フィードバックの声。指摘がきつく聞こえない伝え方
部下へのフィードバックで声がきつい、弱い、伝わらない人へ。指摘を人格否定に聞かせず、改善行動につなげる声の作り方を解説します。
奥津ユキ
部下に改善点を伝える時、声が硬くなったり弱々しくなったりするなら、性格や口調のせいにする前に、その言葉の前後で体が実際に何をしているかを観察してください。1on1の終盤、良い点を伝え終えた直後に声色が急に変わる人は少なくありません。原因はたいてい、性格ではなく、息と間と語尾のどこかにあります。
一文を録音して、崩れる場所を先に特定します
次の一文を、そのまま声に出して録音してください。
「一つ、改善してほしい点があります」
聞き返す時に確認するのは三点だけです。最初の音がはっきり立ち上がっているか。「改善してほしい点」の手前にわずかな間があるか。語尾の「あります」まで息が保たれているか。うまく言えたかどうかの採点はまだ必要ありません。この三点を耳で拾うだけで、自分がどこで崩れやすいタイプかが見えてきます。最初の音が弱い人、間を飛ばしてしまう人、語尾で息切れする人では、直すべき場所がそれぞれ違います。
指摘に切り替える一瞬で、声はもう決まっています
良い評価を伝えたあと、改善点に話を切り替える瞬間、声の調子は大きく揺れます。やわらかく言おうとして声がしぼんでしまう人もいれば、きつく響かせまいと身構えて声が硬直する人もいます。評価シートの数字を読み上げたあと、次の一言に移る手前でこの揺れは特に出やすくなります。どちらも、伝える内容ではなく、話を切り出す直前の息と間の作り方に原因があります。話し出す前に息をすでに止めていないか。最初の音を喉で押し出していないか。要となる言葉の手前で余分に息を吸い直していないか。語尾に入る前に息を切らしていないか。このどこかが崩れると、伝える内容は変わらなくても声の説得力は落ちます。人柄の問題として片づける前に、体の動きとして一つずつ確認してください。
トーンだけを和らげても、喉の締めすぎは直りません
フィードバックの場面にありがちな失敗は、声のトーンだけをやわらかく変えようとすることです。トーンがまったく関係ないとは言いませんが、そこだけをいじろうとすると喉に力を込めた声になりがちです。やわらかく見せようとして小さくした声が、部下には煮え切らなさや自信のなさとして伝わることもあります。きつく響くのも弱々しく萎むのも、実は同じ喉の締め方の加減のズレから起きています。締めすぎればきつく角の立った声になり、緩めすぎれば息が抜けて自信なさげに聞こえる。人によってどちらに寄りやすいかは逆なので、感覚だけで直そうとせず、録音で自分がどちら側に振れているかをまず確かめてください。普段は物静かなタイプほど締めすぎ側に振れやすく、普段から声が通るタイプほど緩めすぎ側に振れやすい傾向があります。語尾をはっきり言い切るほど信頼感が増すと思われがちですが、言い切りすぎるとかえってワンマンな響きになり、部下が委縮してしまうこともあります。最後まで息を保ちながらも、言い切る一歩手前でわずかに含みを残すくらいが、指摘の場面にはちょうどよい強さです。この含みは曖昧さではなく、部下が反応を返す余地を残すための間でもあります。
冒頭・つなぎ・締めの言葉を三つ決めておきます
面談中に声が乱れる人の多くは、話しながら言葉そのものを探しています。言葉を探している間、呼吸は止まり、声は喉のあたりに詰まっていきます。だからこそ、あらかじめ三つの言葉を用意しておきます。指摘の冒頭に置くのは、先ほど声にした一文です。良い点から課題の話に移る合図には「ここからは、次に活かせる話をします」。相手の記憶に残したい締めには「今日話したことは、ここまでです」。この三つを持っていれば、声を作る前に面談全体の流れがすでに見えています。流れが見えていれば、話しながら次の言葉を探す必要がなくなり、呼吸も乱れにくくなります。大切なのは格式張った言い回しを増やすことではなく、口に馴染んでいて言いやすく、語尾まで自然に届く一言に絞ることです。
崩れた例と整えた例を、同じ一文で比べます
