·会議の声

役員会・経営会議で発言する声。格上の前で萎縮しない

役員や経営陣が並ぶ会議で声が小さくなる、意見を聞かれても言葉が出てこない人へ。格上を前にした萎縮を声から整える方法を解説します。

奥津ユキ

月に一度、役員が並ぶ会議室に呼ばれ、進捗を数分で報告する。相手は決裁権を持つ人ばかりで、資料をめくる音や視線の動きひとつにも気を取られます。私がこの相談を受けるとき最初に確認するのは、話す内容の完成度ではなく、役員に見られていると感じた瞬間、喉と息がどう縮こまっているかです。

声が小さくなるのは、自信のなさだけではありません

役員会で報告する声が小さくなる人を「自信がないから」の一言で片づけてしまいがちですが、それだけとは限りません。相手側が威圧的な空気を出していることも、声を縮こませる要因になります。普段の会議では問題なく話せる人が、役員が並ぶ場だけ声が小さくなるなら、それは性格の問題というより、その場の圧そのものに体が反応しているだけです。

「現在の進捗についてご報告いたします」

この一文を、役員の視線を感じた瞬間に喉だけで押し出そうとすると、声が細く小さくなります。話し始める前に、まず息をひとつ通してから言葉に乗せるようにしてください。

奥津ユキ
奥津ユキのミニコメント

役員会で声が小さくなるのは、あなたの自信の問題だけではありません。相手の圧を感じた体が、喉を縮めているだけのことも多くあります。

低く落ち着いた声だけが、説得力を作るわけではありません

役員会で説得力を出そうと、無理に低く落ち着いた声を作ろうとする人がいます。低く抑えた声も一つの手法ですが、それだけが正解ではありません。しっかり息を通して大きく明るい音でハキハキ話す方が、説得力につながることもあります。無理に低さを作ろうとすると、語尾が沈んで消えやすくなり、かえって歯切れが悪く聞こえることがあります。

声のトーンの高さそのものは、意見が通るかどうかにあまり関係がないと私は感じています。それより、聞く耳を持たれるようなトーンと話す速さ、間の取り方の方が重要です。役員の前で急いで早口になるより、資料の要点ごとに一拍置く方が、内容が正確に伝わります。

質問を受けた瞬間、声はさらに縮みます

進捗報告が終わったあと、役員から「その根拠は」「他部署の反応は」と質問が飛ぶ場面は、報告そのものより緊張します。想定していない質問に答えるとき、多くの人は息を止めたまま考え、止めた息のまま声を出そうとして、最初の一音が喉の奥で詰まります。

質問を受けた直後は、答えを組み立てる前にまず短く息を吐き、それから話し始める癖をつけてください。答えの内容が固まっていなくても、「その点については」と一言置いてから続けると、声を出す前に息を通す時間が確保できます。緊張して声が高くなること自体は誰にでも起こることで、性格の問題として諦める必要はなく、練習を重ねるほど少しずつ和らいでいきます。

虚勢で乗り切ろうとするほど、声は震えます

役員が並ぶ圧に負けまいと、無理に大きな声で堂々と振る舞おうとする人もいます。ただ、過度に大きな声を出したり、必要以上に堂々と見せようとしたりすると、それ自体が自分へのプレッシャーになり、かえっておじけづいて虚勢を張るような話し方になってしまうことがあります。結局その反動で声が震える人もいるため、無理に強く見せようとする必要はありません。

必要なのは、声を大きくすることでも堂々と振る舞うことでもなく、腹の圧を保ったまま息を流し続けることです。話している間、吐く息だけでなく次に吸う一瞬にも腹の圧を抜かないでおくと、質問の途中で声が上ずるのを防ぎやすくなります。

「現在の進捗についてご報告いたします」を、視線を意識して練習します

声に出す前に、この一文を普段の高さのまま一度だけ読んでおきます。続けて、役員が並んで座っている場面を思い浮かべ、視線を感じる位置に立ってから、軽く息を吐き出したうえで同じ一文を口にしてください。

チェックするのは報告の完成度ではなく、出だしの一音がこもっていないか、話の途中で早口になっていないか、語尾の「いたします」まで音が残っているかの三点です。録音した二回分を聞き比べると、どちらの読み方で声が縮こまっているかがつかめます。

資料を読み上げる場面と、自分の言葉で答える場面は喉の使い方が違います

役員会では、用意した資料を読み上げる時間と、その場で質問に答える時間の両方があります。資料を読み上げるときは、目線が手元の紙に落ちやすく、声が机に向かって沈みがちです。読み上げながらも時折顔を上げ、声を役員のいる方向へ向け直すことを意識すると、こもりにくくなります。

