採用担当の面接官の声。応募者が話しやすい問いかけの声

採用担当として面接で応募者を身構えさせてしまう人へ。緊張をほぐし本音を引き出す、落ち着いた問いかけの声の作り方を解説します。

奥津ユキ

面接で応募者がなかなか本音を話してくれない、と感じる採用担当の方の声を録音で聞かせてもらうと、質問の言葉づかい自体はとても丁寧なことがほとんどです。ただ、質問を発する前の一呼吸がなく、声がいつも同じ速さと硬さで出ているために、応募者の側が身構えたまま話してしまっている、という場合が少なくありません。

入室した瞬間の一声で、応募者の緊張の量が決まります

応募者が部屋に入ってくる瞬間、面接官がまず口にする「本日はお越しいただきありがとうございます」は、選考の内容に関わらず毎回同じ言葉です。この一言を、次の質問に早く移りたい気持ちのまま処理すると、声は事務的に響き、応募者はそこから先も型どおりの受け答えに徹しようとします。

私がすすめているのは、応募者が着席するまでの数秒、面接官自身も一度肩の力を抜いて息を通しておくことです。相手が座り切る前に言葉を出し始めず、目が合ってから一呼吸置いて声を出す。この数秒の差だけで、部屋全体の空気の張り方が変わります。

世間話の一言を、事務的に処理しないことが最初の鍵です

「今日はここまで迷わずお越しになれましたか」のような本題前の一言は、形式的な挨拶として早口で流されがちです。ただこの一文こそ、応募者にとっては「この面接官は自分を人として見ているか」を測る最初の手がかりになります。

急いで次の質問に移ろうとせず、この一文の語尾まで息を残して置いてみてください。声を作り込む必要はなく、急がないというそれだけで、応募者の肩の力が少し抜けるのが分かります。

深掘りする質問ほど、相槌の声で「聞いていますよ」を伝えます

「そのお仕事で、一番やりがいを感じた瞬間を教えてください」という質問に対して応募者が話し始めた時、面接官の相槌の声はメモを取る音に紛れて小さくなりがちです。ただ、相槌が小さく事務的になるほど、応募者は「ちゃんと聞かれているのか」が分からなくなり、話す内容を無難な方向へ縮めてしまいます。

相槌は大きくする必要はありません。「そうなんですね」「なるほど」の語尾まで、うなずきと一緒に息を残して置くだけで十分です。声の大きさより、相槌のたびに視線を上げているかどうかのほうが、応募者には伝わります。

声を大きく作らなくても、場を仕切ることはできます

面接官という立場になると、堂々と場を仕切らなければという意識から、無理に声を張ってしまう方がいます。ただ、大きくハキハキとした声だけが自信の表れではありません。落ち着いた声量のまま間を保てていることにも、応募者を安心させる種類の自信があります。声を張って主導権を握ろうとするより、静かな声のまま質問の芯だけをしっかり残すほうが、結果として場を落ち着かせやすくなります。

第一声についても、普段の何倍も張り上げる必要はありません。不自然にならない範囲の明るさで「よろしくお願いいたします」と置ければ、それだけで十分に丁寧な入り方になります。声を大きくすることに気を取られると、かえって次の質問に移るタイミングを見失い、応募者を待たせたまま間延びした空気を作ってしまうこともあります。落ち着いた声量のまま、次に進む一言を決めておくほうが、面接全体の流れは安定します。

率直に踏み込む質問ほど、間を惜しまないようにします

「率直に伺いますが、前のお仕事を離れようと思われたきっかけは何でしたか」のように、応募者にとって答えにくい質問をする場面もあります。ここで矢継ぎ早に問い詰めるように重ねると、答えにくさに焦りまで重なってしまいます。

質問を発したあと、あえて長めの間を置いてください。この間は沈黙ではなく、応募者が言葉を選ぶための時間です。面接官が先に言葉を足して埋めようとするほど、応募者は考えをまとめる前に話し始めることになり、本音とは違う答えが出やすくなります。

言葉に詰まる応募者を、声で急かさないために

緊張のあまり言葉に詰まる、あるいは同じ言い回しを繰り返してしまう応募者に対して、助け舟のつもりで面接官が先回りして言葉を継いでしまうことがあります。ただ、これは助けにならないことも多く、応募者は「うまく話せなかった」という印象だけを持って次の質問に進むことになります。

