長い会議の後半で声が続かない人へ。最後まで発言を届ける体の使い方
1時間を超える会議やオンライン説明会の後半だけ声がかすれ、質疑応答で聞き取りづらくなる人へ。原因と、途中で立て直す整え方を解説します。
奥津ユキ
会議の一時間目までは普通に話せていたのに、後半に入ると声がかすれ、質疑応答で聞き返される。この後半だけの変化は、実は会議を待たなくても、いますぐ手元で再現できます。
座る重さの偏りを替え、会議後半の一言が薄れないか確かめる
椅子に座り、「次の議題に移ります。進行状況を共有します」と言ってみてください。一度目は座面に触れる左側へ重さを寄せ、その状態で一分ほど座ったあとに話します。二文目に入るころ、声を前へ出そうとしても薄くなるか、話すために余計な力が必要になるかを観察します。長い会議では、発言の回数だけでなく、座った重さの偏りがじわじわ負担になるということが起こります。議題を切り替える短い発言にも、会議前半にはなかった重さが出ていないかを見ます。話し終えたあとに疲れが増さないかも確認します。
二度目は同じ椅子で座面に触れる左右の重さをそろえ、同じ一分のあとに、同じ文を同じ声量、速さ、高さで言ってみてください。変えるのは座面へかける重さの偏りだけです。二度目に二文目まで声が薄れず、会議を進める言葉が自分の前で消えなければ、消耗の一部は座り続ける体の偏りにあります。差が出なければ、座り方ではなく室内の乾燥や発言量の多さが別の原因です。私がこの場面でまず確認したいのは、後半に声が弱くなる時間帯ではなく、座っている間にどこへ負担が溜まるかです。
声帯の弱さより、前半の使い方が後半を決めます
長時間話して枯れると、声帯そのものが弱いのではと考えがちです。間違いではありませんが、私が見ている限り、声が大きすぎたり、息を必要以上に流しすぎていたり、使い方に原因があることのほうが多いです。
とくに会議では、声を張らなければという意識が喉で押す声を作り、その消耗が後半に回ってきます。進行役として九十分の定例を回す人、資料説明で何度も発言する人、商談が続く営業担当。長く話す仕事ほど、内容の組み立てには慣れていても、声の配分までは計算に入れていないものです。同じ長さを話しても疲れ方に差が出るのは、才能ではなく配分の差です。
もったいないのは、長い会議ほど、決定事項の確認や質疑といった大事なやり取りが後半に集中していることです。内容の重要度は上がっていくのに、声だけが先に力を失っていく。この記事で整えたいのは、その逆転です。
腹圧は、吸うときにも抜かないでいてください
私がいちばん伝えたいのは、腹圧を吐くときだけでなく、話の合間に息を吸うときにも抜かない、ということです。イメージは、横隔膜のあたりを前にそっとつまみ出したまま保ち続ける感覚です。会議の前半はこの圧を保てていても、資料をめくりながら話す、画面を見ながら話すというように注意が分散するたび、圧は少しずつ緩んでいきます。緩んだ分を喉が肩代わりし、それが後半のかすれになります。
息のスピードも見てください。私はよく自転車にたとえます。ゆっくり漕ぐとふらついて止まりそうになり、少し速めに漕ぐとかえって安定する。丁寧に話そうとするあまり息の流れまで遅くなると、声は支えを失います。ゆっくり話すことと、息をゆっくり流すことは別の話です。落ち着いた口調のままでも、息はきびきび流したほうが後半まで安定します。
議題の切れ目の数秒が、後半の余力を作ります
進行役に多い消耗パターンは、次の議題、次の議題と気持ちだけを前へ進め、体を一度も休めないまま話し続けることです。もう一つは、聞き手の反応が薄いときに声量で挽回しようとすることです。どちらも喉の消耗を早めます。反応が薄いと感じたら、大きくするより先に、語尾まで息が残っているかを確かめてください。
資料をめくる数秒、発言者が替わる数秒は、どの会議にも必ずあります。この数秒に、口を閉じたまま短く息を吐いてください。声を出さないこの一呼吸があるかないかで、終盤の残り方が変わります。顎が上がったまま話し続けると喉が締まりやすいので、手のひらで軽く顎の下を支えるのも、人前で目立たずに試せる方法です。
進行役なら、アジェンダの議題名の横に、自分にだけ分かる小さな印を書き込んでおくのも有効です。議題が替わるたびにその印が目に入り、息を吐くきっかけになります。忘れない工夫まで含めて準備です。
座り方と目線が、息の通り道を守ります
背もたれに寄りかかった猫背のまま話すと、息の通り道が狭くなり、声を出すたびに喉で補う癖が強まります。足の裏を床につけ、背中を丸めずに座ること。資料や画面を見るときは、首ごと下に曲げず、目線だけを落とすこと。この二点だけで、同じ声量でも喉にかかる負担は変わります。
大げさに姿勢を作り直す必要はありません。後半になっても前半と同じ座り方でいられているかを、議題の切れ目に思い出す程度で十分です。会議が長引くほど体は背もたれへ沈んでいくので、思い出す回数だけが頼りになります。
オンライン説明会で画面共有をしながら話す人は、共有が始まって自分の映像が見えなくなった瞬間から、姿勢が崩れやすくなります。資料に目を近づけるほど首は前に出て、声は細くなります。共有中こそ、足の裏と目線を意識的に思い出してください。
