修正したくなることがあります。

応募者の言葉を受け取る短い返し方

応募者が答えた後、面接官の短い返しは、次の質問へ急ぐ合図にも、話を受け取った合図にもなります。「はい」だけを速く重ねると、応募者はもっと早く話すべきだと受け取ることがあります。「なるほど」を長く伸ばすと、面接官の評価を推測させることがあります。返しは、応募者が一つのまとまりを話し終えた後に、一度だけ短く置きます。「承知しました」「ありがとうございます」と言い、必要なら次の問いへ移ります。返す前に、応募者の最後の語で本当に話が終わったかを見ます。文末を伸ばしている、視線が横に動いている、息を入れ直しているなら、まだ続きがあるかもしれません。その時に面接官が「では次に」と入ると、応募者は話を切られたと感じる可能性があります。返しの言葉を準備するより、相手が終わる合図を観察する方が、問いかけの声を落ち着かせます。内容を確認したい時は、面接官の理解を短く述べてから、事実を一つ尋ねます。「担当は二名だったのですね。ご自身の判断はどの部分でしたか」と言えば、受け取った内容と次の質問が分かれます。理解を長く言い換えると、応募者は訂正する場所を探すことになります。短い返しは、応募者の言葉を奪わずに、面接官が聞いていたことを示すためのものです。

面接の進行を声で急がせない

面接には時間の制約があり、全ての答えを無制限に待つことはできません。そのため、進行を管理する必要はあります。ただし、急ぐ必要がある時に声量を上げたり、質問を連続で投げたりすると、応募者は答えの内容より速度を優先しやすくなります。時間を伝えるなら、「残り五分なので、次の二点を伺います」のように、今の状況と質問の数を言葉で示します。声で急ぎを示すより、範囲を明確にする方が、応募者は答えを選びやすくなります。話を区切りたい時も、「失礼します」と短く入れた後に、何を次に聞くかを一つ示します。「その経験については理解しました。次に、入社後に取り組みたいことを教えてください」と言えば、応募者は切り替える場所が分かります。相手の発言を遮ったことを埋めるために長く説明すると、面接官の言葉が増え、時間はさらに短くなります。区切る、待つ、次を聞くという順番を保ちます。面接官が待つ姿勢を持つと、時間が延びるとは限りません。質問の範囲が明確になり、追い質問が途中で増えにくくなるため、かえって必要な情報を整理して聞けます。応募者の最初の答えを待たずに補足を重ねる方が、後で確認し直す時間を生みます。問いかけの声を整えることは、面接をゆっくりにすることではなく、質問と答えの境目を明確にすることです。喉の痛みや声枯れが続く場合は、面接の進め方だけで乗り切ろうとせず、耳鼻咽喉科へ相談してください。

よくある質問

Q. 面接官は堂々と大きな声で場を仕切るべきですか
大きな声だけが自信の表れではありません。落ち着いた静かな声にも、応募者を安心させる自信は宿ります。
Q. 応募者が言葉に詰まった時、面接官はどう対応すればよいですか
急かさず、間をそのまま置いてください。声を足して埋めようとするほど、応募者はさらに焦りやすくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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