一方、資料を離れて自分の言葉で答える場面では、考えながら話す分、文の途中で息が切れやすくなります。一文を短く区切り、句点ごとに小さく息を吸い直す方が、長く話し続けて枯れることを防げます。長時間の会議で声が枯れる人はほぼ喉の締めすぎが原因で、横隔膜を前につまむような感覚を保っておくと、質疑応答が長引いても声が保ちやすくなります。

会議室に入る前の数十秒でできる準備

役員会が始まる直前、資料を抱えて廊下で待つ数十秒に、声を整える時間を作れます。口を閉じたまま静かに息を吐き、肩を上げずに短く吸う呼吸を数回繰り返してください。声には出さず「現在の進捗についてご報告いたします」と口の形だけをなぞっておくのも有効です。

喉が締まりやすい人は、顎の力を抜いて軽く下げた姿勢のまま、鼻から静かに息を吸い、細く長く吐きながら小さく声を乗せる発声を一度だけ試してみてください。喉のこわばりが薄れた状態のまま会議室に入ると、最初の一声が出しやすくなります。

声を出す前に、口の開き方とトーンを確認します

会議で聞き返される人に共通するのは、声の質そのものよりも、口の開き具合と声のトーンの二点です。緊張していると口の動きが小さくなり、こもった音のまま話が進んでしまいます。声量を上げようとする前に、まず口をどれだけ開けて話せているかを確かめてみてください。

オンライン開催の役員会では、こもりへの向き合い方が変わります

グループ会社をまたぐ役員会では、一部の役員がオンラインで参加する形式も増えています。相手に届いていないのではと不安になり、つい声を張り上げたりマイクとの距離を詰めたりする人がいますが、無理に近づけると音声が割れて逆に聞き取りづらくなることがあります。マイクとは無理のない距離を保ったまま、いつもよりわずかに言葉の区切りをゆっくりにする方が、回線越しでも安定して届きます。

オンライン参加の役員からの反応が読めず不安になり、カメラ目線を保ち続けようと力む人もいますが、カメラ目線であることが必ずしも説得力につながるとは限りません。資料に視線を落としながら話しても、話す内容と息の流れさえ整っていれば、伝わり方が大きく損なわれることはありません。ノイズキャンセリング機能つきのイヤホンやマイクを導入すれば聞こえ自体は良くなりますが、それだけに頼るより、声そのものを整えておく方が根本的な対策になります。

沈黙のあと発言を求められる場面ほど、息を止めがちです

役員会では、報告が終わったあと、しばらく沈黙が続いてから「何か補足は」と急に振られる場面があります。この沈黙の間、多くの人は身構えたまま息を止めており、いざ発言を求められた瞬間に、止めていた息のまま声を出そうとして最初の一音が詰まります。

沈黙が続いている間こそ、次に声を出すための準備の時間だと捉えてください。黙っている間も呼吸は止めず、腹の圧を保ったまま静かに息を流し続けておくと、急に発言を求められても一音目がなめらかに出ます。急かされていると感じるほど早口になりがちですが、一拍置いてから話し始める方が、落ち着いた印象として伝わります。

補足を求められた内容がその場で整理しきれていないときほど、無言のまま考え込む時間が長くなり、その沈黙自体が頼りない印象につながることがあります。答えが完全にまとまっていなくても、「その点は二点ございます」と話す構成の枠だけ先に声に出しておくと、考えながら話していても声の流れが途切れにくくなります。

まとめ

役員会で萎縮するのは、性格の弱さでも準備不足でもなく、相手の圧を感じた体が喉を縮めているだけのことが多くあります。話し始める前に一度息を通す、低さより明るさとハキハキした話し方を意識する、質問を受けた瞬間に息を止めないこと。この三つを整えるだけで、格上ばかりの場でも声は縮みにくくなります。喉に強い違和感が続く場合は、無理をせず医師や専門家に相談してください。

よくある質問

Q. 役員会では低く落ち着いた声を出した方が説得力が出ますか
低く落ち着いた声も一つの手法ですが、それだけが正解ではありません。しっかり息を通し明るくハキハキ話す方が説得力につながることもあります。声の高さより、聞く耳を持たれるトーンと間の方が影響します。
Q. 役員会で声が小さくなるのは自分に自信がないからですか
自信のなさだけが原因とは限りません。役員側の圧のある空気そのものが体を縮こまらせている場合もあります。原因を性格のせいだけにせず、体の使い方から見直す方が現実的です。
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奥津ユキ
書いた人
奥津ユキ

ボイストレーナー。Snow Man、NiziUなど多くの楽曲を手がける作曲家・前迫潤哉氏が主宰するLEVETCH VOCAL SCHOOLにて、ボーカル指導の代表を務める。 何千レッスンもの現場で、歌手・社会人・表現者の声と向き合ってきました。

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