詰まった瞬間は、黙ってうなずくだけで十分です。急かす声も、慌てて助ける声も出さず、応募者が自分のペースで言葉を継げる間を保つ。これが、緊張している応募者に対して面接官の声でできる、いちばん実用的な配慮です。

履歴書の空白期間や退職理由を尋ねる時、声の温度を一段落とします

職務経歴書の空白期間や、短期間での離職について尋ねる質問は、内容自体が応募者にとって触れられたくない部分に踏み込みます。ここで他の質問と同じ速さ、同じ明るさのまま聞いてしまうと、悪気がなくても詰問のように響くことがあります。

私がすすめているのは、この種の質問だけ、声の高さをほんの少し落として、いつもよりゆっくり置くことです。暗く沈める必要はなく、テンポを落とすだけで十分です。「差し支えなければ、このあたりの経緯を教えていただけますか」という一文を、他の質問より半歩下がった速さで出すと、応募者は身構えずに事情を話しやすくなります。

複数の面接官がいる場面で、声のトーンを合わせすぎないために

一次面接や最終面接で面接官が複数人並ぶ場合、片方が強めの口調で踏み込む質問をすると、もう片方までつられて同じ強さの声になってしまうことがあります。場の空気に引っ張られて声を上げること自体は自然な反応ですが、面接官全員が同じ強さで畳みかけると、応募者にとっては逃げ場のない圧迫面接に変わってしまいます。

隣の面接官の声が強くなったと感じたら、自分の番の質問はあえて元のテンポに戻してください。声を張り合う必要はありません。一人だけでも落ち着いた速さを保っていれば、面接全体の圧は和らぎます。

オンライン面接では、音声だけの間の置き方が変わります

画面越しの面接では、表情やうなずきが伝わりにくい分、相槌の声そのものが唯一の反応になります。対面であれば黙ってうなずくだけで済む場面でも、オンラインでは「はい」「なるほど」と声に出しておかないと、応募者は反応が届いているのか不安になり、話すペースを崩しがちです。

声を大きくする必要はなく、短い相槌をこまめに置くことを意識してください。回線の遅延で発言のタイミングが被りやすい分、質問の後の間も対面より少し長めに取っておくと、応募者が安心して話し始められます。

面接の締めくくりで、最後まで急がせないために

「最後に何か質問はありますか」という締めの一言は、面接全体の印象を左右します。時間を気にして早口で言うと、応募者は聞きたいことがあっても遠慮して切り上げてしまいます。この一文だけは、それまでの質問より少しゆっくりめに、語尾まで息を残して置いてみてください。

応募者からの質問に答える面接官自身の声も、選考のための声から、案内する声へと切り替わる場面です。作り込む必要はなく、これまでと同じ落ち着いた速さを保つだけで十分です。

今日、一次面接で使う一文をスマホで録っておきます

練習は難しく考えなくて大丈夫です。「本日はお越しいただきありがとうございます」という一文を、スマホで一度録音してみてください。聞く場所は三つです。応募者が座り切る前に声を出し始めていないか。世間話の語尾まで息が残っているか。声の速さが、次の質問に急いで移ろうとする気持ちのまま早くなっていないか。

うまく話せているかを採点する必要はありません。この一文が整えば、その後に続く深掘りの質問も、同じ落ち着きのまま置きやすくなります。面接官の声の役目は、応募者を圧倒することではなく、応募者が普段どおりの言葉で答えられる場を声で用意することです。

一日に何人も面接が続く採用担当の方であれば、この一文を朝いちばんに一度だけ録音しておくのがおすすめです。午後になって疲れが出てきた時、その日の最初の録音を聞き返すと、どこで声の速さが変わってしまったかに気づきやすくなります。声を張り直すより、朝の落ち着いたテンポに戻すことのほうが、最後の応募者まで同じ印象で向き合う近道です。

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よくある質問

Q. 面接官は堂々と大きな声で場を仕切るべきですか
大きな声だけが自信の表れではありません。落ち着いた静かな声にも、応募者を安心させる自信は宿ります。
Q. 応募者が言葉に詰まった時、面接官はどう対応すればよいですか
急かさず、間をそのまま置いてください。声を足して埋めようとするほど、応募者はさらに焦りやすくなります。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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