長い会議の後半で声が続かない人へ。最後まで発言を届ける体の使い方
1時間を超える会議やオンライン説明会の後半だけ声がかすれ、質疑応答で聞き取りづらくなる人へ。原因と、途中で立て直す整え方を解説します。
奥津ユキ
会議が始まった直後は普通に話せていたのに、1時間を超えたあたりから声がかすれ、質疑応答のパートで聞き返される。内容は変わっていないのに、後半になるほど自分の発言が届いていない気がする。この状態は根性や集中力の問題ではなく、前半のうちに喉と体に負担が積み重なっていることに関わっています。
会議の後半に差しかかると、声だけ先に疲れて聞こえる
進行役として1時間半の定例会議を回す人、資料説明を担当して同じ会議で何度も発言する人、商談が三件連続で入っている営業担当。長く話し続ける仕事では、内容の組み立てには慣れていても、声の消耗までは計算に入れていないことがほとんどです。
たとえば、次の一文です。
「続いて、次の議題に移ります。」
会議の前半でこの一言を言うときは何の問題もありません。ところが後半、同じ一言を発しようとすると、声がかすれて語尾がつぶれ、聞き手に「疲れているのかな」という印象を与えてしまいます。話している内容の重要度は変わらないのに、声だけが先に力を失っていくのは、もったいないことです。
声が枯れるのは声帯が弱いから、という考え方だけでは説明がつかない
長時間話して声が枯れると、声帯そのものが弱いのではないかと考える人がいます。間違いではありませんが、それだけが理由ではありません。私が見ている限り、声が大きすぎたり、息を必要以上に流しすぎていたり、使い方そのものに原因があることのほうが多いです。
会議で声を張らなければと意識するほど、喉で押した声になりやすく、そのぶん消耗も早まります。声帯の強さを鍛える前に、まず今の話し方が喉に負担をかけていないかを見直したほうが、後半まで声を保ちやすくなります。
一時間を超える会議で、腹に何が起きているか
私がいちばん伝えたいのは、腹圧を吐くときだけでなく、話の合間、息を吸うときにも抜かないということです。会議の前半はこの圧を保てていても、資料をめくりながら話す、画面を見ながら話すなど注意が分散する場面が増えるほど、圧は少しずつ緩んでいきます。
イメージとしては、横隔膜のあたりを前にそっとつまみ出したまま保ち続ける感覚です。吐くときも吸うときも、そのつまんだ状態を緩めない。これができていると、長く話しても喉だけで支えることにならず、後半まで同じ調子で声を出しやすくなります。
腹圧に加えて、息のスピードも見ておきたい要素です。私はよく、自転車の感覚にたとえます。ゆっくり漕ぐとふらついて止まりそうになりますが、少し速めに漕ぐとかえって安定します。会議で声が続かない人は、声を長く伸ばそう、ゆっくり丁寧に話そうとするあまり、息の流れそのものが遅くなっていることがあります。ゆっくり話すことと、息をゆっくり流すことは別の話です。丁寧に話しながらでも、息はきびきびと流したほうが、結果的に声は安定します。
休憩なしで複数の議題を進行する人がやりがちな消耗パターン
進行役や説明担当者に多いのは、次の議題、次の議題と気持ちだけを前に進め、体を一度も休めないまま話し続けるパターンです。議題が変わる瞬間、頭の中は切り替わっていても、喉と体はそのまま酷使され続けています。
もう一つ多いのが、聞き手の反応が薄いと感じたときに、声量だけを上げて挽回しようとすることです。これをすると喉にさらに力が入り、後半に向けての消耗が早まります。反応が薄いと感じた時ほど、声を大きくするより先に、語尾まで息を残せているかを確認するほうが効果的です。
議題の切れ目、数秒でできる立て直し
長い会議の途中でも、資料をめくる数秒、次の発言者に移る数秒はあります。この数秒を無駄にせず、口を閉じたまま短く息を吐く時間にあててください。声を出さなくても、この一呼吸があるかないかで、後半にかけての消耗の度合いが変わります。
もう一つ、手のひらで軽く顎の下を支えながら発言する方法もあります。顎が上がったまま話し続けると喉が締まりやすくなりますが、顎を軽く支えておくだけで締まりが抜け、長時間話しても声の通り道が保たれやすくなります。人前で目立つ動きではないので、会議中でも試せます。
「続いて、次の議題に移ります。」で録音して聞き分ける
練習には、会議で実際に使うこの一文だけを使います。
「続いて、次の議題に移ります。」
一回目は普段通りの調子で録音します。二回目は、話す前に横隔膜のあたりを軽くつまむ感覚を保ったまま録音します。三回目は、語尾の「ます」まで息を残すことだけを意識して録音します。