崩れた例は、「一つ、改善してほしい点があります」を一気に言い切ってしまう話し方です。最後が沈むと、内容そのものは正しくても弱々しく聞こえます。声量を上げたところで、語尾の手前で息が尽きているなら印象は変わりません。目指したい形は、全体を強く読み上げることではありません。この一文に入る前に短く息を吸う。要となる言葉の手前でわずかに待つ。最後の音まで息を残す。手を加えるのはこれだけです。もう一度、この一文を録音して聞き比べてみてください。同じ言葉でも、間の位置がひとつ変わるだけで、聞き手の受け取り方が硬い指摘から一緒に考える相談へと変わることがあります。大げさに演じる必要はなく、部下に届けるべき言葉をふさわしい位置に置くこと。フィードバックの声づくりで大切にしたいのは、この感覚です。
喉より先に、足・胸・顎の状態を見ます
声が弱々しく感じられると、まず喉を直したくなります。しかし喉に力を入れるほど、声はかえって不安定になります。まず足裏が床にきちんとついているかを見ます。体が浮いていると、息まで浮ついてしまいます。次に胸の向きを見ます。資料や部下の反応に意識が向きすぎると、胸が閉じます。胸が閉じると、声は前に抜けにくくなります。最後に顎と首を見ます。顎が前に出たり、首の前側が固まったりすると、最初の一音を喉で押し込みやすくなります。パソコンの画面と部下を交互に見る面談ほど、顎が前に出たままになりやすいので注意してください。指摘と期待を分けて声に乗せるには、喉だけでなく、体の向きと息の通り道の両方を整え直す必要があります。
面談前の30秒と、崩れた時の立て直し方
面談前に長時間練習すると、かえって緊張が高まることがあります。直前にやることはごく限られた範囲で構いません。口を閉じたまま息を吐き切り、肩を動かさず短く息を取り込みます。そのあと声を出さずに口の形だけをなぞり、最後に控えめな声量で一度だけ実際に発声します。見るべきは、最初の音が欠けていないか、喉に力みが入っていないか、語尾まで息が続いているかの三点だけです。面談の途中で声が乱れても、すべてを一度に修正しようとしないでください。まず一文を短く切ります。次に語尾まで言い切ります。それでも収まらなければ、次の言葉の前でひと呼吸置きます。この間は沈黙ではなく、部下に言葉を届けるための時間です。評価シートを渡した直後や、資料を挟んだ机越しの面談ほど、この立て直しが必要になる場面は多くなります。
面談の形式が変わっても、確認する場所は変わりません。対面の面談では、資料をのぞき込む姿勢のまま話すため、胸が閉じて声が前に抜けにくくなります。オンラインの面談では、画面越しに声が届きにくく感じて、知らず知らずのうちに声を張り上げてしまう人もいます。会議室の対面では、部下の表情を気にするあまり話す前に息を止めがちになり、オンラインでは、マイクとの距離を気にして早口になりがちです。形式ごとに直し方を変える必要はありません。話し出す前に息を止めていないか、要となる言葉の手前に間があるか、語尾まで声が残っているか。この三点だけを、対面でもオンラインでも同じように確認してください。
部下に届くのは、声量ではなく順番です
フィードバックの場面に求められているのは、厳しさを示すための大声ではありません。部下が聞き返すことなく言葉を受け取れる声です。最初に何を伝えるか。どこで間を置くか。どの言葉を相手の記憶に残したいか。締めくくりをどう終えるか。この段取りさえ組めていれば、声を作り込まなくても安定して聞こえます。声を大きくしようとするほど、部下は身構えて言葉より先に態度を見てしまいます。次の面談の前に、今日の一文をもう一度声に出してみてください。何度も練習し直す必要はなく、同じ一文を同じ順番で確認するだけで十分です。指摘は、声を張ることではなく、順番を整えることで届きます。
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よくある質問
- Q. フィードバック 声で最初に確認することは何ですか
- 声量ではなく、話し始める前の息、重要語の前の間、語尾まで声が残っているかを確認してください。
- Q. 強く話せば印象は良くなりますか
- 強く押すと喉が固まり、かえって聞き取りにくくなることがあります。息と間を整えることが先です。
- Q. 本番前にできる練習はありますか
- 実際に使う一文を録音し、出だし、間、語尾の三つだけを確認してください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →1on1の声。部下が話しやすくなる聞き方と第一声
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