聞いている時間を、回復の時間に変えます
長い会議では、自分が話していない時間のほうが長いはずです。ところが声が続かない人ほど、この時間を回復に使えていません。相づちを打ちながら息を止めて聞き入る。次の発言の準備で呼吸が浅くなる。メモを取る前傾姿勢のまま固まる。話していないのに、消耗だけが静かに進んでいきます。
聞いている間は、口を閉じて、鼻で細く吐きながら聞いてください。姿勢が背もたれに沈んでいたら、足の裏を床へ戻します。発言が回ってきたとき、浅い息と丸まった背中から話し始めるのか、整った息から話し始めるのか。話していない時間の過ごし方の差が、そのまま後半の声の差になって積み上がります。
質疑応答は、答える前のひと呼吸で守れます
後半の中でも、質疑応答でとりわけ声が沈む人は多いです。説明は準備した内容を話すだけですが、返答はその場で考えながら声を出すことになり、言葉を探している間に息が止まります。止まった息の上で話し始めるから、第一声が喉から出るのです。
質問を受けたら、すぐに答え始めず、ひと呼吸だけ置いてください。この一拍は、答えの内容を整理する時間であると同時に、息の支えを戻す時間でもあります。沈黙を恐れて食い気味に答えるより、半拍遅れて息の乗った声で答えるほうが、聞き手には落ち着いた回答として届きます。
オンライン会議なら、マイクがあることも思い出してください。声量の大部分は機材が運んでくれるので、会議室の端まで届かせるつもりで九十分張り続ける理由は、画面越しにはもともとありません。後半にかすれを感じたら、声量を一段落とし、文を短くし、語尾まで息を残すことだけを優先します。張り直すのではなく、削って残す方向で立て直すのが、その場でできる唯一のリカバリーです。
会議が重なる日は、声を出さない時間を設計します
一日に長い会議や商談が何本も入る日は、一本目で声を使い切ると二本目、三本目に響きます。会議と会議の間が数分しかなくても、口を閉じて短く息を吐く時間を一度だけ挟み、前の一本の消耗を持ち越さないようにしてください。
一日のうちに声を無理なく使える量には、その日ごとの上限があります。朝の雑談で使う分、昼の定例で使う分、夕方の商談に残しておく分。先に配分を頭に置いておくだけで、午前中の張りすぎは自然と減っていきます。
前日に話し続けた翌朝や、会議の前に電話対応が続いた日は、本番に入る前からすでに負担が乗っています。そういう日ほど、直前に長い発声練習を足すのは逆効果です。水分を取り、腹圧の張りを軽く確かめる程度にとどめます。なお、かすれが何日も続く場合や痛みを伴う場合は、話し方の癖だけで片付けず、医師や専門家に相談することも考えてください。
終盤の一言は、開始前のひと張りで決まります
「続いて、次の議題に移ります。」
次の長い会議がある日の朝、この一文を一度だけ録音してから出かけてください。お腹の軽い張りを保ったまま言えていれば、あとはその張りを議題の切れ目ごとに確かめるだけで、九十分後の同じ一言は別物になります。声が最後まで残っていれば、締めの確認や質疑という、会議でいちばん大事な場面に集中を割けます。後半の声は後半に作るものではなく、開始前と前半の使い方が届けてくれるものです。
よくある質問
- Q. 長い会議の後半で声が続かないのはなぜですか
- 声帯が弱いからだけとは限りません。前半の声量や息の流し方、体の使い方の積み重ねが後半に表れることが多いです。
- Q. 後半に向けて声を保つにはどうすればいいですか
- 議題の切れ目や資料をめくる数秒でも、口を閉じて短く息を吐く時間を作ると、喉にかかる負担を減らせます。
- Q. 会議中に声がかすれてきたらどうすればいいですか
- その場で声だけを強めようとせず、声量を一段階落とし、語尾まで息を残すことを優先してください。それでも改善しない場合は無理をせず休息も考えてください。
声が変わると、人生が変わる。
通る声、落ち着いた声、人を惹きつける声は、生まれつきだけで決まるものではありません。第一声・息・喉・体の使い方を整えることで、人前で話すたびに「この人は違う」と伝わる声はつくれます。無料動画講座では、声量に頼らず、印象・説得力・存在感が変わる声の整え方をお送りします。
登録後、無料動画講座をメールでお送りします。配信停止はいつでも可能です。

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。
詳しいプロフィール →ビジネスボイトレとは。声で印象の主導権を握るために鍛えること
ビジネスボイトレで変えるべきものは、話し方の型だけではありません。会議・プレゼン・商談で選ばれる声を、息・喉・体の使い方から整える考え方を解説します。
ファシリテーションの声。場を進める人の聞かれる話し方
ファシリテーションで声が弱い、流される、強く聞こえる人へ。会議の論点を戻し、発言を引き出す声の使い方を解説します。
会議で語尾が消える人へ。発言が弱く見えない声の終え方
会議で語尾が弱くなる人へ。言い切れない印象を変えるために、息を残し、文末まで声を届ける練習を解説します。