聞き比べるときに確認するのは、声の大きさではありません。最初の音が喉で押されていないか、話している途中で息が浅くなっていないか、語尾まで声が保たれているか。この三点です。同じ一文でも、体の使い方によって後半まで保てる声かどうかが変わってきます。
声を張らずに、後半まで同じトーンを保つ座り方
長時間の会議では、座り方も声の消耗に関わります。背もたれに寄りかかって猫背のまま話すと、息の通り道が狭くなり、声を出すたびに喉で補おうとする癖が強まります。
足の裏を床につけ、背中を丸めずに座ること。資料や画面を見るときも、首だけを下に曲げず、目線だけを落とすこと。この二点を意識するだけで、同じ声量でも喉にかかる負担は変わってきます。姿勢を大きく変える必要はなく、後半になっても前半と同じ姿勢を保てているかを、時々思い出す程度で十分です。
質疑応答のパートだけ、余計に声が沈む理由
会議の後半でも、とりわけ質疑応答のパートで声が沈みやすいと感じる人は多いです。説明部分は準備した内容を話すだけですが、質問への返答はその場で考えながら声を出すことになり、息を整える余裕がないまま話し始めてしまいます。
考えながら話すと、言葉を探している間に息が止まり、話し出した瞬間の一音が喉から出やすくなります。質問を受けたら、すぐに答え始めるのではなく、ひと呼吸だけ置いてから話し始めてください。この一拍が、答えの内容を整理する時間にもなり、声の出だしを整える時間にもなります。
三件連続の商談や一日三本の会議で、声の配分を考える
一日のうちに長い会議や商談が何本も入っている日は、一本目で声を使い切ってしまうと、二本目、三本目に響きます。一本目の後半で声が続かなかった経験がある人ほど、次の一本を迎える前に喉を休ませる時間を意識的に作る必要があります。
会議と会議の間が数分しかない日でも、口を閉じて短く息を吐く時間を一度だけ挟んでください。次の一本に入る前に、前の一本の消耗を持ち越さないようにするだけで、一日を通した声の保ちやすさが変わってきます。声を出す時間の長さだけでなく、出さない時間をどう使うかも、長丁場の日には欠かせない要素です。
会議前日・当日の使い方で、後半の伸びしろが変わる
会議の前に別の打ち合わせや電話対応が続いている日は、本番に入る前からすでに喉に負担がかかっています。そういう日ほど、会議前の数分は無理に声を出さず、水分を取り、口を閉じたまま静かに呼吸を整える時間にあててください。
前日に長時間しゃべり続けた日の翌朝も、喉はまだ本調子に戻っていないことがあります。会議の直前に短い発声練習をするより、腹圧を軽く確かめる程度にとどめておくほうが、当日の消耗を抑えられます。
会議が控えている日ほど、朝のうちに長々と発声練習をしたくなりますが、かえって喉に負担を重ねることもあります。声を出す量を増やすより、腹圧と息のスピードを軽く確かめる程度にとどめておくほうが、本番までの喉の状態を保ちやすくなります。
なお、会議中に声がかすれる状態が何日も続く場合や、痛みを伴う場合は、話し方の癖だけで片付けず、医師や専門家に相談することも考えてください。
まとめ
長い会議の後半で声が続かないと悩む時は、声帯が弱いからだと決めつけず、前半のうちに喉と体へかけている負担を見直してください。腹圧を吸うときも抜かずに保つこと、議題の切れ目の数秒で息を整えること、そして座り方や顎の使い方で喉への負担を減らすこと。これらを積み重ねれば、後半になっても発言を最後まで届けやすくなります。
練習は「続いて、次の議題に移ります。」を録音するだけで始められます。普段通り、腹圧を保ってから、語尾まで息を残してから。この三通りを聞き比べれば、自分がどこで声を消耗しているかが見えてきます。
よくある質問
- Q. 長い会議の後半で声が続かないのはなぜですか
- 声帯が弱いからだけとは限りません。前半の声量や息の流し方、体の使い方の積み重ねが後半に表れることが多いです。
- Q. 後半に向けて声を保つにはどうすればいいですか
- 議題の切れ目や資料をめくる数秒でも、口を閉じて短く息を吐く時間を作ると、喉にかかる負担を減らせます。
- Q. 会議中に声がかすれてきたらどうすればいいですか
- その場で声だけを強めようとせず、声量を一段階落とし、語尾まで息を残すことを優先してください。それでも改善しない場合は無理をせず休息も考えてください。
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ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
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会議の後半で声が続くかどうかは、根性や集中力だけで決まるものではありません。前半の声の出し方が、後半にそのまま表れます。